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めちゃくちゃ過保護な姉たちがチート過ぎて勇者の俺は実戦童貞  作者: マルクマ
第一章 童貞勇者と過保護なお姉ちゃんたち
24/100

い、いえ、けっこうザコっすよ、ボク

ブックマークしてくれている人が40人! そして4人の人が評価してくれました!

ありがとうございます。

これからも頑張って書きますね!

 俺たちの戸惑いを無視して、シスターは雑兵たちに向かって喜々として尋ねた。


「今の宝珠に録画してた? そう、ありがとう。さすが姉さんが選別した精鋭ね、気が利いてるわ。あぁ、ロメオ、気付いていると思うけれどあの魔族はデュラハンだから首だけ包んでもらえる? 王都に持って帰るわ」


 まるでお土産物を選ぶみたいな口ぶりでザバルダーンの首を所望するシスター。


 白銀鎧の女の斜め後ろに控えていたアサシンが慇懃に頭を下げた。


「御意。身体はどうしましょう」


「いらないわ」


 レストランで肉料理を取り分けるような簡素なやり取りでザバルダーンの運命が決まった。


 地面を抉るような踏み込みで飛び出したアサシンが一瞬でザバルダーンに肉薄する。


「え? なっ、貴様!?」


 ここまで距離を詰められるまで全く反応できないほど速さの違いを見せつけられたザバルダーンが慌てて剣を振り回したけれど、剣を横薙ぎに振り切ったときにはアサシンはとっくにザバルダーンの背中に取りついていて、両手に握ったナイフでスパンと鮮やかに奴の首を身体から分離させていた。


 なんて奴だ……。


 このアサシンもヤバイが、東方魔王の四天王があっさりやられているのをまるで日常風景のように落ち着いて眺めているコイツらの感性も色々やばい。


 身体から切り離されて激高したザバルダーン(首)は何か喚いていたが口に石を詰め込まれた後、マントでくるっと包まれて手土産状態にされた。


 奪われた首を取り戻そうと身体のほうも暴れていたけれど、白銀鎧の女が剣の柄に手を置いただけで奴の体は魚の干物のようにパカッと二つに開かれた。……むごい。


「ズナ姉ちゃん。ロッティ、大事な人殺してなかった? 大丈夫だった?」


 シスターの後ろについている幼女の形をした得体のしれない何かがおずおずとシスターに尋ねている。


「えぇ、今回はセーフよ。家族揃ってホームレスになる事態は避けられたわ」


「じゃあ、もうお家帰っていいの? お兄ちゃんのとこに帰っていい?」


「それはまだダメ。だって魔王を捕まえてないでしょ」


「むぅ~……。ロッティ、もう歩くの疲れたー」


 幼女のような凶悪な何かはストンとその場に座り込んだ。


 その子を中心にズワッと半径三メートル以内にある植物が一気に燃え上がって炭になる。


 もしかしてアレ、あのシスターの従魔か?


 少なくともアレは人間ではない。あんな人間がいてたまるか。


「もう歩けない? 困ったわね、姉さんどうしよう?」


 シスターが眉を寄せて白銀鎧の女に話を持ち掛ける。


「そうだね、ここからまた引き返して魔王の城に行くのは確かに面倒だ」


 白銀鎧の女は少し考えるポーズをとって、それからおもむろに俺を見てニッコリ微笑んだ。


「ひいいぃ!」


 逃げなきゃダメだ! 逃げなきゃダメだ! 逃げなきゃダメだ!


 ザバルダーンがお土産にされている間も俺は必死になって逃げようとしていたが、足がガクガクして動けなかった。どうする? どうするよ俺!?


 あ、そうだ。ガンバン!


 どんな激しい戦闘に駆り出されても必ず生還することに定評のある実力派のガンバンならこの窮地から逃れる術を持っているかも!


 って、アイツはどこだ!?


 あまりにも存在感が薄いから気にかけなかったけれど、ガンバンの姿が見えな……あ、いた!


 あ。あの野郎、身体丸くしてただの岩に擬態してやがる!


 どんな激しい戦闘に駆り出されても必ず生還って、そうやってズルしてたからか!


 いや、決めつけは良くないな。もしかしたら隙をついて奇襲をかける作戦かも……あ、ダメだ、あいつスゲェ震えてる。こっち見てる目がめっちゃ泳いでるし、口パクで俺に『助けて』とか言ってやがる!


 どうしよう、アイツも頼りにならねぇ!


 カタカタと震えているうちにあの白銀鎧の女が俺の前まで来てしまった。


 俺が一生懸命目を逸らして『ボクに構わないでください』って意思表示しているのに、白銀鎧の女は空気も読まずに俺に話しかけてきた。


「キミ。強いらしいね?」

「い、いえ、けっこうザコっすよ、ボク」


「そんなわけないだろう。ロメオの奇襲を回避したんだからたいしたものだよ。キミって四天王とかいう幹部かな。そうだと嬉しいのだけれど」


「ははっ、回避できたのはまぐれですよ。四天王ですか? 一応やらせてもらってますけど」


「そっか。じゃあキミ、ここに魔王連れて来てくれ」


「……え?」


 強者らしい無茶振りに俺の理解が追いつかなかった。


「幹部なら魔王にすぐ会えるだろう? 魔王を捕まえてここに連れてきたら私はキミは殺さないおく。魔王の城まで行くのが面倒なんだ。妹も歩き疲れたと言っているし。私たちはここで三十分休憩しているから、それまでに魔王をつれてくるんだ。いいね?」


 じゃないと殺すよ。というセリフを目で言いながら白銀鎧の女は俺の肩をポンと叩いた。


 こ、この女、人間のくせに俺様を舐めくさって!


 恐怖に支配されていた俺の心が、プライドを踏みにじられることで怒りのパワーを爆発させた。


 ふざけんなよ、俺がテメェみたいなクソ女の言いなりになるものか!


 三十分以内? ここから城までどれだけの距離あると思っていやがる!


 しかも行って帰っての往復で三十分だぁ!?


 人間ごときが俺に上から目線で命令するんじゃねぇ!




「お待たせしやっしたー! 魔王一匹お届けでーす!」


 怒りに燃えた俺は二十七分の超特急で臨時魔王をお届けした。


 どうよ!? 俺様の獣の下半身はダテじゃねぇぜ!


 へへっ、これで俺は見逃してくれるんスよね?


 ありがとうミノタウロスの二人。

 キミらが手伝ってくれたおかげで簡単にこの小娘を簀巻きにできたよ!

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