『アサシンクリード 映画版』映画感想に見せかけたゲーマーよりの感想になっている何か
※ネタバレあり
知っている人は知っている、『アサシンクリード』というゲームシリーズの映画版。
もうこのゲームシリーズが好きすぎてたまらないので、映画としていくらよくできていても厳しく評価せざるをえなかった……。
よくできてたけれどもゲームにはとても及ばない!
この映画、やはり監督がゲームの良さを表層的にしか理解できていない感が伝わってきました。パンフを読むと、どうも開発元のUBIから頼まれて仕方なく引き受けたっぽい台詞がちらほら……トレイラーしか見てないとか、普通インタビューでも言わないだろうに堂々と言ってる……。
ストーリーは、主人公のDNAから先祖の記憶を引き出し、その時代にシンクロするというSF的内容。
中世スペインで活躍したアサシンのご先祖様に憑依合体して、テンプル騎士団との戦いを再現するという、ゲームとほぼ同じような感じの話。
UBI全面協力のCGシーンだけじゃなく、生身で十回以上崖から飛び降りたという気概や、ゲームに忠実に再現すればベッドに寝てるだけの現代パートを、宙吊りマシーンに乗せて過去と動きをシンクロさせる、という設定はよかったです。
迫力のパルクール(忍者のように屋根伝いに走るアレ)の描写や遺跡巡り、イーグルダイブという高いところから飛び降りて無傷という技も再現、UBI十八番の空撮360度カメラ回しアングルなど、撮影は3Dと実写を駆使していて素晴らしかったので、アサシンクリードという名前じゃなければもっと楽しめたのでは? と思わなくもない。
もっと中世スペインの描写がしっかりしていたらなぁ……そこでしか会えない偉人にいっぱい会ったり(コロンブスには会っていたけれど)、グラナダ陥落までの道筋がはっきり描かれていたり、そしてせっかくアルハンブラ宮殿で現地ロケしたんならもっといいカメラワークがあったろうにと思わないでもない展開の数々……。
映像がふんだんに実写使ってて素晴らしいのに、もったいなかった!
現代パートが長すぎて、そこでだれるんです!
現代パートではなく中世スペインパートをもっと増やして欲しかった。
そしてバトルパートじゃなく、濃厚歴史ストーリーパートを充実させて欲しかったんだよ……。
このゲームの良さはスタイリッシュパルクールやオープンワールドだけではありません。
それなら他を当たればたくさんあるし、正直もっと凝ったものもあるのです。
『アサシンクリード』は、まさに自分が歴史の転換点に立ち会ったような気分になれる濃厚なヒストリカルロマン溢れるストーリーが最大の魅力!
実際にゲームの舞台になったところは、第三回十字軍、メディチ健在のころの花盛りのフィレンツェ、オスマンが栄華を誇っていたイスタンブール、ニューヨークがまだ森だったころの独立戦争時代、革命時の混迷のフランス、海賊が跋扈していたカリブ、産業革命真っ只中のイギリスなどなど! どれもこれも興味深い時代や場所ばかり!
そして今回の映画の舞台はレコンキスタまっしぐらで大航海時代前夜のスペイン!
字面だけ見ていたら本当に行ってみたくて仕方ない時代!
いや行ったら普通に死にそうだけど!
なのに、そこが生かしきれていなかったのが本当に残念。
しかも、日本側も恐ろしく期待してない感じで全然宣伝に熱が入っておらず、グッズもほぼゼロ……ゲームがCERO-Zだということをふまえても期待されてなさすぎ……。
せめて主人公がアサクリ2シリーズを支えたエツィオ・アウディトーレさんだったら!
ルネサンス時代の貴族が主人公で、日本でもそこそこ有名なボルジア家がヴィランの映画だったなら、ちょっとは人気出たかもしれないのに!
というわけでいろいろと惜しかった作品でした。
あと、ゲームをしていない人が見たら設定の説明が雑で「なんじゃこりゃ」みたいになります。ゲームクリアした私が見ても最後あたりの展開に「?」ってところが……。
もっとこう、『バイオハザード』のように監督と主演が「好きすぎて好きすぎて映画にしちゃった! てへっ」って感じじゃなきゃゲームの映画化は成功しないんじゃないかと思いました。
『バイオハザード』もシリーズごとにだれてきたけれど、映画一作目のテンションが素晴らしかったからこそ最終まで続いたわけで。
結論。3Dの映像は素晴らしかったが、話の内容は期待したほど濃くなかったです。
ちなみに、私は一人で映画館に行かない主義です。
誰かしら誘って行ったり、逆に誘われて見に行ったりするタイプ。
ここで映画レビューに残している作品は、一応私の中でAがつく作品ばかり。
『アサシンクリード』も貶しましたが、映像に関して素晴らしいのは確か!
一人で行きたくない理由は……それ以外の映画にあります。
プライム無料やレンタルなら特に腹もたちませんが、わざわざ映画館まで出向いてお金を出す価値のない作品を見てしまった場合! 滅多にないけど、時々地雷に当たる!
その場合、帰りに見に行った人たちと反省会をしないと収まりませんw
これはクソ映画だった! という感想を一人で抱えて帰るのも嫌だし、わざわざメモとして書いたり、ましてやwebに垂れ流すのもなんなので、レビューの五倍くらいの内容を見に行った人たちと喋り倒して映画の元をとろうとしますw
なぜこの映画がダメ映画になってしまったのか。
監督だったのか、脚本だったのか、演出だったのか、予算だったのか、キャストゴリ押しだったのか、続編の驕りだったのか、あるいはそれら全部だったのか。
どこをカットしてどこを増やせばもっといい映画になったのか(これはアサシンクリードでもやってることですが)。
そしてスッキリしてから帰ります。
……でも、どんな駄作でもパンフは買うのが自分でも不思議w