その六十 その男、夜に一人散策する。
この世界に夜が来て、一人草原のあぜ道を歩く。
空には月が浮かび、星があちこちにまたたき、幻想的な風景が浮かんでいる。
その風景にほうと息を吐きながら、俺は短く思案にふけながら歩くことにした。
さて、ちぃたぁがなぜちぃとを使うのか。
俺とセリザワ殿が考えている目的として、凡そいくつかに分かれていた。
一つは「名を上げる」。こうすることにより、有名になり、様々な恩恵を受けられるようだ。
名をあげることでその人物への尊敬や畏怖を受けられるため、とあるだろう。
『自分が有名になると、気分がいいからかしらねぇ……そんなに良いものでもないのだけど』
ため息まじりで言っていたセリザワ殿の顔は、どこか悲しそうに思えた。まあ【新選組】であるがゆえ、おそらくなにかあったのだろう。
次に挙げられることとして、「他者の装備を奪い金や力を得る」、ないし「他者を蹂躙する」ということも考えた。
この世は他人を殺すと、殺された人物は青い砂粒となり消えて、りすぽぉんちてん、とやらに戻るらしい。ただし倒された者は代償として、その時に所持しているものをすべて倒された場所に落としてしまう。
人によるが、落とすモノは玉石混交であるため、良いものも悪いものもある。勿論、それらはすべて売れる。二束三文とはいえ、金を得る手段としてはいいものだろう。
その武器や鎧が良いものであるならば、自分のものと取り替えるということも考えられる。金やコネがないならば他者から奪うというのは道理だろう。
次の蹂躙することなのだが、これが厄介だろう。
なにせ「倒すことを目的としている」のであって、それ以外のことはしない。
場合によっては力になるだろうが、俺の仕事の中ではそのような人物は倒さなければならない。
ましてやそれがちぃとの力によって強くなっているというのであれば、倒すのも容易ではない。
いつもであれば俺が愛用している刀だが、こと相手を倒すのであれば、マサムラ殿に打ってもらった刀を使う必要がある。
刀を二本差す等、生きていた頃はあり得なかっただろう。刀一本を買うだけでも、なまくらでも大金が必要だったからな……。あの頃は大変だったなぁ。
お春の身請けもしなくてはいけなかったし、とにかく金を稼ぐために様々な道場に出稽古に出たり、時には用心棒の仕事を引き受けたり……。まぁ大変だった。
だが、後ろめたいことはけっしてしていない。それだけは言えるだろう。
さて、そんなことを考えていると、何人か後ろから歩いてくる足音が聞こえてきた。
件のちぃたぁか、あるいはただの馬鹿か。
見極めるためにくるりと振り返る。
「さて、俺になにか用かな?」




