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UFOとの遭遇

「つまんねぇ所だな。本当に何もない所だ。」


タクトはつぶやく。


あるのは、山と川。


タクトは今、家族と田舎に帰郷している。


毎年、お盆のこの時期になると東京から秋田の山奥に高速道路を使ってはるばるこの「ど田舎」に家族と一緒に遊びに来ているのだ。


子供の時は時間を忘れて、一日中、虫を追いかけて遊んでいたが、今はそんなことなんて出来ない。


タクトは、17歳の高校生2年生だ。


しかも、この場所は山に囲まれているため、スマホも圏外で通信もつながらない。


スマホゲームで時間をつぶすことすらできない。


タクトは一日中、親の実家で寝ている訳にもいかず、特に目的も何もないのだが、昼食を食べてから散歩に出かけている最中だ。


この辺りは、ちょうど平地になっていて、いくつもの水田が区画ごとに広がっ

いる。


それを囲むように山が連なっている。


要は山に囲まれた田園風景。


タクトは田んぼの緑の穂が

風で揺れる中、あぜ道をひたすら当てもなく歩く。


もちろん。周りに人なんかいない。


タクトだけだ。


タクトは意味もなく、その辺に落ちている棒を拾い、振り回しながらあぜ道を歩く。


しばらく散歩していると、地面の草がカサカサと音が鳴り出した。


何かと思い、よく見ると草と草との間からヘビの体の一部が見えた。


「うお、ビックリした。さすがにヘビは怖いな。」


タクトは思わず口に出した。


田んぼにはカエルがたくさんいて、それを目当てに蛇が集まってくる。


田舎ではよく見る風景だ。


タクトは昔、ヘビに噛まれたことを思い出した。


まだ、足に残っている噛まれた跡。


毒蛇では無かったので、大事には至らなかったが、タ

クトが6歳の時のショックな記憶だから鮮明に覚えている。


そんなことを思いながらタクトは、ただひたすら歩く。


昔ここでトンボを追いかけた記憶を思い出しながら、たまに雲一つない青い空をゆっくり見上げながら自然を満喫している。


しばらくあぜ道を散歩していると突然、キーンとゴーが合わさったような音が聞こえてきた。


タクトは周りをキョロキョロして音の発生源を探した。


すると上空、南西の空、遠い空に白い光の塊が、隕石でも落ちてくるように棒状になって落下している。


「おお、流れ星か。昼間なのに珍しいな。なんか青い

空に白い光の線って、綺麗だなぁ。」


そんなことを考えながらタクトは光の行く末をしばらく見ていると突然、その白い光は方向を変え、蛇行を始めた。


「ん、なんだろう。」


光はだんだんとタクトに迫ってくる。


「なんか、ヤバくね。」


タクトが身の危険を感じ、逃げようとした時、すぐ眼の前の山の中腹に白い光は落ちた。


「え、なんだ今の!」


タクトはかなり驚いて一際大きい声を発した。


隕石か。


でも、なんか途中で曲がったよな。


UFOか。


どうする。


距離的には2時間ぐらいか。


落ちた場所に行こうと思えば行ける距離だな。


今は13時をちょっと過ぎたころだから、夕方までには家に戻ってこれる。


よし、探しに行っちゃいますか。


タクトは、空から落ちて来た物体を探しに山に向かった。


タクトの性格なら、絶対に危険を冒してまで探しにはいかないのだが、この田舎に来て3日目。


毎日が暇すぎて、いつも以上に興味が湧いてしまっていた。




「うげ~。ちょっと草がすごすぎる。背の低い笹もびっちし生えていてなかなか進めない。


それにアブもたくさん飛んでいる。


うぜ~。


こんな大変なら探しに来なければ良かった。


ちくしょう。」


水田を超え、道もなにも無いところから山に入り、物体が落ちたであろう場所を目指し、登り始めてから、だいたい1時間以上が経過している。


「なかなか見つからないし、戻ろうかな。


さすがにUFOだったら怖いし。」


タクトは探しに来た後悔の気持ちを一人でぶつぶつ言いながら、落ちた場所を探しているが、なかなか見つからない。


山の中は薄暗く、音も静かだ。


墜落現場を探しに一人で山に入ったのはいいが、山は人の侵入を拒むかのような雰囲気が漂っている。


さすがに一人では怖くなってきたのでタクトはそろそろ帰ろうという気持ちになっている。


その時、かすかに焦げ臭いにおいにがした。


「ん。臭うな。こっちか。」


タクトは臭いのする方向に歩き出した。


その臭いはだんだんと強くなる。


「あっ、スゲーなこれ。」


そこは、折れた枝や葉っぱが散乱しており、木も数本なぎ倒され、枝や葉がそこら中に散乱してめちゃくちゃだった。


「すごいことになっているな。」


タクトはその様子を確認しながら周辺を歩いていると地面に大きな穴がぽっかりと開いている場所を見つけた。


「どうやらこの中から焦げ

た臭いが漂っているようだ。」


タクトが穴の中を覗くと穴は斜め下に向かって続いており、奥は真っ暗で何も見えない。


「絶対、ここだ。どうすっかな~、降りられそうなんだけど、何か明かりが点くようなも持ってたけな~。」


そう言いながら両手をズボンのポケットに突っ込んだ。


「あっ」


そう言えば、昨日、墓参りでろうそくに火をつけるために使ったライターがあった。


「ラッキー。」


タクトは、ライターに火を灯し、転ばないように慎重に穴の中に入って行った。


薄暗い中をライターの光だけを頼りに進んでいく。


「あっ」


タクトは木の根か何かに躓いた。


体は前につんのめり、体制を整えようと逆の足を前に出して踏ん張ろうとしたが、また、何かに躓き、体が前に大きく傾き、前方に倒れた。


「あぁぁぁぁ」


タクトは地面に顔が当たるのを防ぐために手を突いて体を押さえようと踏ん張った。


しかし、急な下り坂下になっているので、上手く手で押さえられず、頭を内に丸めたことで、そのまま勢いよく、でんぐり返しのようにどんどん転がって落ちて行った。


「イッテ~。やっと止まった。」


タクトは少しずつ瞼を開けた。


すると、そこは一面が緑色に光っていた。


「何だこの光は?」


そう呟きながら辺りを見渡すと、緑色の光を強烈に放つ六角形の大きい水晶の様な物体がそこに浮いていた。


タクトは、変な感覚に囚わられ、光を放つ水晶に顔を近づけた。


すると、タクトの意識は水晶に引き込まれて動けなくなった。


目が見開き、目の周りから耳まで血管が浮き出てくる。


「はっ」


タクトは気を失う手前のところで、我に返り、光る物体から強引に離れた。


「やばい。これはやばいやつだ。」


タクトは怖くなって、その場からすぐに離れ、穴から出るために駆け足で来た道を戻った。


途中、銀色の突起物が地面から出ていたが、今までに感じたことのない恐怖と吐き気が込み上げて来た。


銀色の物体なんてお構いなしに、なりふり構わず、穴から速攻で出て、そのままの勢いで山を下山し、家に戻った。



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