その六 その男、追走する。
今回は前半部分惟高さん、後半部分三人称となります。
それからは一方的であった。
動きがそこらの道場上がりのそこらの浪人程度、それが束になってかかったとしても、俺に及ぶわけがない。
棍棒一本で十分であった。
「それで? 貴様、先程何と言った? んん? 言ってみろ」
「や、やめっ! もう言わねえ! 言わねえかごべっ!?」
「『俺とお陽の身ぐるみ全部置いていけ、女は犯すから』だったか? はっ、浪人風情が偉い口を叩くではないか?」
「そ、そこまで言ってなごぶぅっ!?」
「確かに聞いたぞ貴様……! 俺ならまだしも、お陽を狙うとは不届き千万。首を切るにも値せんわっ!!」
「ひ、ひぃいいいいっ!?」
そして顔面に柄をこれでもかと言うほどに打ち付ける。青色の砂がまたできて、それの装備があたりに散らされた。
「ふぅ…………まったく。煉獄だからか、あのような輩が大量に居るのか」
ひとしきりやって一息をついて振り向く。
「怪我はないか、お陽」
居なかった。
ついでにおっこちていただろう傾奇者共の装備品もなかった。
※――――
「(やばいやばいやばいやばい! 絶対やばい!!)」
ハルはその場から逃げ出していた。
下手をすれば【ヘルオーガ】よりもとんでもないヤツだ。
いいや、もしかしたら徘徊型のFOEなのかもしれない。
とにかくトレインをさせてきた奴らの装備をもらいつつ、ハルは逃げ出していた。
なによりもあの幼女、結構遠く離れていた場所から、四つん這いの状態で悲しんでいたと思ったらその場から一足で間合いを詰めて棍棒で殴ったのだ。
どんな【速】の上げ方をすればそうなるのだ。
その後で馬乗りになって棍棒の柄でHPゲージがなくなるまでひたすら殴打。
蛮族も真っ青である。
「(っつーかあんなドリフ◯ーズの島津みたいな戦法するやつ初めて見たよ!? 何アレ頭蛮族!?)」
とにかくあんな頭のおかしい蛮族と関わっている場合ではない、一刻も早く逃げなければ……!
そう思っていた矢先だった。
「お陽―――――――――!!!」
「もう追ってきた――――――――!?」
「お陽――――――! なぜ逃げる――――――――――!」
「来んな蛮族!! 助けてくれたのはありがたいけど、あんたみたいなやつと一緒に居たくない!!」
「ぐほぁっ!? ……い、いや照れ隠しか!? 照れ隠しなのだな!? そうなのだなお陽――――――!!」
「照れ隠しなわけあるか――――――――――!!」
というか、相手の戦闘力がやばい。
棍棒一つで先程から出てきている【ヘルゴブリン】や【ヘルスケルトン】ならいざしらず、【ヘルオーガ】を一発で倒しているのだ。
しかもそれで折れた棍棒を周囲の【ヘルゴブリン】から徴収している。
そしてそのたびに「お陽~お陽~」と、まるでゾンビ映画のゾンビの如く追いかけてきている。
なんなのだアレは。もうどうすればいいのかわからない。
その様を見たハルは、たまらずハラスメントコールをかけた。
「運営ですか! 助けてください! 頭おかしいやつに追われてるんです!」
パラメータ解説
【力】 いわゆるATKの事。
【速】 いわゆるAGIの事。
【防】 いわゆるDEFの事。
【魔】 いわゆるMAGの事。これは魔法防御、魔法攻撃力を指します。
【運】 いわゆるLACの事。