『ブロードウェイと銃弾』ブロードウェイコメディーに覆われた地獄変! なのに後味爽やかな結末!
※ネタバレあり
コメディーで有名なウッディ・アレン監督なのに、コメディーやラブ・ストーリー成分が少なくて意外と真面目だった! というのが第一印象。
「僕はアーティストだ!」と主張する、明らかに扱いづらい芸術家肌の主人公が最初から荒れてますw
舞台脚本家の主人公は、最高の脚本を書き上げたのに資金繰りのせいで上演できない。
なので、女優になりたいマフィアのボスの愛人を役に入れることを条件に、マフィアから資金を調達することに成功。
しかしボスの愛人は完全な棒読み女優だった!
このIQの低さと大根ヒロイン感を出せる女優さんが逆にすごい……ブロンドジョークみたいなことをガンガン言ってくるのになぜかウザ可愛い。実際いたらめちゃくちゃ困りそう。
マフィアの愛人なので、当然ガードマンという名前の強面の黒服が稽古についてきます。
が、そのガードマンが、ひょんなことから脚本のアイディアを提供するように。
主人公の脚本家より素晴らしいアイディアを次々提供してくれて、脚本がドンドン洗練されていく。
主人公は大喜び。プレ公演も大盛況に終わり、いよいよブロードウェイへ!
しかしボスの愛人の大根っぷりに愛想が尽きたガードマンは、より完全なる芝居を目指して愛人を殺害!
その後、マフィアのガードマンは撃たれるが、息をひきとる最後までセリフの提案をして死亡。
主人公は思わずその場から逃げ出し、自分の恋人に「僕はアーティストじゃない!」と宣言して映画は終了。
……言いたいことはわかります!
芸術を突き詰めていくと倫理的にヤバいところまでいってしまうので、適度なところで手を打つのも大事!
……ただ、フィクションとしては、このガードマン、決して嫌いじゃないのが困ったところw
むしろ、「俺の名前は出さなくていい」と言ってアイディアをくれ、共同作業の邪魔を一切せず、初演までこぎつけた段階でマフィアの愛人よりもいい代役を残し、最後まで劇の台詞を案じて死亡。
しかも脚本家の手をまったく汚さずに(ここ重要)……むしろこのガードマン一家に一台欲しいと思ってしまったw
見終わった後、よりよい映画のために大根女優を殺したマフィアと、昆虫研究者の先生がなぜかダブってしまいました。
小学生の電話相談室で「ペットでカブトムシを飼っているけれど、サナギの中はどうなっているの?」という無邪気な質問に、ものすごく明るいトーンで「じゃあ、一個切ってみようか!」と返せるのは昆虫研究者の先生だけw
確かに観察は研究の第一歩だけど……アレかな? 愛ゆえに殺すってやつかな?




