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めちゃくちゃ過保護な姉たちがチート過ぎて勇者の俺は実戦童貞  作者: マルクマ
第二章 姉たちがイーノックが大好きで過保護になったワケ
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末女ロッティの場合

 ロッティはね、普通の人とはかなり違うっぽい。


 ロッティは生まれつき魔力量が多くて、生まれた時もけっこう大変だったってお母様が言ってた。

 今もそうだけどロッティの魔力はダダ漏れ。コントロールするのすごく大変。


 普通の子はこんなふうにはならないそうなのでロッティは普通じゃない。

 普通じゃないのはダメな事? って家族に聞いてみたらこんな答えをくれた。


「普通? 久しぶりに聞いた言葉ね。懐かしいわ」って笑ったのはお母様。

「ロッティが普通じゃなくても大丈夫だとも。そもそも私の子供に普通な子はいないんだ」って疲れた顔で微笑んだお父様。

「ん~……そこはあまり気にしなくていいんじゃないかな。私も少し普通から外れているからそれについて何かを言える立場じゃないし」って苦笑いをするメルセデスお姉ちゃん。

「ロッティが普通じゃない? それで? それより私のイーノックを早く返してくれないかしら。ロッティが抱きついていると私が抱きつけないじゃない」シャズナお姉ちゃんの意見はどうでもいい。

 そしてお兄ちゃんは「普通かぁ……お父さんはまだ普通って言えるんじゃないかな」って遠い目をしてた。


 そっかぁ、お父様が普通なのかぁ。


 みんなの答えを集めて考えた結果、『普通』ってわりとどうでもいい事だって分かった。


 ロッティは普通じゃない。

 ロッティは普通でなくていい。

 そもそもロッティは普通になれない。

 そして普通ってことはそんなに大切な事でもない。


 それだけ分かれば十分。


 ロッティが普通じゃなくてもロッティの家族はみんな優しい。


 お父様はいつも魔力火傷するくらいまでロッティに近づいて話を聞いてくれる。

 お母様はロッティが長く着ていても燃えない服とか靴を作ったり丈夫な布とか研究したりしてくれている。


 メルセデスお姉ちゃんはロッティがちょっと苦手みたいだけれど、メイドさんたちみたいロッティを怖がっている感じじゃないし、ロッティを嫌ってるわけでもない。ちゃんと優しくしてくれている。でも、ロッティもメルセデスお姉ちゃんがちょっと苦手なのでなんとなく気持ちが分かる。嫌いじゃない。なんとなく合わなくて、少し話が詰まるだけ。


 そんなメルセデスお姉ちゃんと真逆なのがシャズナお姉ちゃん。


 いつも「早く私にイーノックを返しなさいよ」って顔を合わせる度に不機嫌全開で言ってくる。

 ロッティが「お兄ちゃんはロッティと結婚するんだから諦めて」って当然のことを言うとすごく怒る。

 メルセデスお姉ちゃんみたいな遠慮が全く無い。

 お兄ちゃんのことになると全力の言い合いになるので「ロッティのこと嫌いなの?」って訊いたら「は? そんなわけないでしょ。家族なんだし」ってフンスと鼻を鳴らされた。

 ちょっと意外だったけれどロッティもシャズナお姉ちゃんがそんなに嫌いじゃない。好きでもないけど。ううん、ちょっとだけ好きかも。


 イーノックお兄ちゃんは大好き。すごい好き。

 抱っこしてくれるし、抱っこしても死なない。

 思いっきり魔力をぶつけても服が弾け飛ぶだけで済むのはお兄ちゃんだけ。

 動物に同じことをしたら真っ黒な炭になるし、植物に同じことをしたら灰も残らないのにね。


 ロッティみたいな子が生まれたら普通は誰も世話ができないので死んじゃうらしいけど、お兄ちゃんが魔力完全無効化ってゆー特別な体質持ちだったからお兄ちゃんがロッティの面倒を見てくれた。


 お兄ちゃんはロッティの命を救ってくれた人で、ロッティを育んでくれた大切な人で、ロッティに人の温かさを教えてくれる唯一の人なのです。


 もしロッティが将来結婚するとしたら触ることのできるお兄ちゃんしか候補はいないので、どう考えてもロッティの旦那様はお兄ちゃんなのだけれど、シャズナお姉ちゃんは大反対。

 お姉ちゃんはいっぱい求婚のお手紙もらってるのだからその中から選べばいいのにって言ってるのに聞いてくれない。困ったお姉ちゃんです。


 お兄ちゃんはたまに「魔力をコントロールできるように練習しようか?」ってロッティに言ってくるけど、それはいくら大好きなお兄ちゃんのお願いでも断固拒否です。

 前に「一人で髪を洗えるようになろうね」って言われたので頑張って一人でシャンプーできるようになったら、お兄ちゃんは一緒にお風呂に入ってくれなくなった。

 言われた通りに頑張ったのに貰えたのはご褒美ではなく罰だったので、それ以来ロッティは何も頑張らないって決めたのです。


 魔力を抑えられるようになると、お兄ちゃんのベッドで一緒に寝ることができるのにね。ってお母様がとても魅力的な事を教えてくれた時はグラッと気持ちが引き寄せられたけれど、それが出来るようになると昼間にお兄ちゃんとベタベタくっついていてもいい理由が無くなっちゃうので、魔力のコントロールは誰にも内緒でこっそり練習している。


 七日のうち五日を眠って過ごして、起きている二日間はお兄ちゃんに甘えたり、シャズナお姉ちゃんとケンカしたり、ちょっとだけ魔力コントロールの練習をしたりして過ごしている。


 そんな毎日を繰り返していたある日の事、いつも通り五日間の眠りから覚めて、顔を洗うより先にお兄ちゃんの部屋に行ったらお兄ちゃんがいなかった。


 時間が夜だったのに部屋にいないので、またシャズナお姉ちゃんの部屋に監禁されているのかと思って探知魔法を使ったら、母屋から離れたところにある馬小屋にお兄ちゃんの反応があった。

 反応がちょこちょこ動いているのでお姉ちゃんに監禁されている感じじゃない。


 そんなところで何してるんだろうと思いながら窓から飛んでいこうとしたら、後ろからメルセデスお姉ちゃんに声を掛けられた。


「ロッティ起きたのか。ちょうど良い、話したい事があるんだ。私の部屋に来てくれ」


「え~。ロッティさっき起きたばかりだから、とりあえず一回お兄ちゃんにギューってして魔力吐き出したい」


「悪いがそれは明日まで我慢してくれ。イーノックの馬が今夜あたり子供を産そうで夕方くらいからずっと付き添っているんだよ。ロッティがそこに行くと馬が怖がってお産に影響するから遠慮してほしい」


「そっか。じゃあしょうがない」


 動物はロッティが近づくのを怖がる。

 ロッティは良い子だから怖がる子に近づくなんて意地悪な事はしないよ。


「イーノックが近くにいない今だからこそ話しておきたい事があるんだ。シャズナはもう私の部屋に来ている。ロッティも来てくれ」


「ロッティも? ロッティ難しい話とかわかんないよ?」


「このままではイーノックが死んでしまうかもしれない懸案があるんだ。私たち姉妹でそれを防ぐための話し合いをしたいのだが……ロッティは欠席でいいのかい?」


「行く!」

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