その三十二 その男、捕らえるための考え方を話す。
「それにしても、相手を捕らえるためには専用の道具が必要になるか……」
俺はそう言いながらエドの裏通りを歩いていた。
新たな刀が出来上がるのは時間がかかるらしく、その間手持ち無沙汰になるためエドを歩くことにした。というより、工房より追い出された。
部屋にこもって刀の手入れ、というのも考えたがどうもそれをするためには「すきる」というものが必要になるらしい。
「すきる」というのは、所謂割り印のようなものらしく、その行動をするための了承を得るものだとか。
なんとも面倒な世の中だが、ここは煉獄。そのような法があるならば守らざるをえない。
その事を話したら苦い顔をしていたのがハル殿であったが……。
「それにしても、相手を捕らえるっていう考えをするなんて、一体なんで?」
ともについてきたハル殿が尋ねる。
そう、俺だけ追い出されたのではなく、俺とハル殿、デン殿も追い出された。
やはりマサムラ殿も職人。他人に作業されている姿を見られると気が散るのやもしれん。
「それがよー。実は織晴鉱を取りに行った帰りで、チートを使ってる奴らに会ったんだ」
「奴ら、って……もしかして私がさっき燃やしたのそいつの1人だったりする?」
「いかにも。生きて相手の情報を得るためにも、やはり無力化する方法が必要でな。このままでは腕の健を斬ったり、足を切り飛ばそうとも、相手は怯むことがなさそうでな」
「あ、足をきり飛ばす……」
「腕の健を斬る、って……」
……なにやら引かれてしまっている。なぜだ。
「ハル殿。デン殿。相手を殺すのは簡単であるが、相手を活かすことこそ最も難しい事なのだぞ。我が無念示現流には相手を無力化する技はない。腕や健を狙うのは、相手の武器を落とす事にもつながるのだ」
「言ってる意味はわかるけど、やりすぎじゃあ……」
「何を言う。相手はこちらを殺すつもりでかかってきているのだ。それを止めるためには、相手の動きを止めねばならぬ。死ぬほどの苦痛でなければ、止まることはかなわんぞ」
そう言いながら俺は裏通りの街を見ていく。
少々落ち込んでいるようだが、致し方ないことなのかもしれぬ。
おそらくだがハル殿とデン殿、そして俺の考えは少々違うのだろう。
「……だがまあ、だからこそ捕らえるための道具が必要なのだ。デン殿、ハル殿。煉獄の法があるとするならば、俺はそれに従わねばならないからな」
「山本さん……」
「山本センセ……」
「いかんな。どうもこのような話はよくない。気分を変えよう。そこの茶屋で、適当に休憩するとしよう」
そう言って俺はハル殿とデン殿を強引に茶屋に引っ張り込んで、少し休むことにした。
実際相手を止めるときに岡っ引きが使用していた十手や捕縛道具を見ていると、江戸時代っていうのはかなり物騒な世の中だった様子。
浪人共が刀を持ってプラプラ歩いていたりしている世の中、そんな中で止めるためには一定の武術なんかも必要だったんだろうなぁと思います。
山本さんの考えはあくまでもいち個人の考えとしてお収めくださればと。




