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第一話 生命の誕生

「や、やめてよ…勇気…っっ!」

抵抗するも、勇気はナイフをこちらにつきたてて迫ってくる。

「うらぁぁぁ!!」

「きゃぁぁぁぁ!!!」

ナイフが私の心臓を貫き、視界が真っ暗になった。


気がつくと、目の前にキレイな女の人が立っていた。

「ここは…?」

「死の世界です。あなたは風神勇気(かぜかみゆうき)に殺されました」

「……」

勇気と私は幼なじみで、幼小中高ずっと一緒だった。

優しい性格だった彼が…。

「…せない…。許せない…、アイツ…絶対呪ってやるんだから!!」

「だったら、もう一度人間界へ戻ってみますか?」

女の人の言葉に私は耳を疑った。

「え?そんなコトできるんですか?」

「殺害されてここに来た人はみんな自分を殺した相手を憎んでいます。あなたもそうです。でも、あなたからは特別な力を感じる」

「じゃあ、生き返れるんですね!?」

「えぇ、でも、前の体に戻るコトはできません。それから、風神勇気にあなただとバレてしまってもいけない」

「どういうコトですか?」

女の人は少しうつむいた。

「私は今まで5人の死者を生き返らせました。あなたと同じように力を感じた5人を。でも、5人とも、自分を殺した相手にバレてしまったんです。そして、5人は天国へ行けるはずでしたが、地獄へと…」

「そ、そんな…」

女の人は急ににっこり微笑んで言った。

「でも大丈夫。あなたならきっとやり遂げられる、そんな気がするの。あくまでも、恨みを晴らすコトが目的です。それを忘れないでください」

そして、女の人は持っていたステッキを頭で星を描くように動かした。

「さぁ、準備はいいですか?」

目がくらみそうなほど眩しい光が現れた。

「ご無事で、蒼里玲華(あおさとれいか)―」

あたり一面が真っ白になり、私は反射的に目を閉じた。


コポ…


(ここは…?水の中!?真っ暗で何も見えないし、逆さまになってる!!)

必死に手足を動かすと、柔らかいものにぶつかった。

呼吸をしてないのに苦しくない。

もしかして―。

お母さんのお腹の中!?

ホントに私、生き返れるんだ。でも、あの女の人は、もう元の体には戻れないって言ってたから、蒼里玲華じゃないし、私を産むのも、私のお母さんじゃないんだよね…。

と、その時。

ガボ ガボッ

まわりの水が一気に抜け、押し出される感覚になった。

(う、生まれる…。)

頭頂部が空気に触れる感じがした。

そして眉、目、鼻、耳、口―。

空気を吸うと、私は無意識のうちに泣いていた。

「あぎゃ…、うぎゅ…おぎゃぁぁ!!」

耳を澄ますと、お母さんの声が聞こえた。

必死になって新しい生命を誕生させたその声は、聞き覚えがあった。

―あっ!!

思い出した。

同じクラスの砂川茜(さがわあかね)

感じが悪いというので嫌われてた。

なんか超能力を使えるとかなんとか…。

私自身も嫌っていた。

はぁ、茜の娘になるなんて…。

ショックが大きい。

「元気な女の子ですよー」

助産師さんが私を取り上げて言った。

私は母の顔を見た。

大人になっていたけれど、やっぱり茜だった。

私は気を失うようにして眠りについた。

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