1月4日
1月4日。今日から仕事開始。
まだ松の内なのになぁ・・・って、いつも思うけど仕方ない。
出勤すると、隣の係の何人かに、「テレビで見たよ。」と笑いながら言われて恥ずかしい思いをしたけれど、それだけで終わってほっとした。
うちと隣の係長が、始業時間にそれぞれあいさつをする。課長は本社で社長の訓示を聞いてから、こちらに来るのが恒例。
約一週間の休み明けで、まだエンジンがかからないけど、これからの仕事の確認をしながら、パソコンを立ち上げてメールのチェックをした。
あれ?いつもよりメールが多い。
並んだタイトルの中に「がんばれ!」とか「おめでとう」というものがあって気がついた。あのニュースだ!
こんな風に影響が出るとは思わなかった。
順番に開いてみると、タイトルは仕事のことらしいのに、内容があのインタビューについてのものもあった。
仕事のアドレスは社内で公開されているから、俺のプライベートのアドレスを知らない人も、これで送って来たらしい。
昨日のメールもそうだったけれど、面白いことにみんなの反応は様々だ。
「決まってよかったね。」というおめでとう系。
「相手がいたのか!」という驚いた系。
「相手もいないのに、あんなこと言うなんて正気か?」というものもあった。
中には「相手は小林さんか!?」という焦った内容のものもあり、そういえばそんな噂もあったなぁ、と思い出した。
とりあえず返信には、「相手は決まっているが、結婚の時期は未定。」と書いた。
昼前に課長が到着。
いったん仕事を中断して、課長からあいさつと社長の訓示の内容を聞く。
昼休みが終わるころ、事務所の廊下で課長に呼び止められた。
「本社できみの話題が出たよ。」
あのテレビの件が課長たちの話題にまで?不真面目な社員だって言われたんだろうか。
「竹田君のことで、その後、どうしてるか人事課長にきかれてね。」
あ、そっちか。少しほっとする。
「彼のことは問題ないようだって言っといたけど、きみ、総務課の中村君に連絡を取ったんだってね。彼は管理職も注目している社員だから、人事課長も普通より余分に情報を流してしまったって言ってたよ。」
人事課長からの情報だったのか!?中村さん、本当にすごいや。
「それで、中村君がそんなに信頼している社員はどんな人物なのかって。」
・・・普通の社員です。すみません。
「すみません。ご面倒をお掛けしたみたいで。」
いやいや、と課長は笑った。
「ところで、きみ、結婚するの?」
ここで来たか!
「はい。今年中にはと思っています。」
「相手は橘さん?」
え!?
「あっ、あの、め、目立ちましたか?」
そんなにラブラブだったとは思ってなかったのに!
「ははは!違う違う。最初からお似合いだとは思ってたけどね。まあ、課員の管理も課長の仕事だから、ほかの人よりはよく見てるよ。二人ともきちんとしているから、俺以外は気付いていないと思うよ。」
「すみません。具体的に決まったらお話するつもりでいたんですが。」
「気にしなくていいよ。同じ職場内だといろいろ難しいこともあるかもしれないから、二人でよく考えて行動してくれれば。」
「はい。ありがとうございます。ご心配をおかけします。」
理解のある課長でよかった・・・。
自分の席に戻ると橘さんはまだ戻っていなくて、課長が気付いていたことを携帯でメールした。あの話のすぐあとに、直接話をするのは(しかもこんな話!)まずい気がする。
すぐに、「わたしからも一言言っておく。」と返信があって、廊下を走っていく橘さんが見えた。
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橘 春香
事務所の人に気付かれるほど仲良く見えたのかなぁ?
そんなつもりじゃなかったのに。
みっともないし、恥ずかしい!