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目覚める 2

夕食を食べ終わってから、タクトは部屋に戻り、明日の準備をしている。


「よし。リュックに鉈も入れたし、水とお菓子もOK。あと懐中電灯とタオル。準備OK。」


「お兄ちゃん、明日どっか行くの。」


ミカが風船を持って俺の部屋にやって来た。


まずい。見られた。


「ちょっとね。」


「私も行く。」


「無理無理。お子様は連れて行けないよ。」


「私、お子様じゃないもん。6年生だもん。」


「あ~残念。中学生だったら連れて行ってあげたのに。」


「なによ。その言い方。むかつくわね。お兄ちゃんだって昨日、泥ん子遊びしてきたってお母さんが言っていたわよ。」


「う、それは···」


「ほうら、そうなんじゃない。お兄ちゃんの方が子どもじゃない。フ~ンだ。」


そう言ってミカは部屋から出て行った。


「あぶね~。さすがにあそこにはミカは連れては行けない。ん。」


どうやら妹は風船を忘れて行ったようだ。


「風船か。」


タクトは呟く。


昨日はなんで破裂したんだ。壁にたまたまササクレみたいのがあって、それに触れて割れたのかな。


不思議だ。


ま、いいや。


とりあえず、風船が割れたら俺のせいにされるから妹に返しにいくか。


タクトは、風船を取ろうと手を伸ばした。


すると、風船についている紐が手に吸い寄せられ、掴んだ。


「ええ!!!」


ちょっと待て。


タクトは驚いて風船をすぐに手放した。


マジか これは現実か。


ひょっとして、超能カ、サイコキネシス、念動力か。


タクトはもう一度、手をかざした。


すると風船の紐は、タクトの手に引き寄せられる。


「やっぱりそうだ。」


マジだ。すげ~。


なんとも言えない嬉しさが胸の奥から込み上がってくる。


やばい。超叫びたい。


タクトは踊る心を押さえ、冷静に考えた。


でも何でだ。なんでこんなことが出来るんだ。


今まで出来なかったのに。


う~ん。


やっぱりあれしか考えられない。


昨日のあれだ。緑の水晶だ。


それしか考えられん。


よし。原因は解った。


タクトは昨日の出来事を原因としてこじつけた。


ということは、この力でなんでも持ち上げられるってことか。


俺って最強じゃね。


世界征服も夢ではないぜ。


「よし。」


タクトは一番先に目に付いたリュックを空中に持ち上げることにした。


「行くぞ。」


ヒロシは自分に気合を入れて、腕をかざした。


「う~ん。」


リュックは普通にそこにある。


畳の上だ。


いつもどおり何もリュックは感じていない。


ん、片手じゃだめか。


タクトは両手をかざして、集中した。


「う~ん。」


リュックはうんともスンとも動かない。


なんでだ。


「うっ」


なんか気持ちが悪くなってきた。


タクトは、畳に腰を下ろしてリュックの様子を見ていたが、普通にそこにある。


なぜだか次第に頭も痛くなり、気分がどんどん悪くなり横になった。


「何だよ。」


超能力を授かったわけでもないのか。


と考えながら、タクトはその場で横になり眠りに就いた。




「お兄ちゃん、朝ごはんよ。あ~あ。いくら寝る時が暑いからって、布団も何も敷かずに寝ているなんて、朝方は冷えるから風邪を引くよ。大丈夫。お子様なんだから。」


「ん、もう朝か。寒ぶ。」


タクトは起き上がり、両手で肩を抱いて震えた。


「ほら、温かいみそ汁もあったよ。」


「ごめん。すぐ行く。」


タクトとミカは朝食を食べるために一緒に階段を下りた。


「いただきます。」


今日の朝ごはんは、卵焼きと納豆と塩鮭と味噌汁か。


いつも同じだな。


ヒロシは、心の中で悪態をつきつつ、ご飯やおかずを次々とロの中に入れて行く。


それにしても、よかった。


何とかご飯は食べられる。


まだ、少し気分が悪いが何とかなりそうだ。


「タクト、今日も出かけるの。あんまり無茶したらダメよ。」


「ん、どうして母さんがそのことを知っているの?」


と言いつつタクトはミカを見た。


ミカはしれっとした顔で黙々とご飯を食べている。


はは~ん。こいつが母ちゃんにばらしたな。


「タクトのことならなんだって知っているわよ。頼むから人様に迷惑になるようなことはしないでね。」


「大丈夫だよ。母ちゃん。ちょっと暇つぶしに、散歩がてら、山に登るだけだから。」


「お母さん、お兄ちゃんったら、私のこと子ども扱いするんだよ。」


お、直接、お母さんに私も一緒に連れていけと訴えるようなことはしないようだ。


「ミカ、子ども扱いされたくないようだったら、朝は、自分一人で起きられるようにならないとね。」


母は、ミカを咎めた。


ミカはそんな言葉が返ってくるとは思わず、お母さんの言葉に不満げな顔をしている。


「そうだ。そうだ。」


「何よ。お兄ちゃんだって起きないくせに。」


「ば~か。ミカと違って学校がある日は自分で起きます。ごちそう様。」


そう言って、タクトは2階の部屋に戻った。


「あ、逃げる気。」


後ろからミカの声が聞こえた。




「う~ん。」


タクトは畳の上に仰向けになり考え事をしていた。


あの浮いている風船は動かせるんだよな。


タクトは右手の人差し指を左右に動かしている。


その動きに合せて、風船も左右にゆっくりと動く。


う~ん。


昨日の夜はリュックを浮かせようとしたけど駄目で、その後は、気分が悪くなって寝てしまった。


だからあの時は、自分の力、超能力を疑ってしまったが、今、こうして実際に風船を左右に動かしている自分を見ていると、確実にあるよな。


超能力。


サイコキネシス。


でも、どうしてだ。


軽い風船は動かせて、重いリュックは動かせない。


という事か。


解らないが、希望的観測でいうと、練習をすると力が強くなるってことか。


そうだ、そうであってほしい。いくら超能力があるからと含って、風船しか動かすことが出来ないなんて、しょぼい。


いや、それでもすごい力なんだろうけど、世界征服できないじゃん。


なぁ~んて。


それは冗談だけど。


「ちょとお、お兄ちゃん。ん、何してたの?。」


「別に何もしてないよ。っていうか、いつも勝手に入ってくるなよ。」


「あやし~い。お兄ちゃんも男の子だもんね。」


「なんだよそれ。いい加減にしろよ。ミカ。」


「それよりこれこれ。私の風船。」


そう言ってミカは風船についている紐を掴んだ。


「あっ!」


タクトは声を漏らした。


「あげませんからね。これは私の風船。お兄ちゃんは昨日、割っちゃったでしょ。」


そう言って、ミカは風船を持って部屋から出て下の階に下りて行った。


あ~あ、持っていかれた。風船。


この力の検証をまだ、したかったのに。


ちぇ、まあ、しょうがない。


予定どおり、あの場所に行って写真を撮りにいくか。


タクトは起き上がり、リュックを手に持ち背中に背負って、家を出て、山に向かった。


「今日も天気がいいな。帰りは午後の3時ぐらいになるかな。おにぎりも持ったし、準備万端だ。」


独り言をつぶやいているタクトはUFOが落ちた場所を目指して田んぼのあぜ道を歩いている。


その途中タクトはふと下を見つめた。


石か。


そうだ。軽い石だったら大丈夫なのか。


タクトは、小指の先ほどの小さい石を拾った。


よし、ちょっとやってみるか。


タクトは左手の平に小石を置き、見つめた。


すると小石は手の平の上で宙に浮きだした。


「よし!」


タクトは右腕でガッツポーズをして喜んだ。


小石から気を逸らすと、小石は手の平に落ちた。


浮いたよ。浮いた。すごい小さい石だけど。


すごすぎるよ。やばいよ。


いったい俺はどうしちまったんだ。


東京に戻ったら・・・ むふふふ。


タクトは悪いととを思いついたようだ。


タクトは右手にある小石を握り締め、緑の水晶がある山を目指した。


顔からは笑みがこぼれているが、近くに人はいない。

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