『IT』(2017リメイク版)の監督のホラー真骨頂は『MAMA』!
※『IT』(リメイク版)のネタバレほぼなし、『MAMA』のネタバレあり
IT|(2017)リメイクはまずパンフの装丁を褒めるところから始めましょう!
表紙はトレーシングペーパーに赤い風船と血しぶき付きロゴが印刷されてます。
トレーシングペーパーで霧がかかったような表紙から薄く覗くピエロ……半透明の表紙をめくると、暗闇にペニーワイズ(ピエロ)の邪悪な笑みが!
もうこれだけで大満足! 案の定予算の関係で、途中から数ページは藁半紙に赤一色刷りになったけど、この表紙デザインした人に拍手を送りたい! 大抵こういうのにはクレジット書いてないけど!
率直に言うと、本編は前のTV版がよかった……。
そりゃあ前よりCGも進化しているし、カメラアングルも凝ってますし、子役もいい演技してます。
ただ、怖いのは怖いですが、ヒューマニズムにより過ぎた感があり『スタンド・バイ・ミー』と勝負するならやっぱり『スタンド・バイ・ミー』に軍配が上がるのは確か。
以前のTV版はもっとペニーワイズがおどけていて、チープな恐怖の中に悪役としての魅力があった気がする……。
しかしオープニングの男の子が紙の船を追って走る一連の場面は素晴らしいので、興味のある方は予告編でご堪能ください。
というか、予告編は予告で出すのが勿体無いくらい、いいシーンの連続でした!
どしゃ降りに黄色いレインコート、排水溝、赤い風船、勝手に回り続ける写真スライド、そしてIT。
パンフでは「以前のものはチープだったよねw」とかいう話が出てたけど、あのチープさが逆によかったのに!! B級万歳だったのに!
でも、以前のTV版も後半ペニーワイズがピエロじゃなくなった時点で怖さが半減するのですがw
ITはピエロだから怖いんです! 実在したピエロ仮装の殺人鬼ジョン・ゲイシーがモデルなのは有名な話ですが、それ以前から道化はどこか不気味な存在だったと思います。
日本ではサーカスが巨大ビジネスとして成功したおかげで、暗く湿っぽい雰囲気はなくなってしまいましたが。
サーカスに暗いイメージがつきまとっていたのは、多分農耕社会における「おらが村の人」ではないからかと。
どこかからやってきて、どこかへ去っていく、素性の知れない人々。
そして道化師の顔が白塗りで何を考えているのか読みにくい部分が怖さを増幅させるのではないかと、仲間内で真面目に考察してましたw
大体リメイクを撮ったアンディ・ムスキエティ監督って誰だろうと思い、同監督の映画で一部界隈で超高評価だった『MAMA』|(2014)をアマゾンで鑑賞しました……そして、一気に監督ファンに!
これは十年に一度出会えるかどうかの感動系ホラー映画!
これこそ全米No.1取ってるのに『パシフィック・リム』の添え物扱いで一週間限定公開とか何考えてたんでしょう日本の配給元!
……うん、ホラーって売れないよねw
以下雑なストーリー説明と感想。
三歳と一歳から、たった二人で五年間、丸木小屋で過ごした少女たちが発見される。
どうしてこんな小さな子供たちだけで、五年間も生き残ったのか?
子供たちが一緒に過ごしたという『MAMA』は何者なのか?
その子供たちを引き取ることになった親戚とその恋人アナベルに、次々と怪現象が襲いかかる。
一個コンセプトから外れた演出があったので、そこは突っ込まれるところだろうけれど、それでもオープニングで幼児が壁に描いたイラストを長回しで写すことで五年間の空白を数十秒ですっ飛ばしたり、姿を見せない誰かと子供が遊んでいる描写があったり、めっちゃくちゃいいアングルでMAMAがぞわぞわっと出てきたり、思わず「上手い!」と唸る演出の数々……。
かなりジャパニーズホラー、特に『リング』や『呪怨』を意識してそうな感じでした。
そして、最後には泣ける!
泣けるホラーなんぞホラーの隅にも置けないと思っててごめん!
コンセプトはズバリ「母性」。
MAMAの外見は怖いです。気持ち悪いしホラーです。
それでも、そのMAMAに育てられた子供たちは「大好き」と言ったり、ニコニコ微笑んだり。
愛は種族?を超える……!
しかし、親戚の恋人という薄い繋がりでも、子供達に愛情を示してくれたアナベルにも母性があり、こちらが自分の属する種としては正しい側だとお姉ちゃんは気づいている。
異形のMAMAと普通の保護者であるアマンダの間で揺れ動く子供達の心もよく描かれていて、子役も末恐ろしい演技力でした。
とりあえず、監督がモリディアーニ嫌いということは『IT』でも『MAMA』でもすごく伝わってきましたw
いや、この場合逆に好きなのか?