その一 その男、幼女となり
連続投稿! 序章分を取り戻すために!
目を覚ます。
雪ではない、土の感触だ。
寒さは不思議と感じない。空腹も、撃たれた胸の痛みも感じない。
「ここは……」
頭が痛い、視界もぼやけている。
動くことは……少し、難しいようだ。
だが――。
「すぅ……」
少し目を閉じて、手を強く握り、そして力を抜く。
同じようにして足に力を入れ、そして脱力する。
これを繰り返すこと5回。
深呼吸も忘れてはいけない。
「……よし」
む、と力を込めて起き上がる。
どこか声が高く、視線もいつもよりか低く感じる。
そして、起きた目の前にあったものは、まさしく地獄であった。
草はなく、枯れ木ばかりが立ち並び、ところどころにはしゃれこうべが散乱している。
土はもはや土の色をしておらず、利休鼠の色をしていた。
空は曇天、時折雷が鳴り響き、ふと晴れ間がないかを見ると、赤色の空が見える。
極めつけは徘徊しているモノだった。
赤色の肌、遠目でも分かる力士のような図体、頭に生えている一対の角。
それはまさしく御伽噺で聞いたような、鬼が徘徊していた。
どうやら俺は、地獄に来てしまったらしい。
「しかし……視界も低い……」
そこではたと気づく。
刀や着るものはどうしていたか。
自分の姿をここでようやっと確認しようと思い立った。
といっても、大分予想がついているのだが。
「胸があるな……肌も違う……」
俺の肌は以前でも日に焼けて黒くはあったが、今の俺はそれを超えた褐色だ。
それに大きな違いはこの胸だ。
でかい。
握り飯かでかいまんじゅうだかを胸に詰めてるんじゃないかといわんばかりのデカさだ。
というか、自分の足元が見えない。
「だが、コレはコレで……」
女の肌というのはお陽のものしか触ったことがなかった。
あと胸がお陽よりもでかい。
慎ましいというのはアレだが、大きすぎるというのは……。
悪くない。
そして水たまりを発見した俺は、己の姿を確認した。
「な……」
絶句。
そこに居たのは四十を超えた男ではなく、年若い、十にも満たないような子供、しかも女がそこにいた。
あと胸がでかい。
着ていた衣服から零れそうなほどである。どうするんだコレ。
いやそれよりも。
水たまりをうまいことやって自分の股ぐらを確認する。
なかった。
「…………これも、閻魔の裁きか」