表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

「なんで、PCR検査が進まないんだ」

作者: さきら天悟

「なんで、PCR検査が進まないんだ」

自称名探偵・藤崎誠は詰め寄った。


「なんでかな~」

若手総理候補ナンバーワンの現環境大臣・太田は頼りなく答えた。

藤崎とは官僚時代の同期で親友だ。

「俺にもわからん。

日本ってこんなにも遺伝子検査が遅れていたなんて。

当初は、検査で陽性が出たら、症状がなくても、

隔離のために入院させなければいけなかったが」


「症状が軽い感染者はホテルや自宅待機できるようになったんだ。

どんどん検査すべきじゃないのか」

藤崎はグラスを取り上げ、一口含んだ。


「俺もそう思う。

早期に検査し、感染者を発見すれば、

経済活動の再開も早くなる」

太田もグラスのバーボンをあおった。

グラスをカウンターテーブルに置く。

「とにかく、検体を取るのが手間がかかる。

完全防備しないと感染のリスクがある。

それに防護服も足りてない。

どうしようもない」


「ニュースを見ると、ドライブスルー方式でも1か所で1日20人程度?

海外に比べてどれだけ、遅いんだ」

藤崎は太田が担当大臣かのようになじった。


太田はうなだれる。

「でも、なぁ~」

藤崎を見つめる。

「何かいい方法でもあるのか」

藤崎の目は輝いていた。

だから呼び出したのか、と思った。


「ああ、簡単だ。

防護服なんていらない」

藤崎は言い放った。


「いらなって無茶だろう」

太田の顔が険しくなった。


「うつらないヤツが検査すればイイだろう」

藤崎は表情を変えずに言った。


「うつらないヤツなんていない・・・」

太田はハッとした。

「まさか、コロナ感染し治った人に・・・」


「そうだ。

抗体を持った人にやってもらえばいい。

院内感染した医者や看護師、

素人でも練習すればできるようになるだろう。

どうせ、コロナが治っても風評被害で会社にいけない人がいる。

そういう人が最前線で頑張っていれば、風評被害も収まる」


「一石二鳥か。

いやいや、まだこのウイルスには解明されていない面がある。

再感染の可能性がないとは言えない。

人道的に無理だろう」


「そうか、良い案と思ったけど。

無理か」

藤崎はニヤリとした。


「本命の案をだせよ」

太田は見抜いていた。

藤崎にはもっと良い案があることを。


「逆転の発想だよ。

そういうモノがなければ良い小説は書けない。

良い推理小説が」

藤崎は自称名探偵だが、小説家を目指していた。

自分の小説が映画化されて、その主演女優と・・・

だが、そう夢見ている間に堀北真希も竹内結子も結婚してしまった。


「逆転の発想?」

太田は首を傾げた。


藤崎はカバンから、それを取り出し、装備した。

そして綿棒を太田に渡した。


「は、はッ」

太田は藤崎の格好に失笑した。

「これなら検査に時間がかからないし、

コストも50円もかからない」


「特許を取ってもいいが、特許料は寄付してやろう。

でも、藤崎マスクって名称にしてくれ」

藤崎は真面目な顔で言った。


「その名称は逆に恥ずかしいぞ。

でも、ありがとう。

さっそく、仕事にかかる」

と言うと太田はスマホを取り出し、電話した。


太田は扉の前に振り返り、藤崎に深く頭を下げた。



2日後の月曜日、夜のニュースは新PCR検査で持ちきりだった。

スピーディで、経費がかからず、少し滑稽だった。

車でPCR検査を受けに来た人がビニール袋をかぶる。

マスクと手袋をした医者がビニール袋の切れ目から、

検査棒を通し、被験者の鼻の奥へ入れ、検体を取る。

検査終了後、ビニール袋を脱ぎ、所定の場所に捨てる。

それだけだった。

藤崎の言う逆転の発想とは、医者に防護服を着せウイルスを防ぐのではなく、

非検査者にビニール袋をかぶせ、ウイルスを飛ばさないようにすることだった。


その方法は日本各地に広がり、発展途上国にも広がった。



「やっぱり、特許をとっておけば・・・」

と後日、藤崎は太田にこぼした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ