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気付いたら非日常に  作者: 重曹:溶解組
3/10

3話 幼馴染

前回のあらすじ…特になし!!

頭が痛い。こんな時には嫌な夢を思い出す。現実にはなって欲しくない夢だ…。嫌な夢と言っても、何かが起こっているシーンが見えるというものだ。夢で見たシーンだが、道路で横たわっている舞の姿とそこに立って涙を流している佑の姿だった。

「佑と舞は、大丈夫なのか?」

夢の内容を考えていると2人のことが心配になり、勝手に口から出てしまった。

「何が?」

「あ、いや、さっきのこともあっただろ?」

「なるほどね…」

幼馴染の二人に何かあったらと思うと今からでも二人を探しに行きたいが、俺の隣にいる泉が顔を真っ青にしてしゃがんでいる。泉も大事な友人だからほおってはおけない。

「まさかあんなもん見ることになるとはな、びっくりだよな」

数分前の出来事だ。俺と泉が校門で2人を待っていると、足音が聞こえて来た。俺は「ただの歩行者だろ」と思っていたが闇の中から姿を表したの頭のない女だった。女だとわかったのは胸の膨らみと外見からわかる華奢な体、片足にハイヒールを履いていたことから女性だとわかった。だが、そんなことより頭がないのに動いているのがおかしい。よく見ると右腕、左足は普通なら曲がらない方向に曲がっており服装もボロボロで、どう見ても普通なら死んでいるはずなのに…。

その女を見た時、泉は腰を抜かしてしまったが、俺は泉の手を無理やり引っ張りながら走ってここまで来た。今は学校敷地内の体育倉庫の裏で隠れている。一応、祐にはスマホでメッセージを送ったが返答はない。これもあり、先ほどから夢で見たことが気がかりで仕方ない。

「あんな気持ち悪いもの見たのに、よく平気な顔してられるよね弘」

「まあな…」

俺は佑にしか話していないことがある。それは、幽霊が見えることと高確率で正夢になる夢を見ることだ。佑と俺は幼稚園からの付き合いでなんとなくだが幼稚園の頃から2人で遊んでいた。俺は小さい頃から幽霊が見えていたのだが両親に行っても信用してもらえず、最初は「気のせい」と言われていたが俺がしつこく言うと怒られる時もあった。ずっと隠して来たつもりなんだが中学に上がった頃に佑が不意に

「弘、お前もしかしてなんか見えてんじゃないのか?」

といきなり聞かれた。そのことがきっかけで、俺は幽霊が見えることと、正夢を見る話をした。だが、俺は「どうせ信用してくれないだろう」と思っていた。

「そうか、誰にも信用されなくて辛かったんじゃないのか?よく頑張ったな」

俺の想像とは違い、佑は信じてくれた。普通なら信じられないようなことなのに。それが嬉しくてその時は泣きそうになったことを今でも覚えている。だが、舞と泉には話していない。

「これからどうするか、このままここで佑たちを待つか?」

「探しに行くって言ってもどこを探すの?ってなるからここで待つしかないよ」

「そうだな」

泉の言う通りだ。それにさっき見たあれが徘徊しているかもしれない。よく考えるといつも見るやつより酷い容姿をしていたし、それに日常的に幽霊が見えている俺とは違い、普通は見えない泉まで見えている。もしかしたら、何か起こっているんじゃないかと想像してしまう。頼むから二人とも無事でいてくれ…。



運命を変えるにはどうすればいい?正直、運命を変えるには条件を揃えたり、変えるために必要なキーアイテムが必要になるはずだ。俺は舞を探しながら前に弘に言われた夢の内容を思い出していた。もし、これが夢の内容だと考えるとその夢通りにならないようにするには何かが必要になる。俺は右腕をちらっと見る。俺の右腕には先ほど会った女性にもらった不思議なブレスレットをつけている。これがキーアイテムだとしたら何か起きてもいいと思うのだが特に何もない。なんでもいい。夢の内容にならないでくれ、早く舞に会わせてくれと思いながら走るしかない。しかし、息が切れ、立ち止まる。俺はイラつき、近くにあるコンクリート壁を殴る。鈍い音がするが、怒りのせいか何も感じない。

「はぁ…はぁ…、クソ…なんで見つからないんだ…!!」

やはり、決められた運命は変えれないのか?人間はただ決められた運命に従って大事なものまで奪われなきゃいけないのか?ふざけるな…俺は認めない!!俺は可能性があるなら、たとえ1%でも、その1%を信じて争い続けてやる!!俺はみんなを守りたい。みんなを助けたい。みんなとまた普通に笑いあえるような日常に戻りたい。俺は絶対に…!!

「諦めて…たまるかぁあああああああああ!!」

もう一発右腕でコンクリート壁を殴る。そしてもう一度走り出そうとすると右の方から光っているものが見える。俺は右を見ると右腕についていたブレスレットの黒い鍵が輝いていた。

「…なんだこれ?」

なぜ、黒い鍵が輝いているのか考えようとした時。右腕が勝手に動き、それを目で追うと左を指すようにして動きが止まる。俺は勝手に動いた右腕から視線を外し、左を確認するといつの間にか壁であった場所から道が現れたのだ。まるで隠されていたように。

「もしかして、この道に行けば!!」

俺は左の道に入る。この道であってなかったらもう手は無い。不安と期待、半々だが俺は走るしかなかった。全力で走る。頼む…。この道で合っていてくれ!!



呼吸が苦しい。気持ちが悪い。殺すなら早く殺して欲しい。もう助からないなら痛みなく死にたいのに。見たくない。こんな男の顔が最期に見る顔なんて…。もう目の前が暗くなってきた。死ぬんだ…。さよなら…みんな…。

だが、しばらくすると、先ほどまでの息苦しさはなくなっていた。なのに不思議な感じがする、なぜか安心する匂いがする。最期に神様がくれた安らぎの時間なのかなと思うくらい心地よさを感じた。

「…ぃ…」

ん?ゆーの声が聞こえる。

「舞…」

神様は残酷なこともするけど、最後は暖かく安らぎをくれるのか…。と思ったのだが、体を強く揺さぶられていた。これは現実なの?もしかして私は生きているの?

「起きろ!!舞!!返事しろ!!舞!!」

私はゆっくり目を開けた。

「…え…?」

「起きた…よかった…!!ちゃんと生きてた…!!」

「ゆ、ゆーなの?ほんとに、ほんとにゆーなの?」

「他に何に見えるんだ?やっと見つけられた…、待たせたな」

目の前にいたのは私が見たかったゆーの姿があった。涙が溢れてきた。やっと会えた。やっと見つけてくれた。今の状態を見ると、ゆーに抱きかかえられている状態だった。あたりを見渡して見ると少し先のあたりに私の首を絞めていた男の首についていた縄が落ちていた。縄だけで、男の姿は無くなっていた。

「何だ?どうした?」

「ううん…、何でもないよ」

本当は気になるけど、頭が回らなくて理解で来そうに無い。

「そうか、ならいいんだが。なんか眠そうな顔してんな?」

私は安心したのか少し眠くなってきた。ゆーは私の顔を覗き込みながら言う。

「はは、しょうがないな」

ゆーはいつものような笑顔をしながら、私を立ち上がらせる。

「ごめん…」

目をこすりながら答えると、優しく頭を撫でてくれた。

「いいよ。でも移動しなきゃな。おんぶしてやるから寝るなら俺の背中で寝てくれ」

「うん、わかった…」

ゆーは私をおぶり、ゆっくりと歩き出す。本当は私が気を失っている間に、いったい何が起きたのか。ゆーはどうやって私を見つけたのか。私の首を絞めていた男はいったいどうなったのかとか聞かなきゃいけないことがいっぱいあるけど、今は少し寝たいと思った。心地よい暖かさと安心できる匂いに包まれながら。やっと落ち着けるこの場所で…。

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