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お正月(4)



橘さんの部屋は3階だった。


玄関を入ると縦長のワンルームで、手前にカウンターキッチン、奥にこたつとベッドがあった。駅に近い分、俺の部屋よりちょっと狭いかな。うすいピンクとベージュで暖かみのある部屋になっていた。


橘さんは俺に、先にお風呂に入るようにと言って、タオルを出してくれたり、風呂の使い方を説明してくれたりした。


ありがたく使わせてもらい、温まったおかげで緊張がほぐれた。


彼女がお風呂に入っている間、こたつに入ってテレビを見る。テーブルにはお茶とみかん。日本の冬な感じ。


満足感でうとうとし始めたころ、橘さんが戻って来た。


パジャマの上に赤い綿入れ半纏を羽織り、あの似合いすぎるメガネをかけている。その無防備な様子にまたドキドキしてしまう・・・。


「あ!もう眠いよね。今、お布団の支度するから。」


いいえ、橘さんを見て目が覚めました。でも、布団を敷くスペースってあるの?


彼女は「ちょっとごめん。」と言いながらこたつをキッチン側に引きずって行って、ベッドの横にスペースを作った。


クローゼット(押し入れか?)を開けて布団袋を出そうとしているので、一緒に手伝った。


布団を敷きながら、彼女が


「椚くんはベッドに寝てね。こっちの布団は寝心地が悪いの。急で干してないし。」


と言う。俺が遠慮すると、


「いいの!お客様だから。さっき、シーツとか一式取り換えておいたから。そうか、先に寝ててもらってもよかったんだ。」


なんて、さっぱりと言う。要するに、俺はただひたすら眠いっていう設定らしい。


寝る支度をしながらしばらく話をして、11時過ぎに布団に入った。


「おやすみなさい。」


を言ったあと、ほんの数分で彼女は眠ってしまったようだった。本当に疲れていたんだなあ・・・。





でも、俺は眠れない!


陸と空と遊んで体は疲れているけど、目が冴えてしまっている。


何度も寝がえりを打って、目をつぶってみるけど、ただ時間が過ぎて行くだけ。


横を向くと、ベッドの下に橘さんが眠っている。


そういえば、年末もこうやって同じように、俺と彼女が寝ていたんだった。


あのときは、彼女がいてくれるだけで安心できたのに。今日はそれだけじゃ、満足できない。


ベッドから手を出して、橘さんの髪にそっと触ってみる。・・・やっぱり寝てる。


じゃあ、今度は頬に・・・と思ったら、いきなり名前を呼ばれた!


「椚くん。」


えっ!?


「はっ、はい。」


「コピー10枚、お願いします。」


はい?えっと、コピーって・・・?思わず半身を起こして、周りを見回す。


それから橘さんは、「くくくっ」と笑ったみたいだ。


起きてるのかな?


ベッドから足をおろして、橘さんの顔を覗き込む。


寝てるみたい。


あれ?もしかして、寝言?


寝言って、聞いたの初めてだ!こんなにはっきりしゃべるなんて知らなかった!


おもしろい〜。明日、教えてあげよう。


もう終わりかな?


しばらく見ていたけど何も言わないので、あきらめて寝ようと思った。


気分がほぐれて眠くなってきたし。


すると、「んー。」と声がして、そのあとはっきりと聞こえた。


「抱っこ。」


うわ!どんな夢みてるんだろう?本当に抱っこしちゃうよ?


「陸、空、こっち。」


力が抜けた。なんか、俺、バカみたい。


でも、やっぱりまた眠れない気分。


俺は枕と掛け布団をかかえて、橘さんの布団の向こう側に移った。


彼女と枕を並べて布団にくるまる。


寝心地なんか悪くても、彼女の隣にいる方がいい。


今度こそすぐに眠くなった。


あ、いつの間にか、俺、橘さんに普通に話してた・・・。







* −−−− * −−−− * −−−− * −−−− * −−−− *




橘 春香




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