目と目が合う
夜、鏡の中の自分と目が合う。いつも見なれた、億劫そうな覇気のない顔が今日はやけに際立って見えた。
げんなりする。思わず鏡の中の人が目を逸らしてしまう程の陰鬱さだ。
この夏、自分を変えたくてフットサルを始める。
サッカーボールを追いかけるだけの簡単なスポーツなのが、正直何が楽しいのか理解できないでやっている。
私にリア充力が足りないからだろうか。友人と和気藹々と爽やかスポーツに汗を流しているのだが、何故かこの集団に溶け込めていないように感じる。
いや、原因は分かっている、つまり私は俗にいうイケメンじゃないのだ。
イケメンじゃない私がなにしれっと、さもリア充グループみたいな面してフットサルなんてやってるんだという話だ。本当すんません。
そんな劣等感を感じながらのスポーツなんて誰が楽しめるものか。
変に痩せてて、変に太っている体、変に生え出している髭、そして覇気のない顔。
どんなにモンタージュを重ねてもこうはならない。
恥ずかしいから、鏡の中の人も私を見つめるのを止めていただきたいのである。
よし、改善しよう。
夜になると、変に衝動的になるものだ。
今日、この日から過去の自分からおさらばしよう。
そして広がる新しい自分のイメ―ジ。
いい感じに筋肉が付き、肌も浅黒い男。友情にも熱くとてもフェミニストだ。
イケメンのせいか、友達の彼女でさえ私にアタックしてくるのが悩みかな。
趣味はバイオリンを少々、夏はサーフィン冬はスノボーと様々なレジャーに挑戦している。現在彼女募集中です!
まで考えたところで、これはすでに別人じゃないかと気が付く。
そんないけ好かないやつには絶対なるまい。
そう思って私は床へ就くのであった