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めちゃくちゃ過保護な姉たちがチート過ぎて勇者の俺は実戦童貞  作者: マルクマ
第二章 姉たちがイーノックが大好きで過保護になったワケ
57/100

ロッティ悪くないです

「さすがに良心に痛みを感じるのだが……」


 不定期に行われる姉妹同盟の会合でメルセデスお姉ちゃんは時々弱音を吐く。

 武術は人外の強さを持つメルセデスお姉ちゃんでも心は普通の人に近いので、このような暗躍をしていること悪いなーって思っているっぽい。


「それはきっと幻痛よ。イーノックを助けるためなんだから私たちの行いは間違いなく正しいわ」


 武術も魔術も人並み以上には使えるシャズナお姉ちゃん。けれど心のタフさはメルセデスお姉ちゃんとは比較にならない魔獣級のなので、どんなにお兄ちゃんを追い詰めても良心が疼くようなことは全く無いっぽい。

 そもそもシャズナお姉ちゃんに良心があるのか疑問。


「この計画が続くとお兄ちゃん確実にダメ人間になっちゃうね」


「それでいいのよ。評判が最悪で実際何もできないダメ男になったら王女なんかに盗られる心配はないわ。私はどんなイーノックでも愛せるし、イーノックがどんなポンコツになっても平気。それでイーノックが私だけのモノになるのなら願ったり叶ったりよ!」


 シャズナお姉ちゃんは益々大きく育っている胸を反らして本来の目的をちょっと見失ってる感じの宣言をした。

 どんなお兄ちゃんになっても手放さないのはロッティも同じなのでシャズナお姉ちゃんが独占するのは許さないけど。


「シャズナの宣誓はどうかと思うが、このままいけばイーノックが腑抜けのような男に育つのは確実だな。姉としては憂慮すべきことなのだろうがイーノックが死んでしまうよりはマシだ。何もできない人間になったとしても生きている限り私が責任をもって庇護するさ」


 メルセデスお姉ちゃんはお兄ちゃんがダメ人間になった後のことも色々考えているようだった。



 そんなこんなで数年後。


 お兄ちゃんを堕落へ導く数々の誘惑をお兄ちゃんは『過剰な家族愛』だって良い方に勘違いした。

 そしてお兄ちゃんはその家族愛に応えようと思ったのか家族に対する優しさを維持したまま成長。

 今では「おはよう姉さん。今日も綺麗だね」なんて言葉を真顔で吐ける天然紳士に変貌しました。


 最初にそんな勘違いをされたせいで『イーノックを甘々に甘やかして腑抜けな坊やにしてしまおう計画』はグダグダです。


 メルセデスお姉ちゃんとの手合わせで厳しい事を言われても、お兄ちゃんはそれも自分を鍛えるための『愛の鞭』だと解釈して、決して諦めない不屈の忍耐力を発揮。

 元々不器用だったお兄ちゃんは技の習得よりも武術の基礎となる体力づくりを重視したので、ちょっとやそっとでは疲れないタフネス戦士になりました。


 魔術の方は適正がほとんどないのに召喚術の訓練をしているので無駄に魔力を消費。

 そのせいで一度も召喚に成功していないのに最大魔力総量だけが増加する珍現象が起きた。

 ウチに来ている魔術の先生はこんな事普通は有り得ないと驚いていたけど、うちの家族はみんな普通じゃないので今更な話だと思う。



 次々と計画が失敗する一方でちゃんと成功している計画もある。


 お兄ちゃんの実力を測る。という建前でお兄ちゃんの自信を削ることを真の目的とした『勇気の元になる自信を削ろう計画』。


 メルセデスお姉ちゃんとロッティが月一でお兄ちゃんと勝負する。

 メルセデスお姉ちゃんとの対戦方法は純粋な物理戦闘のみに限定。

 ロッティとの魔術勝負も単純な魔力量比べだけなので、ずっとお兄ちゃんが負け続けている。


 ……けれど、その勝負も最近ちょっと苦しいみたい。

 前回の会合でメルセデスお姉ちゃんが『魔術有りの実戦形式で勝負したら、もう私でも勝てないだろうな』って言ってた。


 現在のお兄ちゃんは、本当は強いのに自信がないってゆー少々おかしな状態だそうです。


 ということで結果発表。


 ロッティたちの暗躍の結果『無自覚チート勇者』が爆誕しました!


 ロッティたちが望んでいた結果とは微妙にずれた成果になって、シャズナお姉ちゃんは頭を抱えて「なんでこんなに強くて良い子に育っちゃうのよぉー! でも、そんなイーノックも好きぃー!」って、わけのわからない叫びをあげてた。

 ロッティだってどんなお兄ちゃんでも大好きだけど、やっぱり今まで通り優しくて、それでいて強いお兄ちゃんでいてくれるのならそっちの方がいいのです。


 メルセデスお姉ちゃんが「もしかしたら、これも託宣の強制力なのか?」って呟いていたけれど、たぶんそれが正解だと思う。


 その後、あれやこれやで魔王討伐をすることになって、勇者の託宣を受けているお兄ちゃんが行かされることになった。

 シャズナお姉ちゃんが担当していた『イーノックの悪評を広めて勇者認定を取り消させよう計画』は間に合わなかったようです。


「これも託宣の強制力のせいだね」ってて言ったら、シャズナお姉ちゃんは「は? どう考えても今回のは海を焼いたロッティのせいでしょ!」って言ってたけど違います。託宣のせいです。ロッティ悪くないです。


 四人いる方面魔王の一人が相手ならお兄ちゃんが勝つって託宣で保証されているし、ロッティたちはお兄ちゃんの本当の強さを知っているのでそれほど心配する必要はないんだけれど、メルセデスお姉ちゃんが別の理由でお兄ちゃんを心配してた。


「今回の遠征でイーノックに実戦を経験させたらイーノックは自分が本当は強いってことに気付いてしまう。それは何としても阻止しないとマズイぞ」


「ふ~ん? そうなの?」


「そうねぇ、先月の手合わせ稽古の後、翼竜クラスなら瞬殺できるレベルになっているって姉さん言ってたものね。そんな強さになっているイーノックが実戦なんか経験したら自信がついちゃうし、無責任な民衆からの期待が高まって、今までのようにのんびりスローライフを楽しんでいられなくなるわ」


「でも、お兄ちゃんは本当に強いんだから、そろそろ少しくらい褒められてもいいんじゃないかな……ちょっとかわいそう」


「あらロッティ。イーノックの本当の強さが世間にバレると一気に「英雄の誕生だ!」ってお祭り騒ぎになるわよ? そうなったらイーノックはたくさんの女の子にモテモテになって縁談が山のように届くようになるけど、ロッティはそれでいいのね?」


「ごめん、ロッティ思い違いしてた。お兄ちゃんには一生可哀想なままでいてもらう。それが最善の選択」


 素直に自分の間違いを認めるとシャズナお姉ちゃんは満足そうに頷いた。


「なんというか……ある意味でイーノックは本当に可哀想だな」


「なんでメルセデス姉さんが第三者みたいな顔でこっち見てんのよ、姉さんも主犯の一人なんだって自覚してよね」


「うっ……すまない」

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