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めちゃくちゃ過保護な姉たちがチート過ぎて勇者の俺は実戦童貞  作者: マルクマ
第一章 童貞勇者と過保護なお姉ちゃんたち
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ボクは立派なサキュバスなんだから。えへへっ

今回ちょっと短めです

 どうしてこうなった?


 ボクは無理矢理玉座に座らされてビクビクと身を縮こまらせている。


 ボクの左右に控えているのは大きな斧を持った筋骨隆々なミノタウロス。


 魔王の警護役として側仕えがいるのは普通のことだから何もおかしな事は無いはずだけれど「おい、あまりうろちょろして俺たちに余計な手間ぁかけさせるなよ臨時魔王」って、上から目線で魔王に命令してくるような側仕えなんてボクいらない。


 臨時の東方魔王を誰にするかは父上の側近だった東方魔王四天王の話し合い(一部実力行使有り)で決まり、ボクが担ぎ上げられることになった。


 四天王と比べるまでも無く、側使えのミノタウロスにすら見下されているボクが臨時魔王に選ばれたのは当然理由がある。


 みんな勇者が怖いからだ。


 勇者とは人間どもの中で稀に現れるバケモノの呼称だ。


 勇者は強い。ハンパない。


 魔族社会では言う事をきかない子供に「そんな我がまま言ってると、怖い勇者がやってきて食べられちゃうわよ」と恐怖の象徴として語られている。


 そんな勇者の目的は今も昔もただ一つ『魔王討伐』。


 勇者の目的がはっきりしているので魔王は城の最奥で待ち構えて、それなりに実力のある戦士をとにかく集めまくって物量作戦で勇者を返り討ちにするのが魔族と勇者の戦いのセオリーだ。


 さて、ここでよく考えて欲しい。


 物量作戦で勇者を迎え撃つってゆーけど、勇者を抑え込めなかったらどうするの?


 軍勢規模の魔族を突破して玉座の間まで来ちゃうようなバケモノとタイマンとかになったら普通に勝てないよ!


 いつかはボクもあそこに座れるくらい立派な魔族になるんだ! って憧れていた玉座だけれど、今こうやって実際に座ってみたらまるで断頭台に首を乗っけているみたいで恐怖しか感じないよ!


 自分に目標を定めて殺しに来ている侵略者が向かって来ているのに平然と王座に座ってなんかいられない! 普通に怖いよ!


「報告します! 勇者を擁した人間どもの軍勢が我が領内を進行中。その数二千。兵種は歩兵千八百に騎馬二百。それに随行して輜重車両が五十。このまま進みますと日没前にウルルマルカ川に至るので、人間どもはそこで野営をするものと予想できます。報告以上です」


 ボクが握りしめている通信用魔道具から伝令兵の声がした。


「ウルルマルカ? そこってここから騎馬で半日の距離だよ。もうそこまで来てるんだ勇者……」


 吐きそうなほどの恐怖で身体の震えが止まらない。というかさっき吐いてきたけど黄色い胃液しか出なかった。食べ物が喉を通らなくて臨時魔王になってから何も食べてない。


「おい、しっかりしろよボウズ」


 ずっと怖い顔をしてボクの隣に立っていたミノタウロスのおじさんが大きな手をボクの頭に乗せてグリグリと撫でまわす。


「ミ、ミノさん?」


「そんなにビビるな。おめぇのオヤジは普段からご立派なことを言っていたくせにいざとなるとさっさと逃げちまったからムカついていたがよ、おめぇは立派だよ。逃げずにここで踏ん張ってるんだからオヤジより魔王してるぜ。……ずっと、あたりのキツい態度をとってて悪かったな」


 右側のミノタウロスのおじさんがちょっとぎこちない笑顔でニッと笑ってくれた。

 すると左側のミノタウロスのおじさんもボクの肩に手を置いてウンウンと頷く。


「凶悪で野蛮な勇者の最終目標にされている気分は最悪だろうがよ、それでも二日は耐えたんだ。あと一日だけがんばれ。そうすりゃ俺らよりよっぽど強ぇ四天王の兄貴たちが勇者をやっつけてくれる」


「そ、そうなるかな? 大丈夫かな?」


「もし四天王の兄貴たちでも歯が立たなかったら、側仕えの俺らが命がけで勇者を食い止めてやるからよ。その隙にここを脱出して中央の大魔王様のところに逃げ込めばいい。だからそんな今にも死にそうな顔してんじゃねぇよ。な?」


 ボクの側仕えのミノタウロスは口は悪いけれど良いおじさんたちだった。


「うん。おかげで怖いのがだいぶ楽になったよ、ありがとう。でもボク、ボウズじゃないからね。これでもボクは立派なサキュバスなんだから。えへへっ」


 魔族だと種族の違いで雄雌の見分けがつかないようなことは多々あるので男の子に間違われてもボクは気にしない。


「え? でもその胸……」

「ちょ、言うな! 可哀想だろ!」


 ……ボクは気にしない。

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