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[閑話] 今日もウチの領は平和だねぇ

ちょっと物騒な表現が続いたので、ほんわかショートを挟んでみました。

短いですがご賞味あれ^^

 ロッティはちょっとだけ不機嫌だった。


 いつものように五日間の睡眠から目覚めたロッティ。


 起きたら寝床にしていた棺型魔力拡散装置が壊れかけていて真っ黒な煙を吐き出していたので全身が煤だらけになっていた。


 魔力の拡散が不十分だったせいで着ていた寝間着もボロボロに炭化している。


 こんな状態で目覚めるのは初めてではないのだけれど、むしろわりとある事なのだけれど、やはり気分の良いものではない。


 起き上がろうとして棺の縁に手を掛けたらグニャリと溶けた。


 この状態で家の中を歩き回るのはさすがに危険だと思ったロッティは壁際にある太い鋼鉄の円柱に触れた。


 その瞬間、上の方からドォーン! と雷鳴が鳴り響き、衝撃波でビリビリと屋敷全体が震える。


 この円柱は『逆避雷針(ひらいしん)』。


 ロッティの体表に滲み出ている余剰魔力を雷にして大気に放出する装置で、ロッティが眠る地下室から地上にある尖塔の先端までズドンと真っ直ぐ貫いて設置されている。


 けっこう大掛かりな仕掛けだけれど、これでも体表の余剰分程度しか処理できないので、五日間の睡眠で体内に溜まってしまった魔力は――、


「おはようロッティ。良い夢は見れた?」


 逆避雷針の作動でロッティの目覚めを知ったイーノックがドラゴンレザーのブーメランパンツだけを着用した姿で地下室にやって来た。


 他人が見たら変態そのものな恰好であるが、本人は至って正気。


「おはようお兄ちゃん。さっそくだけどお兄ちゃんに出していい? すっごい溜まってて苦しいの」


「いいよ。全部受け止めるよ」


 にっこりと微笑んで両手を広げるブーメランパンツの兄。


「ばっちこーい!」

「お兄ちゃーん!」


 全身煤だらけで素っ裸のロッティがイーノックの胸に飛び込んだ。


 瞬間に海を煮たほどの魔力をぶつけられるがイーノックはノーダメ。しかしイーノックが穿いていたブーメランパンツが一瞬で弾け飛ぶ。


 イーノックの体に触れた魔力は瞬時に消失するものの、触れていない余剰魔力は逆避雷針から上空へと排出されるので、野外で抱き合った時のように足元の土が溶けるような惨事にはならない。


 ただ、余剰魔力でも『ロッティ基準の余剰』なので空に放たれる雷はドラゴンすらビビるほど高密度なので、これを見た知恵のある魔物はバーグマン領がいかに危険かを認知して決して近づかないようにしているらしい。


 一方で領内の民はすでにこの現象に慣れていて、突然の雷鳴に驚きはするものの「お、ロッティ様がお目覚めだ」くらいに捉えている。


 放出される魔力の密度が高すぎるせいで出力部分が融解しないように先端がⅤ字型の二股に分かれている逆避雷針。


 その独特なフォルムから放たれる雷撃は見る角度によっては青白い♡の形に見えることもあって、バーグマン領の珍風景として隠れた名物となっているらしい。


 尖塔からとんでもなく物騒な青白い♡を出現させている領主の館を領民の一人が見上げてこう呟いた。


「今日もウチの領は平和だねぇ……」

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