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幕末武士が転生したら和風VRMMOの世界だった件  作者: 嫁葉羽華流
第一章 ~その男、剛力なり~
14/64

その十二 その男、分からず。

今回はハル視点。かつちょっと長め。

「……ってことがあったんだよこないださー」

「ほーん。オレっちが居ない間にそんな展開があったんか」


そうやって話す私……ハルの前にいるのはいかにも足軽って感じの風体をしてる男……まあ、私の幼馴染でこのゲームのプレイヤーの久屋伝吉……デンがいる。

デンにはこないだ私が体験した不思議幼女と運営の一騎打ちの事を話していた。


「まぁなんだ。あの日遅れてほんとゴメンな?」

「ほんとだよ! デンが居なかったから急造のパーティで行ったけど地雷だったよ!?」

「5割さんを引き当てたらそらそうなるわな」

「もとはといえばあんたがきちんと補修を受ければこんなことにはならなかったんですけどねー」

「ぐはぁっ!?」


デンがダメージを受けているが、そんなのは置いておいて。


「さてと。デンも居ることだし、それじゃ早速もう一度地獄ヶ原に行くとしますか!」

「そ、そうだな……俺も行ってみたかったし……ん?」

「どうしたのデン?」

「いや、なんか今ハルの名前を呼んでたよーな気がしてな……」

「やめてよ、さっき話してた変なロールプレイの人が絡んできたらどうするの」

「そのときには俺がどうにでもしてやごっふっ!?」

「お陽――――――――――――――!!!!」

「ほんとに来たぁああああああああああ!?」


幼女は忘れた頃にやってくる。

そしてその幼女……山本五郎左衛門惟高さんは途中のデンをぶっ飛ばしてこちらにしがみつこうとする。


「お陽! お陽ではないかー! 再び会えることができるとはこれはなんという!」

「ストップ山本さん! それ以上近づいたらどうなるかわかってますよね!?」


バッ、と見せたのはボタン。

そう、実は裏でこんなやり取りがあった。



~~~~



「はぁああああああああ!? サポートと監視役ううううううう!?」


夕方、私がログインしようとしたら電話が一本入ってきた。

その人物は私に『山本五郎左衛門惟高の監視とサポート宜しく』とぶん投げてきたのだ。


『……んっだよ騒がしいこと言うなよ心陽よぉ』

「騒がしいとか言わないでよ!? そりゃあいいたくもなるよお兄ちゃん!?」


話し相手にいるのは私のお兄ちゃん、柊宗介。

VRMMO『ヤマトオンライン』の運営チームの一人だ。


「山本ナントカって、私にこないだとびついてきたりしてたあの子のことだよね?! やだからね私!?」

『いやいや、ほんっと見てるのとサポートしてくれるだけでいいから。あと危ない行動しないかどうかの監視とかさ』

「それが嫌だって言ってるんだよ!? ストーカーと一緒にいろっていうの!?」


ご理解いただきたい。

自分のことを好きだとか言って触ってきた相手を監視するのはまだいい。

だがサポートとは。

そいつの近くにいることになるのだ。

自分のことを奥さんと勘違いしてる、あの幼女と一緒にいることになる……!


いやまあ、褐色巨乳幼女と一緒っていうのは、ちょっとうれしいけどさ。


『でもあいつ褐色で巨乳で、しかもちびじゃん。お前の性癖どストレートじゃね?』

「運営の力つかって性癖とか調べんな馬鹿兄」

『まあ聞けって。別にお前にタダで働いてほしいってわけじゃねえんだよ』

「というと……報酬が発生すると!?」

『かるーいアルバイトのつもりでやってくれればいいんだよこっちとしちゃあよー。ま、サポートするっつった手前なんもしねえのはアレだしよ』

「ならお兄ちゃんがすればいいじゃん」

『俺は俺で忙しいの。その点お前は暇な上にゲームし放題じゃねえか。うちのグラフィックのこともたいそう気に入ってるし、実力者でもある』

「ぐ」

『それに、アイツのことを知ってる数少ない人物って点でも同じだ』

「……というか、山本さんの事知ってるのって、あの時来てくれた運営さんと私だけなんだけど」

『ああそれ? 俺』

「はぁ!?」

『いやだってあの時言うのはなんかそんな空気じゃなかったし。それにいざとなったら利用できるじゃーん?』

「だからって黙ってるかふつー!?」

『まあまあ。お怒りはごもっとも。……だがな。あいつの実力は本物だ』


一瞬で真面目なトーンになったお兄ちゃん。


『狙い撃ちクリティカルを叩き出せる、しかもクソ難しい設定にしてるエネミーからの武器取り上げからの撃破をやってのける、その上もろいエネミー武器をつかっての中ボス撃破……この時点でどんだけやべーか分かるだろ』

「ヘルオーガフィールドボス扱いだったんだ」

『まあな。攻略wikiにでものっけとけ。……そしてだ。もひとつ奇妙な点があってな』

「奇妙な点?」

『ああ。流石にお前にハラスメント行為を働いたことだし、住所でも吊し上げて炎上させたろと思って調べたんだが、そいつ、ログインをしてない』

「えっ?」


ログインをしていない?

ちょっとまってほしい。


「た、確かVRヘットギアをしてなきゃそもそもVRゲームできないよね?」

『おおそうだ。詳しい理論についちゃ省くが、基本的にネカフェだろうが個人の家だろうが、どこでログインしてるかはこっちから分かる。だがこの山本五郎左衛門惟高はどっからもログインしてない。NPC部門に問い合わせてみたが、こんなんを作った覚えがないと来た』

「……じゃあこの人何?」

『心陽。お前聞いたことあるだろ。インターネット上でさまよってるっつーネットゴーストの話』

「まさか……あれって作り話だよね? そんなの居るわけ無いじゃん」

『俺は、この山本をそれだと思ってる』

「お兄ちゃん、根拠は」

『監視キャスト、履歴、一切載ってない。さらに言えばあの服装』

「服装? 確かに変わってたけど……MOD(注:modificationの短縮形。主にパソコンゲーム用の改造データのこと)じゃないの?」

『んなもんにはきちんと対策してるわ。……だがそれじゃあない。どんなに人間離れした動きであっても、ありゃあ中に人がいる感じだ。ログインもわからねえ、監視キャストに姿がうつらねえ。……まあ、他にも疑う箇所はあるけどな。……とにかくだ。お前にはそいつを見張っててもらいたい。万一そいつが反旗を翻して、俺たちに害を与えるってんなら、俺はそいつを消去する』

「しょ、消去って……」

『そいつができる時点で、人間じゃあねえだろ。……まあ、そのためのアイテムとかアルバイト代も出すから、きばれよ~』

「ちょっ、お兄ちゃ……」


ツー ツー ツー ツー ……


「切りやがったあのクソ兄いいいいいいいいいいいいいいい!!」



~~~~



プレゼントボックスに入っていた非常用ハラスメントコールスイッチ。

これを押せば、山本さんのデリート作業が開始される。


「そ、そのボタンは……!」


流石になんかやばいことは気づいたのだろう。

ちょっとたじろいでいる。

……褐色巨乳幼女がたじろぐ様、カワイイ……って落ち着け。アレは私を奥さんと思い込んでる人だ。


「これを押せばすぐに運営さんがやってきて、貴方を退治しにきます! いいんですか!?」

「ぬ……ぐ……」


発情した獣じみた顔をしてる……ちょっとかわいらしいと思った自分を蹴り飛ばして、脅しを続け、山本さんは冷静になったようだ。


「す、すまぬ……おハ……ハル殿を見つけたと思ったらつい……」

「はい、気をつけてくださいね」

「うむ……それはそれとして」


ズザッ、と山本さんはその場で土下座をした。


「ハル殿! 先程といい前回といい、なんと不快な思いをさせてしまったことか! 誠に申し訳ない!」

「えっ、あ、いや、その……ま、まぁ、わかってくれればいいですから」

「いや、本当に申し訳ない! 故にこの度、腹をかっさばいて詫びる所存!」

「え?」


といって先程突き飛ばしたデンから刀を剥ぎ取って(!?)、自分のお腹につきさそうとしてうおおおおおおお!?


「まってまってまってまって!? そこまでしなくてもいいから!」

「止めてくださるな! 見境なくとはいえ、妻に似ていた貴殿にあのような……! もはや武士の風上にもおけませぬ! いっそ! いっそ死なせてくだされ!」

「いや死んだら駄目でしょ!? 落ち着いて!」


とかく。閑話休題。


「とにかく、山本さんは死んだら駄目でしょ。やることあるんだから」

「ぬぅ、そうであった……俺としたことがつい……」

「まあ、知り合いでかつ奥さんに似てるっていうからにはいろいろあるけどね……」


呆れ気味に苦笑いしていると、やはり山本さんがぽかんと見ている。くっ、褐色幼女がこちらをじっと見ているとか破壊力ありすぎでしょ……!


「まあ、振る舞いとかもそうですけど、気をつけてくださいね? ほんっと許可なく触ったら次こそ押しますから」

「う、うむ。気をつけるとしよう」

「いや気をつけるんだったらオレっちのことも気をつけろやああああああい!!」


ぐわらば、と起き上がるのはデン。

そういやこいつ山本さんに弾き飛ばされてたんだっけ。


「むおっ、貴殿は先程ハル殿につきまとっていた妙な男……もしやちぃたぁか!?」

「違わい! やいやいやいやい! よくもオレっちを弾き飛ばしてくれやがったなテメー! アバターがちょっとかわいいからって許してくれるとでも思ったのかっ!」


うわぁ、デンが思いっきり喧嘩腰だよ。

しかも結構怒ってる。当然っちゃ当然か……なんせ刀とられてるんだし。

というか、他人が装備してるものを普通にもぎ取ってるってどういうことだろ……。


「あいや、そういうつもりでは……怪我などはないだろうか?」

「怪我はねーけど刀返せ!」

「それはすまない」


といって山本さんが返そうとするとデンがもぎりとるようにしてそれを奪い返した。


「おいハル! こいつがひょっとして言ってたヤツか? 身長がオレっちの妹よりも低いじゃんか! それでオーガとかと渡り合ってたのか!?」

「まーうん。信じられないと思うけど、ほんとの話だよ」

「信じらんねーなぁ……でもそこまでいうなら、いっちょ試してみねーといけねーよなぁ? しかもハルに抱きつくとか……VRMMOじゃなくってもストーカーだろこれェ?」


うーん、さすがVRMMO……青筋表現までしっかりとしてる。こんなんマンガでしか見たことがないよ。

しかし山本さんきょとんとデンを見て、


「ハル殿。このいかにもな落ち武者殿は何を怒っているのだ?」

「落ちっ……! この退廃的なかっこよさがわからんのかァ!? てめぇくらァっ!」

「いや、そのような装束、胴などは丈夫だが頭部分が丸出しではないか……」

「はいオレっちキレたー! 今キレたー!! こーなったらば……」


デンがいろいろいじって……ってまず!?


「ちょっとデン! まずいって!」

「止めてくれんなやハル! お前が嫌な目にあったってーんなら、オレっちはコイツをとっちめなきゃなんねえ! 心配するな! こいつなんかにまきゃーしねーよっ!」


ああああああそうじゃないんだって!

デンってば『果たし状』送っちゃったよほんとに!?


果たし状っていうのはつまり他のVRMMOで言うところの1対1のタイマン戦闘だ。

賭けるものとか自由に決定することもできるが、今回は何もかけてないらしい。

今回わかったのは目の前でそんな入力をしてたのを見てたからわかったんだけども、普通はわからない。


山本さんのところに『果たし状』がやってきたのだろう。だがメニューウィンドウをつかもうとして手をすからせている。


「なあハル殿。この青色の透明な看板はどうやって掴むのだ」

「え?」

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