その六十二 その男、切り結ぶ。
しかし倒したのは片方だけ。まだ向こうの草むらに居るのが居るようだ。
「クソがああああああ!」
「むっ」
それどころか道で立ちふさがってきたのもやってきたようだ。
これは……好都合か。
俺はその場でしゃがんでさらに体勢を低くし、回避を重視しながら草むらに入り込む。
相手が打ち込んでくるのは氷のつぶてであった。炎といい、氷といい、絵草紙の世界というのは本当になんでもありであるな!
「だが狙いが甘い!」
「ぎゃあ!?」
無闇矢鱈につぶてを発射したのが仇となり、そのまま顔を斬って怯ませた後で首を切り裂く。
「くそ! おい、何してんだ! 早く潰せ!」
「馬鹿、こっち向くな!」
此奴、いままで弱い手合しか相手にしていなかったのか。俺のような奴を相手にするのは慣れていないのか?
木の上に居るだろう奴に顔を向けて怒り叫んでいる。その辺りに居ることを俺に知らせてしまった。
「くそっ!」
そしてそいつも急いで移動しようとする。それも悪手であるのだが。
「このガキャア!」
「ぬんっ!」
振りかぶって打ち込んできたのを自前の刀で防ぐ。ぎん、と鈍い音と火花が散る。そして押し込む力が尋常ではないことが分かる。
またしてもこの力が増大するチートか!
だがこれならば!
「もう見飽きたわ!」
「なにィ!?」
ぎゅり、と鍔迫り合いの刀を一度離し、その後で刀を思い切り下に押し込む!
「ぬぐぉ!?」
相手の力とこちらの力が同時にかかり、刀が地面にずぶりと埋まる。
それを見逃さずにかぽん、と相手の顎を蹴り上げる!
「がっ!」
かちあげられたところで首と胴を空色地獄で切り裂く。また一つ青色の塵となった。
「ふう」
息をついて、奥に控えている奴を見る。先程から動じることなく動かず、ただただこちらを見ている男を見る。
「面白い戦いをするのぉ、おんし」
その男は語りかけてきた。
よく見れば陣笠で顔を見せないようにしていたようだ。おかしいな。そのようなものがアレば気づくだろうが……。
「わしともやってもらおうやないか」
ざり、と草履を鳴らし近づいてくる。
ふらりとした足取りではある。だが――
「――なあ?」
次に見た瞬間、踏み込みとともにその男の顔が目の前にあった。
俺は飛び退いた。その瞬間の殺気。
俺の首があったところに、刀があった。
ざざざ、と砂利を散らして止まる。
こいつはやばい。
ちぃたぁか? いや違う。慢心はない。これは殺気だ。この世界の者たちが向けてくるものではない。
まるで――あの時、あの時代の空気。
「お前……まさか、俺と同じか?」
振り絞るように、俺はその男に尋ねた。
「んん? 同じとゆうてるってことは、まさかおんしもか?」
土佐弁、そしてこの刀使い。
聞いたことがある。狙われた者はすべて切り伏せられ、最後には処刑されたという天誅の名人……!
「貴殿、よもや岡田以蔵か……!」
1/12追記
ネタ出しと静養のため、しばらくお休みします。申し訳ございません。




