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目覚める

「ちょっと、何よ。その格好。泥遊びでもしたの。17歳にもなって、もう子どもじゃないんだからやめなさいよ。」


母に言われた。


「うん。」


タクトは軽く返答した。


「ん、ちょっとタクト。目が充血しているわよ。どうしたの?」


「たぶん。泥が目に入ったからじゃないかな。」


「早く、お風呂で目と体を洗って、来なさい。夕食にするわよ。」


「わかったよ。」


タクトは風呂場に人り、お湯が出る蛇口の前に付いている鏡で自分の顔を確認した。


何だ。この目は。いくらなんでも赤すぎるだろ。


ヤベぇ。


タクトの白目は真っ赤に充血していた。


それになんだか気持ちが悪くなって来た。


タクトは気持ちが悪いのを我慢して髪の毛や体に付いている泥を落した。


体を拭いてから風呂場を出て、そのまま2階の部屋に直接向かった。


「お~い、タクト。ごはんよ~。」


2階へ上がる時にタクトは母に声を掛けられた


「ごめん。調子悪い。もう寝る。」


そう言って部屋に入り布団にもぐった。


しばらく布団の中で横になり休んでいると、頭に激痛が走った。


「つつつ..」


それと同時に気分も悪くなる。


やばい。なんだ、この痛みは。


痛い辛い、気持ち悪い。


俺、このまま死ぬのかな。


頭の痛みはどんどん増していき、タクトは頭を押さえながら、もだえた。


「う~~~」


声にならない悲痛なうめき声を出したが、痛みが強烈すぎて声に出して助けを呼ぶことすらできない。


その痛みはしばらく続き、タクトはそのまま、気を失った。




「ジリリリリリリィ」


朝になり、部屋の隅の小さいテーブルの上にある目覚まし時計がけたたましく鳴っている。


「うるせぇなぁ。」


タクトは、鳴りやまない目覚まし時計を見た。


すると


「リ·リィ」


と音が変になり、やがて音が止まった。


「あれ、壊れたかな。」


ま、いいか。毎朝うるさかったし。


音が鳴らないように設定したけど壊れているみたいで、出来なかったし。


ちょうどいいや。


ほっとこ。


タクトは、目覚まし時計をそのままにして、顔を洗う為に部屋を出た。


階段を降りて、洗面所にある鏡で自分の顔を見た。


「あら、タクト。具合はどうなの。」


「ああ、大丈夫みたい。目の赤いのも引いてきたみたい。」


まだ、赤みは残っているが、昨日の時とは雲泥の差で改善されている。


「そう。良かったわね。もう泥んこ遊びはやめた方がいいわよ。

泥の中には変な菌がいるかもしれないし。」


「わかってるよ。」


「それならいいけど。そうそう、今日は、駅の方まで用事があるから行くけど、あなたもついて来る。」


「行く行く。当たり前じゃん。こんな暇なところに僕一人を置いていかないでよ。」


「それなら、早く朝ごはんを食べて支度して。」


「OK、すぐ食べて準備するよ。」




タクトの父が運転する車に家族は乗って、駅を目指した。


「ねぇ、用事って何んなの?母さん。」


「別に用事って言うほどでもないの。ただの買い出しよ。」


タクトの家族は車中でそんな他愛のない会話をしながら、くねくね道の山道を、時速60kmぐらいで走行している。


道は狭いがほとんど対向車に出会わないため、父は自慢のドライビングテクニックを駆使して山道を走らせる。


だいたい2時間半ぐらい走ったかな。


やっと駅に到着した。


「あのさ、駅って道の駅じゃん。」


「そうよ。道の駅よ。何でも揃ってるんだから。」


「ちくしょう騙された。普通、駅って言えば鉄道の駅だろ。」


「そうだけど、最寄りの駅は無人よ。」


「あ、そう言えばそうだ。」


「理解した?。ほら、お昼ご飯は好きな物食べていいから、ちょっと買い物が終わるまで適当に待ってなさい。」


そう母に言われ、タクトはお金を渡された。


ここの道の駅は村唯一の観光スポットであり、地場野菜からお土産、日用品やお酒など多種多様な物がいろいろ売っている。


しかもちょっとしたレストランもある。


普通のスーパーより品揃えが豊富で、ちょっとしたショッピングセンターだ。


タクトは、買い物をする家族を待つため、昼食のお弁当やら飲み物を買った。


店を出た所にちょうど休憩が出来るテーブルが有ったので腰を下ろして弁当を食べることにした。


「今日は曇っていて過ごしやすいな。」


それにしても、昨日のあの緑に光る物体は何だったんだ。


それに、昨夜の出来事。


すっげ~頭がいたかったよな。


あの時、マジで死ぬかと思った。


今はなんともないけど。


あ、そうだ。


あの穴の中で浮いていた緑のやつをスマホで撮影したら、俺、超有名人になれるんじゃね。


絶対、UFOの落し物だよ。


未知との遭遇だ。


昨日は、それどころじゃなかったけど。


明後日には東京に帰るから、明日に、もう一回行ってみるか。


今回は雑草対策に(ナタ) とか準備していこう。


それにさっき買ったお菓子も持って行こ。


それにしても、母ちゃんたちは長いな。


買い物。


もう、弁当食べ終わっちゃたじゃん。


でも、仕方がないか。


田舎での母ちゃんの楽しみなんて、ここでの買い物ぐらいだろうしな。


気長に待つか。


タクトは弁当を残さず綺麗に食べ、テーブルの上には空になった容器や割りばしの袋などを適当に置いている。


タクトがぼーっとして時間をつぶしているとふと強めの風が吹いた。


「やべ、空の弁当が風で飛ぶ。」


タクトは、弁当の容器を押えようとした。


「えっ」


弁当が入っていたビニールや割りばしの袋が風で飛ばされる中、弁当の容器はテーブルに張り付いているのか、ぴくりとも動かない。


タクトは疑問に思い弁当の容器を持って、弁当の底を見た。


「別に何にも付いてないよな。なんでこれだけ飛ばされなかったんだ。」


タクトは疑問に思ったが、ビニール袋や割りばしの袋などいくつかの物が風に飛ばされ、遠くに飛んで行ってしまったので、速攻で回収するために後を追いかけた。


「タクト兄ちゃん。何やって遊んでるの。」


「おう、ミカか。ゴミが風に飛ばされて、回収してんだよ。」


ヒロシが飛ばされたごみをすべて回収し終わるころ、タクトの視界に母たちを見つけた。


「タクト、お待たせ。買い物は終わったから、帰りましょう。」


「おい、タクト。すっごい、うまかったぞ。ステーキ。食べなくて良かったのか。」


「え、何それ。父ちゃん、聞いてないよ。」


「あら、最近、タクトが家族と一緒にご飯なんか食べるの恥ずかしいって言うから。

だからさっき多めにお金渡したでしょ。」


「あ、だから、3,000円もくれたのか。昼ごはん代にしては多いなぁと思ったんだよ。」


「和牛よ、和牛。油が甘くておいしかった。」


ミカが幸せそうな顔で自慢した。


「ちょっと母さん。ひどいよ。都会での話だよ。ここでは違うよ。」


「あら、そうを。日頃から私を困らせるあんたがいけないのよ。」


「ちぇ、わかったよ。」


「それじゃ、帰るよ。」


父が促した。


「ちょっと待って。風船もらってくる。」


ミカは、道の駅の無料イベントで配っているガス入りの風船をもらいに行った。


「おい、ミカ。車で待っているぞ。」


父は叫び、タクトと母も車に乗ってミカを待った。


「お待たせ。ハイ、お兄ちゃんの分。」


そう言ってミカは風船をタクトに渡した。


「何だよ。ミカ。いらないよ。」


「なによ。せっかく貰ってきてあげたのに。昔はもっと喜んでくれたでしょ。」


「わかったよ。ありがとう。」


「へへへ」


ミカも車に乗り、帰路についた。




道の駅から実家に帰って来たタクトは部屋の中央で大の字になって仰向けで寝ている。


部屋の天井にはミカから貰った風船が扇風機の風を受けてプルプルと震えながら天井の隅の方で浮いている。


「あ~暇だ。夕食まで1時間くらい時間があるな。何しよう。」


タクトは、ブルブルと震えている風船をぼうっと眺めている。


しばらくして、タクトは手持ち無沙汰だったので無意識に腕を上げ、手を風船に向けた。


すると、扇風機の風の影響でブルブルと震えていた風船が、ピタッと止まった。


「えっ」


タクトは一瞬驚いて腕を降ろした。


すると再び、風船はブルブルと元通りに震えている。


「ん。」


ちょっと待て。今、風船が一瞬止まったような。


まさかな。風船が止まる訳が無いよな。


今だって風に揺られているし。


そんなことを考えながらヒロシは上体を起こし、再び手を風船に向けた。


止まっている。ちょっと待て。


状況が飲み込めん。


タクトは風船から意識を逸らした。


すると風船はまた、扇風機の風を受けてプルプルと揺らいでいる。


「まっさか~」


タクトは、風船が止まったことを疑って声を出した。


よし。物は試しだ。


ちょっと誰かに見られていたら恥ずかしいけど、ここには俺しかいないから、超能力の真似ごとをしてみるか。


タクトは立ち上がり、目を閉じた。


深く深呼吸して腕をゆっくり風船に向け、手を広げた。


顔をゆっくり上げ、目を開いて風船を睨んだ。


すると突然、風船がパーンと破裂した。


「うわっ」


タクトはビックリして声を上げた。


すると部屋のドアが開いた。


「お兄ちゃん、何をやっているの。もうご飯よ。

あっ、私があげた風船が割れている。

さっきの音がそうね。もう。すぐ、お兄ちゃんは風船を割るんだから。

そんなんじゃ、もう貰ってあげないからね。」


「ごめん。ごめん。なんか急に割れたんだよね。」


「そんな急に割れる訳ないでしょ。」


「そうだよな。ごめん。ごめん。ご飯だよな。行こう。」


タクトは、妹を連れてご飯を食べるために部屋を出た。


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