その二十九 その男、女児巫女と再会する。
覚えていますでしょうか……覚えていないだろうなぁ……。
というかこどもの日じゃないか今日。
「な、なんだこれは!?」
「あ、山本さん」
やっとついたと思ったらいきなり火が上がっていた。
しかもその火がまたたく間に大きくなり、まるで竜のように天にのぼっているのだ。
驚かない方が無理があるというものだ。
俺とデン殿はとりあえずマサムラ殿の工房の屋根に飛び上がっていると、下からハル殿の声がした。
「ハル殿! これは……!」
「い、いやぁ、ちょっと姿が見えない敵が居たから、出し惜しみなしでやっちゃったらこうなって……」
「姿が見えないって、まさかさっきのやつらかよハル!」
「あ、デン。さっきってことは……」
「今はとかくこの火を消すのが第一だ。ハル殿! 水だ! 水をかけよう!」
「それが水をかけても止まらなくて……」
「ならば土だ! 土をかけるのだハル殿!」
「そ、そっか! よーし!」
そう言ってハル殿が杖を掲げ、なにか唱えようとした。
「どいてな」
「えっ?」
その一言の後、
どん、と地鳴りが起こった。
凄まじい砂埃が巻き起こったその後、
あれほど勢いがあった火がいつの間にやらたち消えていた。
信じられなかった。山程の大きさがあった炎がいつの間にか消えているのだ。
てっきりまやかしかなにかだと思っていたが、地面に残る焼け跡からそれは違うとわかる。
「おいおいおいおいおーい。なんだよさっきのはよォ。俺を焼き殺すつもりだったのかぁー?」
下から声がしたため、屋根から飛び降りる。
するとそこに居たのは豪奢な着物と大鎧の胴部分のみをつけた若者と、
「ぬ、そなたは」
「あ」
なんと最初に出会った巫女服の女児であった。
「なんと、このような場所で会おうとは。奇遇だな!」
「あ、は、はい」
「ここにきたということは、マサムラ殿に防具を頼みに来たということか?」
「そ、そんなところです」
ぬぅ。なにやら様子がおかしい。先程からうつむきがちであるし……。
なにかあったのかと話しかけようとすると、先程の男が割って入ってきた。
「ちょぉっといいかい? おちびちゃん」
「なんだ? おお、そういえばよもや貴殿が先程の炎をとめてくれたと見たが、どうだ?」
「え? お、おうまあな。俺にかかれば軽いもんよ」
「なるほど、さぞ名のある方とお見受けしたが、名を伺ってもよいだろうか」
「あ? 俺を知らねえとは、さては初心者か?」
「いかにも。この世界に疎くてな」
「なら名乗っておこうじゃあねえか。おい」
どやどやと後ろからよろしくない風体の者たちが現れる。
少し嫌な空気を感じた。
「俺たちはギルド【南蛮組】ってモンだ。ま、テッペン目指してるいわゆる玄人向けギルドってやつだな。どうだおチビさん。来るかい?」
「いや、行かぬ」
「初心者ってこたぁ右も左もわからねえってのが相場だからなぁ。ここは俺たちがしっかりと教えてやっても……」
「その必要はないからな。俺はすでにハル殿とデン殿と共にある。この二人も加えるというのであれば、考えなくもないが」
「あぁ? ……そっちの巫女ちゃんはともかく、落ち武者スタイルのやつァ駄目だな」
「そうか。なら行けぬ。せっかくの誘いだが、申し訳ない」
「誰が落ち武者だゴラァ!」とデン殿が殴りかかろうとしていたが、ハル殿が必死に止めていた。
少し怯んでいたが、入り口からまた誰かがやってくる。
「おお、ニュウドウ! お前からもなんか言ってやれよ!」
※筆者調べでのちょっとした補足
◯大鎧の胴部分とは?
有り体に言うのであれば五月人形の鎧兜つきのやつ、アレの胴部分のみの事を指しています。
正式名称としては弦走というのですが(コレも調べてみると部位毎にいろいろあります)、山本さんが知らなかった為あのような表現になっていました。
ちなみに下のビラビラ部分は草摺という部分だそう。
きちんとした鎧の同部分であれば、おおまかな胴部分を守る弦走、肩から胸にかけて吊るしてる場所や紐部分を守る栴檀板と鳩尾板、
そして腿部分を守る草摺となって、胴部分の鎧となるのでしょう。
山本さんが生きていた江戸時代では鎧甲冑は実用品としてではなく、贈答品としての意味合いが強かったようです。
ちなみに時代劇・水戸黄門の第56話『父娘救った主君の鎧・備中松山』では鎧甲冑をつけて走るというものがあったそうな。
デン「リアルの甲冑はおおよそ30キロくらいッスから、だいたいお米の袋2つを前と後ろにかつげば鎧甲冑を着てる重さになるッスよ!」
山本「米袋2つを前と後ろに背負うというのはよくわからんが……それで走るのは大変だろう。今度デン殿も試すか?」
デン「け、結構ッス……」




