表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/77

撃退!



知り合いたちに依頼した竹田の調査は、たくさんの情報をもたらしてくれた。



女性にはとにかく評判が悪かった。


それも、同じ課だけじゃなく、本社中と言ってもいいほどの範囲で。


ルックスに自信を持っていて(あの程度でか?)、やたらと付きまとう。冷たくしても、逆の意味に解釈する。


嫌われていると分かると、嫌がらせをする。直接だけじゃなく、悪い噂を流したり。


セクハラ発言、学歴による差別的な発言も多数。


女性社員がグループを作って、竹田の所属課長に苦情を言いに行ったそうだ。




男性からは邪魔にされている。


本人は仕事ができるつもりだが、実は役に立たない。


それどころか、竹田の対応のせいで信用を落としそうになったことが2度ほど。


仕事を教えても、「知っている」「自分のやり方の方が上手くいく」と言って、勝手な方法で進めようとする。


その揚げ句、失敗すると、嘘をついてごまかそうとする。


そういったことの対策のため、彼には、失敗しようのない業務しかさせなかったそうだ。


その分、周囲の負担は大きくなったはずだけど。


それでも、上司に取り入ろうと、自分の手柄話をする・・・が、本当は自分のじゃない。


同僚の恋人に手を出そうとした。


取引先の女性にも同じようなことをして、その女性の上司からも苦情が来たそうだ。




こんなヤツ、どうして採用されてしまったんだろう。面接で見抜けなかったのか。


優秀ではないとしても、普通でいいのに。


まあ、10分や15分の面接では、分かるはずもないか。




中村さんは、人事課の伝手から入手した異動の理由をそっと教えてくれた。


さすがエリートは顔が広い。



『とにかく、本社に置くのは迷惑』


『女性が少ない職場』


『ベテランの先輩に囲まれて、ビシビシ鍛えられる職場』


そして、重要なのはこれ。


『女性に対する行動を改めること。1年半後までに改善が見られなければ解雇。』


これは本人に言い渡してあるそうだ。


だから、勘のいい佐伯しか気付かなかったんだ。


でも今、俺には証拠のメールがある。




竹田が帰るところを見計らって、事務所の廊下でつかまえた。


「うちの係の小林さんと橘さんから、きみから嫌がらせを受けたって相談されたんだけど。」


まずは逃げられないように軽い口調で。


「は?俺には何のことかわかりませんけど。」


白を切るつもりか、首を捻って見せている。


「そう?事務所に人が少ないときに近寄ってきたり、下品なことを言われたって言ってたよ。」


それを聞いて、竹田はふてぶてしく笑った。


「それ、逆じゃないですか?俺の方が付きまとわれて迷惑してたんですよ。俺が断ったからって、そんな風に言うなんてひどい人たちだな。」


ばかやろう!


「あれ、そうなの?俺は、橘さんにきみから毎日届くメールを見せてもらってるけど、あの内容じゃ、きみが嫌がらせをしているようにしか見えないね。」


竹田の顔色が変わった。


「小林さんも、橘さんも、泣き寝入りするような人じゃないよ。今はこんな物もあるし。」


ポケットからボイスレコーダーを取り出して見せる。


「二人にいつも携帯してもらおうと思ってるんだ。」


「くそっ。脅すのかよ?」


「別に。嫌がらせをしないって、普通のことだろ。続けるようなら、課長に報告するよ。きみ、クビがかかってるんじゃないの?」


「何で知ってる!?」


心底、驚いた顔をした。


「人間、信用が肝心だよ。じゃあ、お疲れさま。」


竹田は悔しそうな顔をして帰って行った。あれで心を入れ替えて、仕事に励むといいけど。




「いやー、お手柄だねえ。」


後ろから声が・・・課長?びっくり!


「出て行けなくなっちゃって。はっはっは。」


「すみません。勝手なことを。」


冷や汗が止まらない。竹田、課長にバレちゃったぞ。


「まあまあ。あれでしばらくは大人しくなるだろう。俺は知らないことにしておくから、さっききみが言ったとおり、続くようだったら報告して。」


「はい。」


「じゃ。」


先輩面して説教(っていうか、脅し?)したところを見られてたなんて、やだな・・・。




席に戻ると、コバちゃんが「どうだった?」と駆け寄ってきた。


「やめるように言ったけど、あとは本人次第だから。念のためだけど、しばらくは二人ともこれを持ってて。」


ボイスレコーダーを渡して、使い方を説明する。机に置くだけでも効果があると思うし。


「じゃあ、今日は撃退祝いで一杯やろうよ!」


コバちゃんの一声で、久しぶりに4人で飲みに行くことにした。




* −−−− * −−−− * −−−− * −−−− * −−−− *


橘 春香



椚くんの行動力にはびっくりした。


頼りないなんて、今まで失礼なこと言っちゃったよ。


ものすごーく見なおした!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ