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『この世界の片隅に』 どこかほんわかした戦中の生活。原作を読む前に映画を、そして気に入ったら原作を!

 公開当時じわじわ話題になっていたこともあって、原作一巻を何の気なしに読み始めたらそのまま三巻まで一気読みしてしまい映画までなだれ込んだ作品!


 動作も大きくないのに細かく、絵が淡い色調で綺麗。

 原作の雰囲気そのままで、どこかふわふわした主人公すずが、広島から呉へお嫁入りして戦中を過ごす話。

 基本的にリアルに進むのに、最初と最後にファンタジーなバケモノが出てくるのがまた不思議。

 このバケモノは戦争の象徴か、それとも横暴だった兄の象徴かはわからないけれど。


 ゆっくりおっとりした主人公も、夫も、すぐにいびる儀姉(主人公はいびられているとは全然思っていないw)も、夫の両親たちも、当時暮らしていたという存在感がある!


 戦前も戦後も戦時中も、普通に生活している人々。

 戦時中はさすがに普通の生活……というわけではないけれど、だんだんそれが普通になっていく。

 「兄さんが死んでよかったと思うとる」というすずの心情をちゃんと入れてくれてたのはよかった。

 絶対無理だろうと思っていた玉音放送時の台詞はやっぱり改変されてた……。


 でも、最高潮は原爆と玉音放送。

 今までなんのために耐えて戦ってきたのか! と普段ゆったりしているすずが啖呵を切るシーンがあるけれど、全ての常識が一気に覆った世界は衝撃だっただろうな。

 それでも、時は進むし腹は減るので、米軍の補給でたくましく生きるすず。

 広島といえば「原爆の恐怖!」という作品が多い中、普通の人の生活が淡々と続くところに焦点を絞ったいい映画でした!




 ……惜しむらくは、見る順番! 最初に映画を見て、原作を読むべきだった!

 原作を一気読みしてハマってから映画を見るべきじゃなかった!

 この話に重要なキーパーソンであるリンさんのエピソードがほぼ出てこないんだもの。

 いつ出るのかな、どうやって改変するのかな、と思ってそればかり気にしていたら終わってた。


 でも、後からカットしたのか、と気づきました。

 主人公のすずさんが夫にノートを届けるとき、ノートの裏表紙が小さく長方形に切り取られているところを発見して「!」と。

 この長方形に切られているところを、リンさんが持っているのです。

 あとは細かいけれど、最後のクラウドファンディング支援者のロールのときに出てきたイラスト。

 これで原作を知っている人は、感じ取ってくださいということなのか……確かに一般公開するにあたって色々な問題はあっただろうけど、リンさんというサブヒロインがいるからこその重要な台詞がたくさんあったのに残念。

 できればリマスター版でリンさんのシーンも見たい!




 ちなみに、一番「原爆の恐怖」を感じるアニメ映画は、意外にも核なんか落ちたこともないイギリス製の『風が吹くとき』。

 イギリス政府が二次大戦時、実際に刊行した手引書を元に、核爆弾に備えて家をリフォームする老夫婦の話。

 実際にこれを刊行していたなら顰蹙ものの内容にびっくり!

 戸板で放射線を遮りましょう、というずさんな内容に真摯に従う二人が怖い。

 原爆が落ちたときは、家はめちゃくちゃになったものの、二人は無事だったので喜び合う。

 そしてだんだんと原爆症になっていき(この様子がまた怖いのに、知識がない老夫婦は深く考えず衰弱し続ける)、最後はイギリス政府が用意しておいてください、と言った豆の袋に入って横になる……政府公認の民間用死体袋じゃないか……。

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