その四十五 その男、勝利した。
仰天の12000PV突破です。本当になんと言っていいのやら……ここからエンディングムーヴが続きます。
「はぁ……はぁ……」
トッキーが光の粒となって消え、様々なものが散らばったのを見て、俺は膝をついた。
「センセぇ!」
「山本さん!」
いつの間にか来ていたデン殿、そしてチョメ殿が近づいてきた。どうやら気づかぬうちに振り落としてしまっていたらしい。
「デン殿……チョメ殿……」
「センセぇ! すげえッス! まさか初期装備で勝っちまうなんて!」
「山本さん……一体、何者なんですか……?」
「俺は……ただの侍だ……しかし……」
だん、と地面を叩く。
「おハルが! 俺は……おハルを死なせてしまった! なんと……なんと不甲斐ない! 女を盾にして生き残ったところで、なにが良いものか!」
「せ、センセ、大丈夫ッスよ、ハルならすぐにリスポーンして帰ってくるッス」
「死んだものは戻らぬだろうが! 何を……!」
「そりゃあ、死んだらもどらねッスけど、ここ、ゲームッスよ……リスポーン地点に居るはずッスよ」
「……誠か?」
「こんなんで嘘ついてもしかたねッスよ……つか、このゲームの常識ッスよ?」
「そうか……」
「いや、一応今の状態でもすぐに生き返らせておいたほうがいいね。ついでにここから去ったほうがいい」
そう話しかけてきたのは銀の髪を束ねた、浅葱色のだんだら羽織を着た少女であった。
「……新選組か?」
「うん? そうだよ。知ってるの?」
「新選組には、少し縁があるからな……それより、どういうことだ? 早く去ったほうがいいというのは……」
「細かいことは後だよ。とりあえず……ほいっと」
そういってなにかヒトガタの紙を投げた。
するとぼんっ、という音と煙が現れ……
「……おハル?」
おハル……いや、ハル殿がそこに居た。
「新選組の、これは一体……」
「蘇生アイテムの【ヒトガタ戻し】だよ。念の為にいくつか持ってるんだよねー」
「って、それ課金アイテムじゃねッスか! さすが【新選組】……課金アイテムもあるとかパネェッスね……」
「その……わざわざありがとうございます。山本さん、だいじょう――」
「ハル殿!」
がばっ、とたまらず抱きついた。
「ハル殿! ハルどのぉぉぉおおおおおお!」
「うわちょっ、山本さん、大げさな……」
「よ゛か゛っ゛た゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛~~~~っ!! うおおおおおおおおおおおおおん!」
「うわっ、鼻水がすごい! 殆ど初期装備の布の服がすごいことになってる! えーい離れろっ! 離れなさーいっ!」
「離さぬぞ! 俺は絶対に離さぬぞぉぉぉおおおお!」
「いやどんだけ感動してるんスかセンセ……」
「その前に早くここから立ち去ったほうがいいんだけどなぁ……仕方ないこれも使うかぁ。ニュウドウさん、それとそこの君……えっと、チョメさんだっけ? 一緒に来て」
「は、はい!」
「おお……今行くぞぉ」
「はぁ~~~るぅ~~~~どぉ~~~のぉ~~~!!」
「ええい鬱陶しいっ!! 後で装備も返してくださいねっ!!」
よかった! とにかく無事で良かった!
おハルが……いや、ハル殿が死んでいなくて本当によかった!!
俺はそう思いながらなにかまばゆい光に包まれていった……。
※――――
現実。とある一室。
「クソがっ!! あんの野郎タダじゃおかねえぞ!!」
椅子を蹴り飛ばし、埃を撒き散らし、喚き散らす。
ゴミが散乱し、窓も締め切られているその部屋で、青年は壁に、ものに八つ当たりしていた。
「なんでだよ! 【一撃必殺】チートと俺の腕だったら確実に当たるってのにっ! なんで当たんねえんだよあのクソガキが! くそっ! クソクソクソクソクソッ!!!」
さんざん当たり散らし、部屋はパソコン以外がめちゃくちゃになっている。
青年は息を切らして、埃を吸い込んでむせた。そうしているうちに、冷静な思考を取り戻したのだろう。
「だが……あいつの居所はもうつかんだ……! 復讐してやるよ……山本ぉ!」
そう言って彼はもう一度ログインしようとした。が、ログインができない。
「はァ!? なんでだよ! チートはバレることがねえって……!」
気づけばメールボックスになにか届いている。運営からのようだった。
恐る恐る開いてみると、そこに書いてあったのは永久アカウント停止、並びに『ヤマトオンライン』のプレイ禁止の通達だった。
「……あああああああああああああああっ!! クソがああああああああああああああ!!!」
青年……プレイヤー『トッキー』は運営についに自分がチートを使っていることがばれたとわかった。
運営はここ最近チートに対して敏感になっており、監視体制が厳しくなっていると聞いていた。
しかしそんなことをしていてもバレることはない。だって今までバレることもなかったし、それに自分以外にもチートを使っているやつは何人もいる。
だというのに。
「クソが! クソクソクソクソッ! クソがあああああああああああああ!!!」
青年の怨嗟の声が部屋に響き渡った。




