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ディア・デザート・ダークナイト  作者: RINSE
Dessert1.パンケーキ
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第8話「少女と竜」

 夜が明け、太陽が姿を見せ、世界を明るく照らし始めた。

 木々の間に差し込む朝日が、森をさらに美しく彩っている。まるで完成された絵画のような光景が、目の前に広がっている。


 見ているだけで心が洗われるようだった。ヒューダ族の、人間の手が行き届いていない、緑が美しい森林。自然の生き物達が、幸せそうに暮らしている”声”が無数に聞こえてくる。


 そんな幻想的な空間の中を、ビオレ・ミラージュは駆けていた。


 呼吸を乱しながら、ビオレは必死に走り続ける。腰まで伸びたローツインの紫髪を鬱陶しいと思ってしまう。

 約束の時間までは、まだ余裕がある。

 けれど、なるべく早く”彼”に会いたかった。3日前から約束していたのだから。


 目の前に、広場へと続く坂が見えてきた。村の者たち全員が入れるほどの巨大な広場だ。

 ビオレは体内の魔力(ヴェーナ)を活性化させ、足に風の力を纏わせる。


「よっ!!」


 意気込むと同時に魔法を発動し、大地を蹴って跳躍する。

 大地と風がビオレを押し上げ、まるで羽が生えたように飛び上がったビオレは、坂を一気に飛び越え広場に躍り出た。


 同時に『ハイジャンプ』の効果が終了し、周囲に突風が沸き起こる。


【むぉっ】


 広場にいた”彼”が、驚きの声を上げるのが聞こえた。


「ご、ごめんね、ラミエル! 早く会いたくて魔法使っちゃった」


 ビオレは、目の前にいる”彼”に謝った。


【ああ……構わん。相変わらず元気いっぱいだな、ビオレ】


 真紅の鱗が特徴的なドラゴンが、巨大な双眸(そうぼう)でビオレを見つめながら言った。


 ラミエルと呼ばれたドラゴンは、頭を下げ、顎を地面にのせていた。リラックスしていたせいか、その重低音の声には、若干の眠気が垣間見えた。


 小柄なビオレを飲み込んでしまいそうな大きさの瞳には、優しさが色が混じっている。ビオレは屈託のない笑みを浮かべ、ラミエルの巨大な口元に、寄り添うように腰掛けた。


★★★


「でね! 昨日もお父さんが「まだまだ実力不足だな」とか言ってさ! どう思う!?」


 ビオレが怒気を混ぜた声で言った。尖った長耳がピコピコと動く。


「私もう31歳だよ? そりゃあ、身長は小さいし、まだまだ子供だけど、村の中ではお父さんの次に弓が上手いんだよ!?」

【理由が分かっているではないか。子供だから。そして父親よりも弓が下手なのだろう】


 ラミエルが言葉を発すと、草木が激しく揺れた。

 全長30メートル、体高20メートルという巨大なドラゴンの声は、一言喋るだけで、嵐のような風が巻き起こってしまう。


「け、けどさぁ……私、本当に強いんだよ? 弓で害獣をいっぱい仕留めてきたし、魔法も上手に使えるし。ガーディアンだったお父さんは納得してないみたいだけど」


 もみあげをいじりながら、拗ねるように言った。


【……だからだろう】

「え?」

【お前が大事だからだろう。自分の力を過信する者は、必ず痛い目を見る。ビオレの父上は優秀なガーディアンだ。それを知っている。……だから、ビオレがそうならないように、鍛えているのだ】

「……そう、なのかな」

【嫌いか? 父は】

「ううん。大好き。ただね、お父さんは私のあこがれなんだぁ。だからもっと強くなりたいなって思う」


 ラミエルが口を上に向け笑い、嬉しそうに両翼を広げた。

 空に浮かんでいた雲が消え失せる。まるで、天が驚いたようだ。


【力を求めるか。その感情は間違っていない。ならば、我が鍛えてやろう】


 その言葉を聞いて、ビオレの顔が明るくなる。


「本当に!?」

【ああ。そのために、早起きしたようなものだ】

「やった!! ねぇ、魔法も見てくれる!」

【もちろんだ】


 ラミエルの巨大な歯が見え隠れする。

 ビオレは感激し、鋼鉄の赤い鱗に近づき、唇を優しく押し付ける。


「ありがとう。ラミエル。大好き。いつも私の我儘(わがまま)を聞いてくれて……ヒューダ族から村を守ってくれて」


 ラミエルの瞼が少し下がる。


【……お安い御用だ。お前達を守るのが、私の使命だからな】


 その目は、優し気に微笑んでいるように見えた。


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