第四話 突然の告白
「父の日参観」が終わり、私たちは家に帰った。
私の心臓はまだ激しく動いていた。
「あら、お帰り。楽しかった?」
茜が玄関まで来て言う。
「まーな」
そんなやり取りを背中で聞きながら、私は2階へのぼった。
バタン…
ベッドに飛び込み、しっかり布団をかぶった。
(見られた…。3歳の私の顔を…)
バレたのではないかと不安で怖かった。
と、その時。
ガチャ
部屋のドアが開いて、勇気が入って来た。
「麗花、話があんだ」
そのまま、ベッドの端に腰をかける勇気。
「まだお前には意味がわからねーと思うが、聞いてくれ」
勇気は私の返事も聞かずに話し始めた。
「実は俺、8年前、人を殺したんだ」
ズキンと心臓が刺されたように鳴った。
「俺はそいつに謝りたくて仕方ねぇ。俺はあん時、茜に思うように操られてたんだ。だから今、アイツとこうして暮らしてるのもアイツの超能力のせい。まぁ、とにかく、俺はすんげー反省してる。だから、あの後すぐ自首して、一生懸命罪を償った。それでも足りねーと思ったよ。だって、その殺しちまった人は、俺の好きな奴だったから…」
「えっ…」
私は何が何だかわからなくなった。
「アイツとお前、似てるんだよ…。だから、漢字は変えたけど、同じレイカって名前にした。…何度自殺しようと思ったかわかんねーよ。アイツと離れたくなかったんだ…。だけど、死のうとする度にアイツの笑顔が出てきて…」
勇気は涙で言葉がつまっていた。
「…勇気」
私は小さな体で勇気に抱きついた。
「泣かないで…」
「麗花…」
もう勇気に対する恨みはなかった。
全てを打ち明ける―。
勇気は何も悪くなかったのだ。
そう、悪いのは茜なんだ…。
勇気の不安を取り除けるのなら、私は地獄に落ちても構わなかった。
「勇気、私は勇気のコト、もう恨んでないよ。だって勇気は悪くないから」
「やっぱお前、玲華なのか…!?」
「…うん。」
私は勇気の背中で思いっきり泣いた。
声には出さないで。
「でも、もう私、ここにはいられない…。もう、地獄に落ちちゃうから…」
「…玲華、神様っていると思うか?」
いきなりの質問に戸惑った。
「俺はいるって思ってる。だって今、お前と会わせてくれたから。だからその神様がきっとお前を守ってくれるはずだよ。…俺、玲華に2つ言いたいコトがあるんだ」
タン タン タン
その時、階段を上がる足音と共に、茜の声が聞こえた。
「勇気、私今、茜の顔、見たくない…」
「…俺もだ」
勇気は私を抱えて、窓から飛び出した。
「しっかりつかまってろよ!!」
軽やかに地面に着地し、そのまま走り出した。
近くの公園まで行くと、ベンチの上に私をおろした。
「勇気…」
「まだ途中だったよな、さっきの話」
「うん…」
「まず1つ目は、お前を殺したコト、ホントに反省してる。すまなかった」
「いいよ、だって勇気は悪くないから」
「そう言ってもらえて安心した。でも俺は…」
「2つ目は?」
もうこれ以上勇気を辛くさせたくなかった。
「あぁ、2つ目は…」
勇気は私の目を真っ直ぐに見て言った。
「俺の気持ちは変わってねーんだ。昔から…」
『好き』
私の声と勇気の声が重なった。
「私も勇気のコト好きだよ…。ずっと前から、変わってない…」
「玲華…」
勇気は麗花の身体の私にそっとキスをしてくれた。
と、その時、体がずしりと重くなって目線が高くなった。
「玲華!!」
私は蒼里玲華に戻ったのだ。
「勇気!!!」
私たちは抱き合って喜んだが、それもつかの間。
大型ドラックがつっこんできたのだった。