その五十四 その男、とりあえず動く。 その二
なんとびっくり、19000PV突破です。大感謝しかありませんな。
それでは本編へどうぞ。
旅館、イケダ屋についた。
ここには拠点を持っていないぷれいやーが集っているらしく、そこかしこにそれらしき人がいるのが分かる。
誰かと待っているのか、柱に寄りかかって待っているのもいれば、親しげに誰かと談笑しているものもいる。
そんな中をかき分けて、俺は番台にいる人物に話しかける。
歳は四十程の、青色の着物を来た美人である。もっともお陽には及ばんがな!
この人物こそ、この旅館・イケダ屋女将のオリュウ殿である。
「オリュウ殿。今回も来たぞ」
「あら、おちびさん。いらっしゃい。今日もやってくれるの?」
「おう。早速で悪いが、裏に案内を頼む」
「はいはい。それじゃオタツ! オタツ!」
「はーい!」
パタパタと出てくるのは女中のオタツ殿だ。まるまるとした姿をした活発なお人で、よく世話になっている。
なんでも、薪割りは本来彼女の仕事らしいのだが、手を痛めているのだとか。
「オタツ殿。手の具合はどうだ?」
「まだ少し痛みますね。でも、ゴロウさんがやってくださるからこっちは助かっていますよ!」
「いやいや。良いということだ。こちらも鍛錬ができるからな」
最初の頃は「山本五郎左衛門惟喬」と呼ばれていたので、何度か通い詰めてオタツ殿からやっと「ゴロウ様」と呼ばれることとなった。
毎朝薪割りに入っているからな。やっと顔を覚えてくれたのだと思うと、ちょっとホッとする。
そして薪割りを始める。
実は薪割りというのは動きにコツがいる。
斧を正しく握り、そして最も自分が楽な振り方をしなくてはいけない。
ただ、力を抜きすぎてもいけない。あまりに抜きすぎると斧がスっぽ抜けてしまうからだ。
狙うは薪の真中心。そこに斧を振り下ろす。
また、ただ振り下ろすだけではだめだ。
他のぷれいやーを見ていると、1回で薪を真っ二つにしている人物は少ない。
薪には割りやすい大きさのものがある。握りこぶしを作り、肘から小指の握りしめた先、あるいは手首のところまでの部分を目安にする。
そして、なるだけ乾いたものを選ぶ。乾いていなければ、ひびが入っているものが望ましい。
そのひびを通して、斧を振り下ろせばきれいに割ることもできるからだ。
これらの動作は刀を振るときにも通じる。
最短の動作で、最速の動きを行う。また、無駄な力を入れずに自然体で斬る。
一連の動作を行いながら鍛錬ができる。しかもなんなら金ももらえる、素晴らしいものだ。
「おい、見ろよ……」「薪割り幼女だ……」「また来てる……」「すげえ、もう五十行ったぞ」
毎朝このイケダ屋に来て薪割りをしてることで、いつの間にか『薪割り幼女』なんて呼び名がついたりしたが……まあ、些末なことか。
この薪割りには制限があり、一定の時間を超えて行うことはできないのだ。
「ふう……まだまだか」
今回は八十九までで打ち止めとなった。まだまだ修行が足りぬようだ。
それでも周りは「おお……」と漏らしていたが……。
「おつかれ様です、ゴロウ様」
「なんのなんの。またいつでも呼んでくだされ」
「そうだ、それならちょっとお願いしたいことあるんですけど、いいですか?」
そう言ってまためにゅうばあ。が出てきた。
今度は『オタツからクエスト「イケダ屋の手伝い・皿洗い編」を受注しますか?』と出た。
「無論だ。お受けしよう」
俺はもちろん、はいを選択した。
薪割りについて。
江戸時代においては薪、炭は欠かせないものでした。
それぞれ燃料として使っていたからですな。
また、薪も切ったらそのまま使えるというわけでもなかったようです。
1年や2年くらいの乾燥がひつようになったりしたそうで。
では乾燥した木の枝や倒れた樹木を使っていたのかと考えちゃいますな。
一応薪割りの手順に関しては筆者が独自で調べ上げたものですので、真似をすると痛い目をみるかもしれませんのでご注意を。
山本「薪割りについてはやり方がいろいろあるが、なるべく腰を痛めないようにするのもコツだぞ」




