『ゴッド・ファーザー』三部作 この作品のために映画感想を始める!
※ネタバレあり注意!
ご飯中にちまちまと見て、昨日最終回になりました。
……今までどうしてこの映画を見なかったのかわからないくらい、心に残る壮絶な体験をした気分!
アカデミー賞とか有名なテーマソングとか、F・コッポラ監督とか色々気になる要素はあったのに、どうしてこの映画をスルーしていたのか!
いや、「やたら長い、特に興味ない分野の任侠映画、人間関係が複雑そうで面倒」という確固たる理由により今まで視聴しなかったのですが、この度根気よくちょっとずつ見ることにしました。
感動したというか、心にずーんと残る無常観。
まあ、最初は「やっぱマフィアのドンは猫抱いてるw」とか、「二代目って大体血の気多すぎて失敗するよなあ」とか人ごとに構えて見ていたんですが、2や3になってくると、やむなくマフィアのドンを継いじゃったマイケル(アル・パチーノ)が、ファミリーを守ろうとするあまり冷徹になりすぎてファミリーを崩壊させていく様子に思わず感情移入してしまって「マイケル頑張れ! やってること悪いが頑張れ!」と応援してしまう。
最後のオペラシーンの出来の良さに驚愕したり、細かい伏線や演出や間が抜群だったり……これはコッポラ監督の映画ではいつも感心するところですが。
ものすごく良質な大河ドラマ、男の一代記を観た気がします。
マイケルを演じたアル・パチーノの演技も素晴らしく、陽気な好青年から冷たい目をしたドンへ、そして寂しい老人へ……と移り変わる表情も自然で良かった。
雄大な自然や摩天楼の美しい風景なのに、突如銃撃戦が始まるのでもう目が離せない。
しかし銃撃戦の場面すら綺麗。果物屋の店先で銃撃されたとき、たくさんのオレンジがアスファルトに散らばる上からのシーンとか素晴らしすぎる。
そしてすごく辛いシーンにちょいちょい過去の賑やかなシーンがカットバックされるのがまた辛い!
血の気の多い長男、どこか頼りない次男、はすっぱな妹に囲まれたまだ大学生のマイケル。
そんな家族団欒のシーンと、家族を守るあまり孤独になってしまう壮年のマイケルを対比させる残酷さ。
人物や歴史関係はやっぱり複雑でしたが、シチリアンマフィアとかキューバ革命とかをかじっていればなんとかついていける範囲でした。
塩野七生さんのエッセイで、シチリアの有力者のパーティーで興味本位に「シチリアンマフィアって今も本当にいるの?」みたいなことをこっそり友人に聞いたら、半分程度の有力者がマフィアと繋がりがあるよ、と暗に言われた話がありましたが、イタリア系マフィアは黄金期が去った今もなおアメリカやシチリアの暗がりの中で、自分たちの掟とともに生きているのだろうなあ、となんだか感慨深くなります。
以前はヤクザってどこでもはびこるよな、と思いながら何となく読んでいたのですが『ゴッドファーザー』を見てからもう一回エッセイを見返すと、なるほど! と納得できる箇所がいっぱいありました。
で、考察サイトで知ったのですが、原作の下敷が『カラマーゾフの兄弟』……確かに色々変えてはあるけれど、もうこの脚本の段階で名作なことはほぼ確定。
普通のギャング映画とは一線を画す、それがこの『ゴッドファーザー』三部作。
もうこれを書いて公開するためだけに映画感想エッセイ始めてもいいかな、と思えるような良作でした。そして始めましたw