4話 集合
俺らは集合場所である校門前を目指していたのだが、相変わらずの闇の中、本当にこの道であっているのか不安にもなってくる。しかも今は夏のはずなのに何だこの寒さは?普通ならこんな寒くなるはずないと思ったが、今の状況を考えると俺らの周りには普通じゃないことが何度も起きているじゃないかと再確認できる。俺らはどうしてこんなことに巻き込まれたのだろうか?女性が言う旧校舎の呪い。なぜ俺らが呪われなければいけないのか。考えることは多い。だが、今やるべきことは校門前に着き、弘たちの生存を確認することだ。四人集まれば何とかなるかもしれないという期待もある。そう考えると不思議と足が早くなる。
「今思うと、このブレスレットはいったい何なんだろうか?」
女性からもらったブレスレットだが、不思議な光を出す以外、何か特集なものがあるかと言えば微妙なところだ。
「ゆーって、元からブレスレットなんてつけてたっけ?」
俺の後ろから聞こえてきたのは寝ていた舞の声だった。どうやら起きたらしい。
「ん〜、まあちょっとあってな。もらったんだ」
「へ〜、でもそのブレスレットどこかで見たような?」
「は!?まじかよ!!どこで!?」
「い、いや、見たことがあるような気がするだけだから、本当に見たことがあるっては言えないよ」
それもそうだ、似てるものなんていくらでもある。だが、俺もこのブレスレットを見たことがあるような気がする。ならブレスレットをくれた女性とは昔、俺と何らかの関わりがあったのかもしれない。だが、考えれば考えるほど分からなくなる。ずっと頭の片隅にひっかかるこのもやみたいなのはいったいなんなんだ。
「ん?月の光?」
舞の言葉に反応して上を見上げてみる。俺の目には先ほどまで出ていなかった月が見えた。月明かりが俺たちの進む道を照らしてくれている気がして少し安心した。
「この道で間違いなかったな、まあ、いつも通る道でしかも一本道だから普通は間違えないだろうな。まあ、今は普通じゃないんだよな」
「そうだね、あんなこともう起きて欲しくないよ」
舞にとってあのことはトラウマになるだろう。だが、これから俺たちがしなければいけないことを考えるとやはり舞には地獄に近いものになるかもしれない。
「なあ、舞」
「ん?何?」
「今度は勝手に逃げないでくれよ?探すこっちの身にもなってくれ」
「分かった。だけど一つだけお願い聞いてもらえる?」
「何だよ?ずっとこのままおんぶは勘弁してくれよ、この状態で長時間走る自信はないぞ〜」
場の空気を変えるために少し冗談交じりに話しを進てみるが、できることなら俺だけが犠牲になって舞だけでも助かって欲しい。もうこれ以上辛い目にはあってほしくない。
「おんぶじゃなくていいからさ、2人の時だけでいいからさ手…繋いでてくれない?そうすれば少しは安心できるから」
少し震えているのを感じた。俺の首にある腕にも少し力が加わったのも感じた。本当は怖いのに、本当はもうこの場から逃げ出したいと思っているのに。
「これから起こるかも知らないことは、舞からしたらさっきより辛いことが起こるかもしれないぞ?」
「ゆーと一緒なら大丈夫だよ」
「そうか、なら頑張らないとな」
「頼りにしてるよ」
俺は一旦立ち止まり、背中から舞を下ろす。そして俺の右手を舞が握ってくる。右手に舞の手の温かさを感じ、安心する。
「そろそろ、校門につくな」
先ほど感じていた寒さはいつの間にか消えていたが、逆に生暖かい風が吹いてきた。
「さて、これからなにがあるのやら」
「きっと大丈夫だよ。みんなとならね!!」
舞は笑顔を俺に向けてくるが握っている手の力は強くなっていた。
…
校門の前に着き、あたりを見渡すが弘と泉の姿はない。一応スマホを取り出し、メッセージを送ってみるが送信失敗の通知が来る。どうなっているんだ?とりあえず校門前で少し待ってみることにする。
「2人ともいないね」
舞がキョロキョロしながら話しかける。
「そうだな〜。2人とも先に中に入ったのか?」
「それはないと思うけど」
舞もスマホを取り出し、メッセージを送ろうってみるが繋がらない。
「私のもダメ」
「ん〜、どうしたもんかな」
ここから離れて校内に入るのもありだが、逆に2人が俺らを探す羽目になるのは避けたい。
「昇降口前で待ってみる?」
「ん〜そうだな。一応、学校内で一番最初に来るところだからな。昇降口に移動するか」
「うん。行こ」
俺と舞は校内に入り昇降口を目指すことにした。体育館の明かりは付いておらず運動部も活動を終え帰宅していると確認できる。先ほどスマホの画面で時間を確認したが集合時間よりも1時間近く遅刻してしまっている。もう帰ってしまったことも予想できるが、何の連絡もなしに2人が帰ってしまうことはないと思う。それに呪いのこともある。4人で解決しなければ意味がないのではないかとも考えられる。状況的には4人で集合し、呪いを解くことが重要になる。
「校舎内の明かりついてないね」
「そうだな。時間も時間だし、人がいることはないだろうな」
学校の敷地は広く全体的に校舎の陰になってしまう部分は確認できないところも多いが校舎内には少なくとも「人」はいないと思う。何となくだが、不気味な雰囲気を校舎内から感じる。
「どうしたの、ゆー?なんか怖い顔してるよ?」
「え、あ、悪い」
先ほどまでのことを思い出し、それが勝手に表情に出てしまったのだろう。
「ううん、別に大丈夫だよ」
俺に笑顔を見せながら背伸びをし頭を撫でてくる。
「お、おい…」
「いいから、いいから〜」
正直恥ずかしいが、安心する。
「お〜い。お二人さん?」
「え?」
「お?」
呼ばれ振り返ると、ニタニタと正直イラっとくる笑顔を向けてくる友人2人がいた。
「はぁ…。まぁ、これで全員集合だな」
ため息混じりにいうが、正直不安要素の一つは取り除かれたことに少し安心した。
…
4人で情報を交換する。どうやら弘たちも幽霊に遭遇したようだ。やはり俺たち4人には呪いがかかっているようだ。そうじゃなければ、こんなにも可笑しなことが起きるはずがない。
「さて、佑の話にでてきた女性が言うには旧校舎に行って呪いの元凶をどうにかすればいいんだな」
「そうだな。とりあえず、本館の中に入って旧校舎の鍵を見つけることからだな」
俺は、弘を見ながら言う。
「じゃあ、鍵は職員室だよね」
いつの間にか手を離していた舞が俺を見ながら言ってくる。確かに職員室に鍵はすべてあるはずだ。
「鍵を見つけたら、3階の連絡橋から旧校舎に行くんだね」
泉が腕を組みながら俺を見て言う。
「んじゃ、どうする?全員でまとまって行動するか?」
「そうだな、あまり個人個人で動くのも危険だ。とりあえず、まとまって行動でいいか?」
俺の問いに三人とも無言で頷いた。
「さっきメッセージ送ったが、確認できたか?」
弘は自分のスマホ画面見せてくる。画面にはグループのトーク画面で弘がメッセージを送ってきていたが通知もきていないし、俺や舞、泉にはトークが反映されていない。俺たちはスマホを再起動してみた。すると、トークは反映され試しに通話を開始してみると全員のスマホに通知行くことが確認できた。
「今はスマホが使えるが、また使えなくなるかもしれない。だけど、一応はスマホの充電に気をつけておいてくれ。それとこれを渡しとく」
弘から渡されたのは小さな懐中電灯。そういえば、暗いとはいえスマホのライトで十分だろうと思っていたが今の現状で明かりは重要になる。弘の勘に感謝しなければ。
「さて行くか。職員室は2階だな」
俺を先頭に歩き始めた。不安と恐怖を感じながらも早くこの状況から逃れるために踏み出した。