その五十八 その男、中条流剣術の一部を見せる。
驚きなことに感想をいただきました。ありがとうございます。
そして現在は21955……惜しくも22000PVには届かずでした。ですがそれでも十分多いと思います。本当に感謝しかありません。
このままなんとか続けていきますので、どうぞよろしくおねがいします。
「チョメ殿! 思い出したぞ!」
俺は斬りかかってきたデン殿を蹴り飛ばしつつ、チョメ殿に近づいていった。
「な、何を、です?」
「うむ。俺が武者修行をしていた時、阿波に行ったことがあるのだ」
そこで俺が出会ったのは、小太刀を携えた小柄な老人であった。
古い道場で、一晩の宿を借りると同時に、その老人と出会った。
力もなさそうであったが、その眼光は鋭く、見れば射抜かれるようであったのは今でも覚えている。
「俺はその老人に頼み込み、なんとか一手だけ指南をしてもらえた。結果としてはなんとか一本を取れたのだが、いやはや、アレは本当に恐ろしいお方だった」
「い、一体どんな剣だったんですか?」
チョメ殿が息を呑む。俺は一呼吸おいて、それを話す。
「攻められんのだ」
「え? こ、小太刀ですよね?」
「そうだ。打刀よりも短い、あの小太刀だ。しかし俺が打ち込めば、それは全て、余すことなく風のように受け流されてしまった。たった一本、上段に構えていただけなのだ」
老人、小太刀。
俺の中にあった慢心を、膨れ上がらせた結果、苦労しての一本であった。
「中条三久殿。かの中条流剣術の免許皆伝を修めた、まさに剣術家であったよ。俺の説明が足りぬのが本当に口惜しい。だが、今こうして、チョメ殿にその太刀を見せることができれば、それは何かの糧になるだろう」
そう言って俺は適当な棒を拾い上げ、再び起き上がったデン殿に向き直る。
拾った棒はちょうど大きさは小太刀程。これならアレを模倣できるかもしれぬ。
三久殿に付け焼き刃の中条流を見せるなど、剣豪の名に泥を塗ることになるやもしれぬ。だがそれでも俺はチョメ殿を強くしたい。
ならば、付け焼き刃でもよいからみせてやりたかったのだ。
「デン殿、打ち込んでこい! 俺がこの枝で捌いてやろう!」
「くぉんの……うおりゃあああああ!」
デン殿が勢いよく走ってくる。よい踏み込みだ。思い切りもよい。振りもよい。普段であれば蹴り飛ばすが、今回は小太刀の戦い方。
上段に構えた木の枝を、俺はデン殿の刀に這わせる。
木の幹が削れ、デン殿は驚いた顔を見せる。
刀は地面に振り下ろされたところで、俺は体をしゃがませ、枝を体の後ろに隠すようにして持った。
「っ、どりゃああああああ!」
ぶおん、とデン殿が刀を薙ぐ。なるほどこれは当たれば頭をとられる。
だが、その動く前に刀を持つ腕を左で抑え、右腕に持った枝をデン殿の胸に突き立てていた。
「これがその時見た中条流の小太刀の技の一つだ。相手の攻撃をいなし、二の太刀を行う前に、それを止め、相手に突き立てる技よ」
チョメ殿、ハル殿共にぽかんとしていた。
「どうした二人共。狐につままれたような顔をして」
「いや、そりゃそうなるよ(なりますよ)!」
二人揃って俺に向かって言った。
「何今の動き! あんなの剣道の試合とかでしか見たことないよ!?」
「じ、時代劇でもゆっくりというか、時々みるよーちゅーぶで型くらいでしか見てないです……ましてやそれを実行できる人っていうのも……」
「ぬぅ……」
な、何故だろう。なにか珍しいものを見てるような目で見られるのはなんだか慣れぬ。
「つーか俺に対する心配とかねぇのかよ! 俺結構ショックなんだけどォ!?」
「デン、山本さんに一本入れようとするとか無謀すぎるからやめときなって」
「デンさん……が、頑張りましょう……」
「デン殿は教わったことを何一つ身につけていないのがもったいないのだよなぁ……俺ともう一度織晴鉱を取りに行くか?」
「チキショウこの世は理不尽だっ!」
いや教わったことをできていないデン殿が悪いと思うのだが……?
筆者補足
山本さんが再現した中条流小太刀というのは富山藩(現在の富山辺り)から伝わった古文書から復元したものからイメージをしたものです。
ですので「本来の中条流とは違うじゃん!」と言われてもそういうものだから! ということで流していただきたく……(土下座)
それはともかくとして、中条流とは中条長秀という人が興した流派で、小太刀だけでなく、槍や薙刀、長刀も使用する流派だったようです。
この中条流から派生して、一刀流や富田流など、様々な流派の母体となった流派なのだそう。
山本「ちなみに子を堕ろす医術も、俺の時代では中条流を名乗っていたぞ。こちらは剣の流派、医術の流派の名字がどちらとも中条だったということもある」
デン「すげえ紛らわしいッスね」




