表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

三日月の夜の8月12日9時47分

作者: 悪之文学

8月12日9時47分は…

8月12日の午後9時47分、病院の屋上から飛び降り自殺した僕のお姉ちゃん。

僕はお姉ちゃんが大好きだった…。



でも、なんだかまだ何処かに居るようで

まだ何処かで遊んでいるようで

何処かでまた小さく笑っているようで…



辛かったのかな?

苦しかったのかな? 飽きてしまったのかな?


もぅ…分からないよ僕は。

もぅ、捜したくないよ。心が苦しくて苦しくて息が詰まるんだ、涙が溢れて溢れて前が霞むんだ…



やるせない気持ちと力尽きそうな気持ちが身体に滲んで僕を支配するから



だから、もぅ一度だけちゃんとお別れしたいよ。


ちゃんと『僕のお姉ちゃんでありがとう』って僕の口から伝えたいよ…



なんでいつも僕より先なんだろ、産まれた日も友達を先につくった時もお風呂に入る時も寝るときも起きる時も…


そしてこの世からいなくなる時も…。



自分から先に先にと未知という名の世界へ行ってしまった…


僕はつまらなくて寂しくて悲しいよ


ブランコだって一人。

おやつを食べる時だって家で遊ぶ時だって……。



だから、もぅ帰って来て

お願いだから帰って来てよ。

僕なんでもするから、お姉ちゃんにも僕の分のおやつもおもちゃもみんなあげるから…


ねぇ…


まだ行かないで…


遠くに行かないで…


こんなの酷いよ…。

僕は無力だった。

健気だったかな?


なくなりつつあるものに必死にしがみついていただけ?


弱って衰弱した身体は最後の力を振り絞ってコンクリートの塊の頂上、地上三十メートルから大空へと大きく身体を浮かせ扇いで地上に無感情な造形跡をつくった。



あれから、五年…


三日月を見て思っていた時にフッと我に返った僕は



今日は、8月12日で

時刻は9時47分になった。


『ダメでしょ、男の子は泣いちゃ…』と不意に後ろから小さく笑われた。


 !


僕は息ができなくなるくらいに泣いた。

僕とお姉ちゃんとの大切な時。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ