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気付いたら非日常に  作者: 重曹:溶解組
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1話 夕暮れの放課後にて

序章 「普通とは違う」

どこにでもある話、心霊スポットや幽霊を見たなどの目撃情報。果たしてそれが真実か否か。逆に幽霊はいない、存在しないと思う人もいるだろう。だが、この世界にはいる。今、この目で見ている。いてほしい、友人が見えるなら自分もこの目で見て見たい。そう願ったからなのか、それとも元からここに存在していたのか。どうして俺たちはこんなことなってしまったのか。



第一話 「夕暮れの放課後にて」

いつもの教室、いつもの顔ぶれ、いつもの街並み、いつもの友人たち。何もなくただ平凡に生きているこの時間、俺はそれだけでいいと思っていた。特撮物のような人生など望んでいない。人が簡単に死ぬような世界など、こちらから願い下げだ。だから、俺はこの何気ない日常が好きなのだ。

夕暮れの教室、窓側の一番後ろの席で俺は頬杖をつきながらぼーっとしていた。俺の目の前には、いつもの友人たちが楽しそうに話していた。

「やっぱり気になるよね!!気にならない方がおかしいよ!!」

「いや、確かに今までに聞いたことない話ではあるけどよ。まぁ、俺は気にならないな。逆にそんな嘘話を信用できるのがおかしいだろ」

友人の山野弘やまのひろは目の前にいる野崎泉のざきいずみの話を真っ向から否定していた。泉はムスッとした顔で弘を見ていた。

「でも、絶対に嘘だとは限らないと思うんだけどなぁ…」

泉の左隣の椅子に座っている川城舞かわしろまいも二人の会話に加わったようだ。

「私は気になる」

「だよね!!舞はやっぱりわかってるよ!!さすが私の親友〜♪」

隣の席に座る舞を抱きしめる泉。舞は苦しそうな顔をしながら続ける。

「まあ、本当か嘘か微妙な感じだけどね」

流石に限界なのか、泉を無理矢理引き剥がす舞。

「てか、話の途中ですまんが何の話をしてるんだ?」

俺も友人たちの会話に加わることにした。話の内容だが、俺たちの通っている学校には旧校舎がある。まあ、どこにでもある話だがそこは幽霊がよく出るという噂がある。だが、信憑性があるものはほとんどなく最近になっては噂も聞かなくなったのだが、一ヶ月前から「旧校舎で女性の姿を見た」や「男性の叫び声を聞いた」などの噂を聞くようになったという内容だった。

「んで、実際に中に入ったやつはいないのか?」

頬杖をつきながら泉に問いかける。

ゆう君は入りたいと思うの?」

泉にそう聞かれたが実際に中に入りたいとは思はないが、噂の真相が気になる。適当に噂を作るならまだしも「私も聞いた」や「見た」という生徒はかなりいるらしく、信憑性が高い内容なんじゃないと思い始めた。

「佑、一緒に行ってやろうか?」

俺の右隣の席に座る弘がニヤニヤしながら言うと、泉が急に立ち上がり言う。

「え、二人だけで行く気なの?!」

最初は俺と弘を交互に見ながら言っていたのだが、最後は目を丸くしながら弘に顔を近づけていた泉。弘は顔を赤くしながらそっぽを向いた。

「え、行くの?なら私も行く!!」

いつもは静かな舞は元気よく手を挙げた。俺はそれに驚きを見せた。

「お、おう、んじゃ全員で行くか?」

「「「おー!!」」」

綺麗に三人の声がそろった。

「一旦家に帰って八時に校門前に集合でいいか?」

「了解」

「OK〜♪」

「わかった」

みんなの楽しそうな顔を見ていると、笑顔が浮かぶ。だが、不思議と奇妙な寒気を勘じた。何か得体の知れないものが始まろうとしているような、そんな奇妙な悪寒を感じながらも俺たちはそれぞれの帰路につく。



「旧校舎の噂か…本当にあるのか?」

現在の時刻は七時半を過ぎたくらいだ、今の季節は夏なのだが少し肌寒い気温だ。正直なところ、この後もしかしたら何かが起きるんじゃないのか、あの時感じた寒気は何かを暗示してるのではないかなどとくだらない想像を頭を左右に振って必死にをかき消した。

「パーカー着て来て正解だったかもな」

そう呟くと、後ろから足音がした。そして、俺の肩を叩く。

「ゆー」

後ろから肩を叩いてきたのは舞だった。

「お、舞か、てか薄着すぎないか?」

半袖にショートパンツというどう見ても寒そうな格好をしているが、普通に考えたら夏ならちょうどいいかもしれないが今は違う。そう…何かが…。

「舞、寒くないのか?」

俺が尋ねると、不思議そうな顔をしながら舞が返す。

「全然寒く無いよ?」

「そうか、そういえば怖いの苦手なくせによくついてくる気になったな」

舞とは小学校からの付き合いだが、昔から怖い番組などは見ないと自分で言っていたくらいなのだ。肝試しなどは誘っても渋々付いてくるだけで、自分から参加したいとは言い出さないが今回は珍しく自分から進んで参加したいと言って来たことに少し疑問を感じていた。

「む、昔はね!?昔は!!…。それに…みんなとも遊びたかったし。高校に入ってから部活ばっかりでみんなと遊べてなかったから」

なるほどという顔をする祐。舞は高校に入ってからバスケ部にスカウトされ入部することになったからか、俺たちと遊ぶ時間が減ってしまったのだ。だからか、少しでも一緒にいようと思ってついてきたのだろうと思った。

「少し息抜きしたいだけだよ、毎日毎日部活じゃ息が詰まっちゃうよ」

両手を組み上にあげ、背伸びをする。

「そうか、大変だな。まあ、早く行こうぜ」

祐と舞は並んで歩き出す。少し歩いたところで、異変に気付いた。人が一人もいない。ありえない。普通ならここはこの時間でも人が多く歩いている場所だ。偶然か?このタイミングで…いや考えるな考えちゃダメだ…。恐怖を感じながらも表情に出さないようにと恐怖心を抑え込む。

「お兄ちゃん…」

俺の後ろから子供だろうか、声が聞こえてきた。その声に少し安心した自分がいた。情けない気もするが、まあいいだろう。

「ん?どうした?」

と言いながら振り返ると、先ほど感じた安堵が恐怖に変わった。振り返る前に気づくべきだった。この時間に子供が1人でうろついている訳がない。親とはぐれたにしろ、見ず知らずのものに話しかけるかと。

「お、おい…お前…!!」

祐はその場で凍りついたように硬直し、表情が真っ青になる。祐が目にした子供のような姿をしたものは首が180度ぐらい回っていた。簡単にいえば俺の目の前には子供の後頭部が見えている状況である。いや、そもそもそんなことになっていれば普通は死んでいる。おかしい。俺は夢でも見ているのか?夢を見ているなら、誰かこの夢を覚ましてくれ…

「ぁ…ああ…」

隣にいる舞も振り返っており、声にならない声を出しながら小刻みに震えていた。当たり前だ。だが、落ち着かせなければと思った。

「舞、落ち着け…」

「きゃあぁぁぁあぁぁ!!」

だが遅かった、舞は悲鳴をあげて走り出していた。

「おい!!待て、舞!!」

走り出した舞を追おうとすると、足が動かなくなった。足元を見ると何本もの黒い手が俺の足を掴んでいた。ふざけるな…!!こんな時に…!!こんなことをしている間に舞に何かあったら…!!必死にもがくが、無数の手はかなり強い力で俺の足を掴んでいる。

「お前に構ってる時間はないんだよ!!」

俺は目の前にいる子供の後頭部を睨みつける。早く離せ…!!離せ!!離せ!!

「離せぇえええぇぇぇええ!!」

祐は叫んだ。その瞬間、先ほどまで動かなかった足が急に軽くなった。と、同時に舞が走っていった方向に走り出す。走りながら後ろを見ると、いつの間にか子供は姿を消えていた。だが今はそんなことはどうでもいいと思った。今は早く舞を追わなければ…!!と祐は舞を追うように走る。だが、いつもより暗く闇に近いような場所を走る。本当に舞に追いつくか、また舞に会えるのかと不安になるが、今は必死に走るしかないと思う祐だった。

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