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ディア・デザート・ダークナイト  作者: RINSE
Dessert3.ブルーベリーマフィン
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第77話「ウォーニング・"ワーク"・ガンバンク」

 ベルクートは露店を開きながら、違和感を覚えていた。

 周囲に目を向ける。人通りの数は相変わらずで、休日ではないため馬車がひっきりなしにメイン・ストリートを通っている。

 それはまだいい。


 だが明らかにおかしいことがあった。

 キャラバンの露店の数が減っていたのだ。

 オーディファル大陸内にある国の中で、キャラバンが稼げる場所と言えば、ギルバニア王国の他にはサフィリア宝城都市くらいしかない。キャラバンが多くいるのはサフィリアの特徴でもあった。


 なのにその数が少ないというのは、観光名所をひとつ失ったようなものだ。

 気味が悪いと思いながらも、ベルクートは椅子に座ってアンバーシェルを操作していた。ゲームをやったり漫画を読んだりして時間を潰している。今日も相変わらず人は来なかった。


「おい、あんた」


 声をかけられ慌ててアンバーシェルをしまう。


「お、いらっしゃい!」


 営業スマイルを浮かべて相手を見る。

 顔を布で覆っており、軽鎧を身に纏っている盗賊(シーフ)が立っていた。

 ベルクートはその姿に見覚えがあった。

 

「あれ、あんた」

「覚えていてくれたか」


 相手は安堵のため息をついた。

 露店を開いた初日にベルクートを冷やかしに来た、あの盗賊(シーフ)だった。


「なんだよ。また冷やかしに来たのか。悪いが帰ってくれ」


 しっしっと、虫を払うように手首を動かす。


「ち、違うんだ! あんたに礼が言いたくて」


 盗賊(シーフ)は必死な声を出した。ベルクートは首を傾げる。


「あ? 礼だぁ?」

「ミカを助けてくれたんだろ? ゾディアックさんと一緒に」


 ミカという単語を聞いて、「ああ」と言って思い出した。カルミンと仲がいい盗賊(シーフ)の子だ。

 ベルクートは相手を見る。よく見ると、目元がそっくりだった。


「娘さん?」

「いや、妹だ」


 相手は頭を振った。


「何でガーディアンなのにキャラバンをやっているか、理由は聞かない。ありがとう、妹を助けてくれて」

「どういたしましてって言いたいが、男の礼は素直に受け取れねぇんだ。俺はうちの商品購入で頼むよ」

「いや、それはちょっと勘弁してくれ。ただ、その代わりにひとつだけ言いたいことがある」

「何だよ」


 盗賊(シーフ)はベルクートに近づき、口を開く。


「どうやらガーディアンやキャラバンが無差別に襲われているらしい」

「……あ? なんだそりゃ」

「犯人が誰なのかわからない。モンスターの仕業かもしれない。だけど、不可解な死を遂げている連中が多くなっているんだ」

「確かなのか?」

「あんたも覚えがないか?」


 ベルクートは昨日のことを思い出す。ビオレがガーディアンが殺されていた、ということを話していた。


「危険なモンスターの仕業かもしれないだろ」

「サフィリア宝城都市内でも殺人が起こっているんだ。特にキャラバンの」


 盗賊(シーフ)の声には若干の焦りの色が見えた。ベルクートは鼻の下を指で擦る。


「なるほど」


 キャラバンの数が少ない原因を知ると、ベルクートは呟いた。盗賊(シーフ)の視線が露店に並ぶ銃器類に向けられる。危険物を見るような目つきだった。


「相手が何者なのか、何が目的なのかわからないが、銃を売っているあんたはターゲットにされやすいだろうよ」


 そう言うと盗賊(シーフ)は踵を返した。


「忠告したからな! じゃあな!」


 わざとらしく大声で言って、手を振りながら背を向け歩き出した。


「はいよ」


 生返事を返してベルクートは椅子に座って足を組んだ。危険な匂いを確かに感じていたが、それでもベルクートは何とかなるだろうと思っていた。

 自分の実力に対する絶対的な自信。相手が何者であろうと、遅れは取らないだろう。


「すまない、いいか」


 ベルクートは瞼を上げ、客の方を見る。

 大柄で、体がぶ厚い獣人が立っていた。首輪(ネックナンバー)がない。服装からしてガーディアンのようにも見えなかったが、ベルクートは笑みを浮かべる。


「いらっしゃい! 銃をお探しで?」

「ああ。昔、ブラックスミスにいてね。懐かしいな」


 そう言って獅子はハンドガンを手に取った。獅子の大きな手のせいか、50口径の巨大な銃が、まるで玩具のようであった。トリガーに指をかけてはいない。どうやら使っていたらしい。もちろん弾は抜いてあるため、暴発の心配はない。


「うん、いい銃だ」

「お目が高い」

「改良しているな。魔力(ヴェーナ)が通しやすい。君の技術かい?」

「まぁ、恥ずかしながらそうですわ。まだ完成度は高くないですがね」

「謙遜しないでくれ。いいじゃないか、気に入ったぞ」


 獅子は腰から札束を取り出した。


「この銃をくれ」


 ベルクートは金の束を見て、目を輝かせた。


「おおお! 本当ですか! ありがとうございます!! あ、もう初回サービスってことで弾はおまけしちゃいますわ。ちょっと銃を貸してください。購入済みのサインを入れるのに型番が必要なんだ」

「ああ」


 獅子は快く渡してくれた。両客だ。見た目は恐いが物腰は柔らかい。

 ベルクートは銃を触り、型番を確かめると紙に書き込み、金を確かめる。

 そして釣りである札と小銭を渡す。


「今日から使うんで?」

「ああ。護身用になるがね。ありがとう、店主」

「いえいえ! またごひいきにぃ!!」


 ベルクートは勢い良く頭を下げた。獅子は爽やかな笑い声をあげ、ベルクートの露店を後にした。

 しばらく歩き人通りが少なくなってきたところで銃を見つめた。


「仕事がやりやすくなるな」


 トムはそう言うと、薄暗い路地の中を進み、姿を消した。



お読みいただき、ありがとうございます。


次回もよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] いや、一日空くくらい、気にしませんから..(^^;;
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