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プロローグ1

ヒーローとは何か。

戦隊物のヒーローは仲間と助け合い悪を滅ぼすために邁進する。そして最後は自分を犠牲にしてまでラスボスを倒し世界を救う。素晴らしい。だがこんな素晴らしい人は現実にはいない。アニメや漫画や日曜日の朝の世界だけだ。

誰も救ってくれない、手を貸してくれない、共に戦う仲間もいない。こんな世界で悪に脅かされたものはどうやって生きていけばいいのだろうか。またそれを助けたい人はどうすれば良いのだろうか。



暖かい日差しが差し込んでくる。机に座り惚けている俺、秋葉和哉(あきばかずや)の体を心地いい風が包み込む。

ああ、こんな日は昼寝するに限るな。うん。寝よう。寝るしかない。そう思って机に突っ伏した。

その瞬間、ドアがガラッと激しく音を立てて開き誰かが入ってくるのを感じる

「おーい和哉。起きろ。仕事だぞ。」

聞き慣れたはきはきとした大きな声が頭上に降り注ぐ。

はぁ、仕事。嫌な響きだ。

その声を無視して寝ているふりをした。

「さっきまで起きてたろ。見てたぞ。」

からからと笑いながらその声は言う。

ばれてんのかよ。くそ。

首だけ回して声の主である夏目海斗(なつめかいと)を見上げた。

「…なんだよ夏目。俺のクラスまで来て。なんか用か?」

「なんか用か?じゃないよ和哉。和哉がなかなか部室に来ないから探しに来たんだよ。仕事の依頼が来てさー、式場(しきば)さんがなんか手伝って欲しいんだって。」

「式場さんか。はぁ…。しゃあねぇ、行くか。」

式場さんの依頼ならしょうがないな、うん。

「よし!」

夏目は元気よくそう言うと、俺の腕を引っ張り走り出した。

痛い痛い。こいつ言動はおっとりしてるくせに、背が高いし体格も悪くないから、力が強いんだよなぁ。

こうして、夏目に引きずられるようにしてようにして教室を後にした。



校長室に着くと夏目と同じくらいの背の小太りのおじさんが俺たちがやって来るのを見るなり、おっ来た来たとつぶやき、ニッと笑った。

「お待たせしました。式場先生。」

夏目が朗らかに言う。

「いやぁ。悪いね二人とも。」

式場さんは俺たちが通う私立河越高校の校長である。

「この資料を進路指導室まで運んで欲しい。」

そう言って廊下に積まれた大量の段ボール箱を指差した。

「え…こんなにあるんすか?」

マジで?こんなの腕もげちゃうよ。安請け合いすんじゃねぇよと夏目を睨みつけると夏目はすまなそうに肩をすくめる。

「まぁ、秋葉君もそんなこと言わずに手伝ってくれ給えよ。」

式場さんはかっかっかと楽しそうに笑うと、よろしくなと手を上げて去っていった。はぁ…。まぁやりますけどね。

「早く終わらせようぜ。」

そう言って早速作業に取り掛かった。

「そうだね。」

夏目がよっと箱を持ち上げた。



「うわー!やっと終わったー!」

進路室には運び込まれた資料が山のように積まれていた。

夏目がうーんと伸びをする。日はもう傾いていた。

「とりあえず部室に戻ろうよ。」

依頼が終わったのが心底うれしいのか声が弾んでいる。

「そうだな。」

窓から差し込む西日に目を細めつつ夏目と並んで部室へと足を向けた。


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