その八 その男、
今回はシリアスかつバトルな展開です。
ふわっとしてればいいんだよふわっとしてれば。
「貴様、何奴だァ!」
妙ちきりんな白装束にかまけている暇など無い! 俺はお陽の元へ行かねばならぬのだ……!
その思いで棍棒をふるおうとした途端、殺気を感じて一度止まる。
「なんだ居るんじゃねえか。透明化チートとはまたちげぇのか?」
「…………改めて聞こう。何者だ?」
「あ? 何者ってそりゃあ運営様だよお前。ハラスメントコール受けて来たの」
「はらすめんとこぉる?」
「そ、あっちのプレイヤーさんにね」
と、白装束はお陽を指す。
お陽はこちらの様子を伺っているようだった。
「お陽! 何故だ! 何故そのようなことを!」
「だーから! 私はお陽じゃなくってハルだって言ってるでしょ!」
「いいや、その姿、その立ち振舞、まさしくお陽である! 何故わかってくれぬ!」
「だから違うんだって!!!」
「痴話喧嘩なら帰っていいか?」
「痴話喧嘩ではない!」「そういうのじゃないですから!」
「仲いいじゃねえか……」
白装束がはぁ、とため息を零し、
「まぁそのなんだ。ハラスメントコール受けたし、あとチーターだろお前」
「ちぃたぁ?」
「しらばっくれるつもりか……仕方ねえ」
そう言って白無地の刀に手をかけた。
瞬間、
曇天の空が、真っ二つになった。
「ふっ……!」
寸でのところで横へ飛び、その斬撃を避ける。
先程まで立っていた場所には黒色の三日月が浮かんでいた。
「おぉ? 避けるのか。凄いなお前反射神経が並じゃあねえな?」
「褒めるなまったく……!」
いや、それよりも少し焦る。その焦りを顔に出してはならぬ。
ここは煉獄。相手はウンエイとかいう手練。ならばこれほどの強者は必定というものだろう。
相手は居合術の使い手。刀を抜いたと思ったらば、刀はまた元に戻っている。
それに先程の三日月も消え失せていた。
「さすがは煉獄か……このような手合がいるのか」
「ロールプレイかなりきりかは知らねぇけど」
また手にかけて、空間が裂けた。
それを避ける。
「同じ手を……!」
「いいねぇ。だが、
一発だけとは言ってねぇぞ?」
六連……!
びゅわんびゅわんと、三日月が六度襲いかかる。
後ろに限りなく下がり、さらに横に、後ろに飛ぶ。
「っす、ふぅー……!」
「その小柄の体でよく動けたもんだ。だけどな、距離をとればいいってもんじゃあねえぞ?」
瞬きをした。
そのときにはもう、白装束は目の前に居て刀を抜いていた。
白磁の刃が煌めきと同時に抜かれる、反射、
「らぁっ!」
「なっ!?」
頭突き。
意表をつけずともよい。ただ瞬間の隙さえアレば良い。
「無念示現流」
見るのだ。
どこだ、相手の隙を突け。
そして見い出せ、そこに「点」がある。
永遠と思うような一瞬、頭突きに驚き、体勢を崩した白装束がすぐに斬る動きへと戻ろうとする。
相手が『勝ちを確信した』その時こそが、「点」である。
「『破竹』!」
横っ首に見えたその「点」を、あとは己の最も歪みのない、慣れた姿勢で振り抜こうとする。
…………。
否。
振り抜けなかった。
頭突きをした体勢では棍棒を振り抜けず、ただ柄で横っ首の「点」を殴打するしかできなかった。
そして相手は白磁を振り抜き、煌めき……。
俺は、死んだ。
正式タイトル、『その男、再び死す。』