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1.バレンタインポスター

バレンタイン前哨戦です。

お菓子業界から、ポスターモデルのオファーを受けたダンタリオンのお話。


TO-KIOのDush島どうなったんですか。

天使が世界中に降り立ち、人類滅亡のカウントダウンが始まったのが約3年前。

日本は神魔と共存する道を選ぶことで日常は続いたが、それらが信奉する宗教がらみのイベントはのきなみ消え去った。


人が死んでいるのだ。当たり前だろう。


しかし、日常が3年目に突入し、さすがにクリスマス、バレンタインと完全に定着した国内イベントがなくなったので菓子業界はダメージが蓄積していた。

こと、チョコに関しては2月14日というたった一日で、年間20%もの割合が消費されていたという現実。


なんとか新しいイベントを打って、巻き返しを図りたい……

そして、独自文化に発展させたチョコ会社の目論見は


「バレンタインはあの宗教発祥じゃないんだよ。本当はもっと前からある別の宗教のお祭りの日なんだよ」


という起源修正を正当な理由としてあっさり復活を遂げた。



それが去年のこと。


「日本人はなんだかんだ言って、イベントがやりたいだけだよな」

「他国の文化を吸収して独自に発展させるのが得意技ですから」


特に小型化と経済活動。

とつけたす忍。

そういう寛容かつ無頓着なお国柄だからこそ、各国の神魔が集まっているわけであるが。


ダンタリオンの公館にて、なぜかオレたちは昨年のバレンタインのポスターを眺めている。


「去年は苦肉の策で、ギリギリ間に合った感があったけど、今年はもう完全復活の予感がするよな」

「義理チョコから自家消費にシフトしているとはいえ、このまま消え去ってくれてもよかったのに」


本命で盛り上がるより義理チョコに対して浪費を感じる女子はそんなふうに思う。

男の身としては複雑だ。


チョコをもらえる男性は勝ち組、義理チョコでももらえない人間からしたら勝ち組、全くもらえない人間にはブラックデーなるものまで隣国では発祥してしまっていたという混沌としたイベントでもある。

ちなみに男にも義理返しがめんどくさいからチョコ要らない派も少数ながらいるわけで。


思惑は菓子業界の枠を超えて、錯綜している。


「でも、催事場に集ったチョコは普段お目にかかれないから博物館にでも行っていると思えばいいか。そこは楽しいし」

「楽しみ方間違ってるからな、それ」


で、本題。

今年は本腰を入れたい菓子業界が、打診してきたのは神魔を起用した広報活動だった。

まぁダンタリオンはこういう性格だから、割とノリノリで引き受けてしまったらしく。


「女が経済活動の要だというなら、まずオレがポスター化するのは決定なんだけど」

「なんでお前なんだよ。他にもいるだろ、男の神様」

「甘いな。オレの人気っぷりを知らないのかお前は」


知っている。

人型、長身で髪が黒などビジュアル的に違和感がないこと、神魔開国の初期から存在していること、すでに雑誌特集などまで出されていること、つまり活動が比較的派手なこいつは一部でアイドル的存在になりつつある。


ほかの滞在神魔のヒトたちも好感度や親近感が上がっていて、存在がすっかり定着してきているところで、広報に神魔を起用し再起を図る。

これが菓子業界の今年の一手だ。


「オレのポーズ案は大体、決まってて……見るか?」

「見ねーよ」

「公爵、私、見たい」


どうせどや顔かキメ顔のカメラ目線なんだからそんなもの見ても何も楽しくない。

しかし、忍はそれを見たがった。


「おっ、シノブは食いつきがいいな」


そして、タブレットで写真を見せてもらう。

なぜか笑いまくっている。


「乙女ゲームの攻略キャラか!」

「おまっなんてこと言うんだ! 乙女ゲームやってんのか!」

「私にとって乙女ゲームとはネタ以外のなにものでもありません」


珍しく腹を抱えるほど声を出して笑っているので、ものすごくツボにはまったんだろう。

つい隣でオレと司さんも覗いたが、うん、たしかにそういわれるとたまに広告で流れてくるそういうのに似てるな。


服装が貴族でファンタジーだからな。


「ぷっ」


あとからじわじわやってきた。


「お前まで……しかし、乙女ゲームなんて氾濫するほど出まくってるだろ。それだけ需要があるってことなんだぞ。方向性は間違っていない」

「わかるけど……わかるけども」


司さんが横向いたままこっち見ないから、多分、笑いをこらえている。


「確かに私が笑えるほど決まっているということは、釣りあげられる女子が多いということだ」

「どういう理論の展開だよ」


はぁーと大きく息を整えながら清々しい顔で忍が言った。


「だろう? まぁモデルはいいんだ、オレだから」


他の選択肢も考えろよ。


「問題はキャッチフレーズだ」

「そこはプロの人がいるんじゃ?」

「プロなんてたまたまその職業に就いたから自称できる程度の奴も多いだろ。素人でもセンスがいいのがいいし、どうせならオレが考えた方が早い」

「じゃあ自分で考えろよ」


納得するところがあるのか、忍は表情をフラットに戻してポスター案を眺めている。


「チョコよりも君のハートが欲しい」

「……いや、それ乙女ゲームのとどめの言葉だろ。チョコ売れよ」

「チョコよりも甘い、って入れた方がいい?」

「だからそれ却下だって。真顔で遊んでないで菓子業界の苦難を考えてやれ」


ダンタリオン的にはそこらへんはどーでもよさそうで、割と乗り気だったがオレはずっぱりとそれを却下した。

権限があるのかは謎だが、凶行を止められるのはオレと司さんしかいない。

連載本編「終わる世界と狭間の僕ら」はこちらからどうぞ。

https://ncode.syosetu.com/n2406gf/

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