表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/77

前進




水曜日に総務課の歓送迎会が終わり、課内の顔と名前が一致して、仕事は一応順調に進んでいた。




河野さんと西村にまた催促されて思い出し、両方を一緒にやる話をしたら、意外にもOKだという。


橘さんの酔った勢いの企画でいいなんて、本当に“ファンの集い”くらいの気分なんだな。


「メンバー集めとかはそれぞれに頼むことになるよ」


と言うと、それもOKだと請け合ってくれた。





9日の金曜日には新人のグループ指導の日程が確定。


23日に事務所に行く計画と、5月に西村と三上さんのグループと一緒にやる計画は予定どおり。


ゴールデンウィークにかかる4月30日は、研修はお休みだ。


初回の16日は、顔合わせと簡単なグループ活動から始まる。


夜、三上さんと何人かが幹事になって、指導担当全員で団結式のようなものをした。


知り合いが増えて、少しずつ安心感が湧いてくる。


とにかくがんばろう。





11日の日曜日、橘さんと出かけた。


ゴールデンウィークは5月2日と3日に、お互いの実家へあいさつに行くことにする。


念のためにと、お互いの実家の電話番号を交換して、もう家族になったみたいな気がした。


4日と5日はお天気を見て、成り行きまかせで遊びに行こう!


いや、式場探しかな?


それも楽しそう。


結婚準備の本とかも必要かな。


なんだかちょっとドキドキしてきた。





例の立食パーティのことを思い出して、レストランを探すことにした。


橘さんは“ファンの集い”と呼んで笑っている。


確かに変な企画だけど、自分が言いだしたのに。


オープンカフェでゆっくり昼食を食べながら、携帯で検索する。


ここから3駅ほどのところにある創作フレンチのレストランがよさそうだったので、下見を兼ねて、夕食をそこに食べに行くことにした。


それまでまだ時間がある。橘さんと一緒の自由時間。




橘さんに誘われて、午後からデパートへ。


自分ではめったに行かない場所だ。でも、彼女は好きらしい。


まずはインテリアと雑貨の階。


端から端まで見て回る。


一つひとつに好きとか嫌いとか、二人で意見を言いながら見るのは意外に楽しい。


デパートがこんなに楽しいところだとは思わなかった!


もちろん、橘さんと一緒なら、何をしても楽しいんだけど、自分たちの新居を想像しながら見るのは格別な気がした。


ホルスタイン模様のソファーを見つけて、彼女が笑って言う。


「緑色のカーペットを敷いてこのソファーを置いたら、毎日、牧場でピクニックしてる気分かもね!」


そうかもしれないけど、俺は落ち着かないと思う。


値段を見てびっくり!20万以上だなんて。


「こんなの買う人、いるのかな?」


と言うと、橘さんはまた笑う。


「モノトーンだから、どんな部屋にも合うんじゃない?」


冗談なのか、本気なのかよくわからない。案外、本気だったりして。


次は紳士服の階へ。


橘さんはネクタイを見るのが好きだと言う。柄がきれいだからって。


ボタンダウンにノーネクタイの俺の胸元にネクタイを当てて首をかしげる姿がかわいいけど、俺はちょっと照れくさい。


何本も見ていたら店員が近付いてきたので、すすす・・・とほかの売り場へ移った。


婦人服・・・は飛ばして婦人靴売り場。


男の靴と比べると、数も多いし、売り場の面積がものすごく広い!


俺の目から見るとどれも同じように見えるのに、彼女によると全然違うらしい。


棚から次々とおろして、片足を突っ込む。


まるで逆シンデレラだと言うと、彼女はドレスのスカートをつまむ仕草をして笑って言った。


「よろしい。あなたに決めました。」


そして食品売り場。すごく混んでいる!


はぐれないように手をつなぐ・・・けど、かえって歩きにくかったのですぐ離した。


食品売り場は縦に並ばないと歩けない。


一瞬、朝のラッシュを思い出したけど、この混み方は全然違う。


通勤ラッシュなら、みんなすごい勢いで歩いている。


でもここではよそ見をしながらゆっくり歩いているし、いきなり立ち止まる人もいる。


ものすごく歩きにくい。


お店にはきれいな洋菓子、和菓子、お惣菜も各国のものがそろっている。スーパーみたいな店も入っていた。


試食もたくさんある。


漬物、かまぼこ、豆腐、パン、チョコレート、コーヒー・・・すごいね。


世の中の人がデパートの食品売り場に行きたくなる理由が分かった気がした。






夕食を食べに行ったレストランは洒落た小さな2階建てで、値段も手ごろな店だった。


料理もおいしくて、盛り付けがきれいだ。


大通りから1本中に入った通りにあるから静かで、デパートで疲れた俺にはものすごく心地よかった。


“ファンの集い”に来る人たちにとっては、佐伯とコバちゃんがいれば、それでいいんだろうけど。


会計のときにきいていみたら、パーティ用の部屋は2階で、外の階段から直接入れるようになっているという。


部屋が空いている日を教えてくれて、パーティ・プランのチラシをくれた。


橘さんが佐伯とコバちゃんの都合を確認してくれることになった。


どんな会になるのか不安も残るけど、せっかくだから楽しもう。







* −−−− * −−−− * −−−− * −−−− * −−−− *




橘 春香




今日はおもしろかった!


特にインテリア売り場は当分楽しめそう!


さすがにデパートの家具は高くて買えないけど。


これからは家具屋さんをチェックだな。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ