表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼黒の竜騎士  作者: 海野 朔


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/57

7.新天地はど田舎



 まさかの都落ちから、2年近くが経ちました。


 リルファローゼ、5歳です。


 いやぁ、寝て起きたら立派な要塞っぽいお屋敷から、ボロボロの廃墟っぽいお屋敷に引っ越ししてたのには驚いた。

 何か、引っ越しの夜に金色に輝く龍神様を夢で見た気がするんだけど………本当に夢だよね?


 お蔭で(?)お母様とセラフィが亡くなった哀しさも、慌ただしい新生活によってどこかに吹き飛んだ。




 てっきりガル爺が何かやらかしての夜逃げかと思ってたんだけど、違ったみたい。

 夜逃げして3日目位で、ベテランお手伝いさんのミライムとイーヴァが来て、ガル爺滅茶苦茶怒られてたもん。あれは恐かった…。

 どうやら、ガル爺の暴走の末の家出だった様だ。いや、老人のクセに家出すんなよ。しかも私まで連れて。

 すわ実は借金だらけだったか百姓一揆で逃げたか誰かに下克上されたかと、実は色々想像して心配してたんだけど、杞憂に済んで本当に良かった。


 一応ガル爺も、自分と老人2人と子供1人と老竜1頭を養うだけの余裕はあるらしい。

 今の所、贅沢は中々出来ないけど、村の人達よりはちょっと余裕が有る位の生活はしている。

 生活水準は落ちたけど、まだまだ衣食住は安定しているので、不満は無い。

 むしろ、過剰に褒めちぎってくるお手伝いさん達と離れられて、寂しいけどちょっとほっとしてる。

 ベテランお手伝いさんであるミライムもイーヴァも、私が何かやらかしたらきっちり叱ってくれるからね。ガル爺にも説教する位だし。

 ミライムもイーヴァも躾は厳しいけどお手伝いしたら褒めてくれるし、絶妙に飴と鞭を使い分けている。

 甘やかされるだけじゃ調子乗っちゃうので、この位が調度良いし大変有り難い。


 ガル爺?………この前、兎の捌き方を丁寧に教えてくれたよ。

 可愛らしい兎が段々美味しそうなお肉になっていくのは、元日本人としては中々にショックだった。スーパーとかでパックされたお肉なんて無いし、頑張って慣れるしか無いよね。

 でもやっぱり、その夜の献立の兎肉のたっぷり入ったクリームシチューが、いつもの半分も口に入らなかったよ。

 気付いたミライムが「だからまだ早いと言ったでしょう!」って、ガル爺に説教してた。

 大体毎日、そんな感じです。


 この間も、ヴィル爺の身体を滑り台にして、滑り捲くって遊んで服をドロドロのボロボロにしたら、ミライムに滅茶苦茶叱られた。ラスボス滑り台、楽しいんだよー!

 フリルいっぱいの綺麗な服も、すぐに汚して台無しにするので、とうとうランクが下がりました。

 生地はやや上質だけど、村の子供達と同じような服装をしている。つまりは丈夫で安価で機能性重視の、いくら汚れても大丈夫な服。

 髪に結んだ綺麗なリボンが、唯一の普段のお洒落です。

 雨の日だけは外に出れないので、親戚の“エルトおじ様”っていう人が送ってくれた、可愛くて綺麗なドレスを着て行儀作法の授業をしている。

 このエルトおじ様、他にも玩具や食料品とかもよく送ってくれる、凄く良い人。

 最近ちょっとずつ文字を習い始めたので、今度お礼の手紙でも書いてみようかな。






 今住んでいる所はファンドルク村っていう、なんだか格好良い名前の村なんだけど、完全に名前負けしてる。

 うん、牧歌的…と言えば聞こえは良いけど、超の付くど田舎です。周りには、畑と田んぼと森と山と川しか無いよ。

 前住んでた所は都会だったっていうのが良く分かった。城下町ちょっとしょぼいとか思ってごめんなさい。ここと比べたら、立派な大都会です。


 引っ越して来て暫くは、村の人達がヴィル爺に怯えて遠巻きにされるだけの村八分状態だったんだけど、その関係も徐々に改善されている。

 ヴィル爺、見た目はラスボスだし鹿とか丸呑みにするけど、人間には絶対攻撃しないもんね。良い奴だよ。

 村人達も危険は無いと分かってきたのか、少しずつこちらとの距離を縮めてきている。食料品とかのやり取りは、どうしても必要だしね。

 それに最近、ヴィル爺がやらかしたある事件(って言って良いのかな?)を切っ掛けに、一気に村人との距離が縮まった。


 今では、ガル爺も村の子供達に剣術指南をしてすっかりこの村に馴染んでいる。

 「私も剣術習いたい!」ってガル爺に言ったら、「女の子は駄目じゃ!」って一蹴された。

 幼少の頃から武道漬けだった前世からすれば、今の生活は物足りない。身体動かしたい。ガル爺強いし、前の身体だったら是非手合わせ願いたい相手だ。

 それなのに、どんなに頼んでもガル爺は「絶対、駄目」の一点張り。普段甘いクセに……頑固爺め。

 遠くの物陰から、こっそりと村の子供達に剣術指南を施しているガル爺を怨めしく見ている日々。ストレス溜まり捲くり。

 やっちゃ駄目ってなると、余計にやりたくなるのが人の(さが)です。


 こうなったら、勝手にやるしか無いよね。という事で、最近は木刀をこっそり作っている。

 剣は元より、木で出来た子供用の練習剣でさえ、触らせてくれないんだもん。

 だから、剣って両刃だしどう扱ったら良いのか良いのか解からないので、手に馴染んだ木刀を作成中です。

 け、決して、不器用だから両刃の剣は作れないってワケじゃないんだからねっ!


 今日も適当な太目の枝を、無心に削って削って削って……削り過ぎて泣く泣く最初からやり直して。

 あ、後ちょっとだったのに……!コレ意外と難しい。

 しかも、誰にも気付かれずにこっそりな作業なので、遅々として進まない。またストレス溜まり捲くり。


 そのストレスは、空手や合気道の型だとか柔道とかの受身練習等で身体を動かす事で、発散させている。

 ほら、幼少時の運動って健康的な身体を造るのに必要じゃん。

 それにこの世界では多分、私しか知らない技を廃れさせちゃうのは、なんか勿体無いし。



 そのお蔭で滅多に風邪も引かない健康体で、ど田舎異世界ライフを楽しんでます。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ