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初デート・・・のつもり(1)



日曜日。


JR秋葉原駅の電気街口で待ち合わせ。


橘さんは観光気分の気晴らしかもしれないけど、俺にとっては初デート。


場所がちょっと落ち着かないところだけれど、何でも興味を持つ橘さんには新鮮でおもしろいだろう。




少し早めに着いて、ぼんやりと今日のコースを考えていたら、横から声がした。


「椚くん、お待たせしました!」


「いいえ。」


と言ってそちらを向くと、いつもと違う雰囲気の橘さんがいる。


デニムのスカートに茶色のハーフブーツ、服装がいつもよりカジュアルなのはわかるんだけど、なぜかやけに可愛い・・・?


「メガネ?」


黒いフレームの少し大きめのメガネが、彼女の顔の真ん中に乗っている。


「変かな?来る途中で目にゴミが入っちゃって、コンタクトは外したから、これしかないんだけど。」


「全然。似合ってますよ!」


心臓を撃ち抜かれた感じがする・・・。




日曜日の秋葉原はとても賑やかだ。


買い物客の間を縫うように歩くと、外国のことばもたくさん聞こえる。


チラシを配っているメイド姿の女の子やコスプレ姿で宣伝している女の子を見かけて感心している橘さんと、歩調を合わせてゆっくりと歩く。


「最初に俺の用事を済ませてもいいですか?」


おっ!自分のホームグラウンドに来たせいか、ようやく「俺」って言えた。


「うん、どうぞ。」


橘さんは気付かなかったらしい。俺にとってはけっこう大きな進歩なのに。


いつも寄る部品屋の前で、


「ここなんですけど。」


というと、中をのぞいた橘さんは


「通路が狭そうだからここで待ってます。バッグで棚のものを落としそう。」


と言う。


「じゃあ、急いで行ってきます。」


俺は橘さんを店の前に残して、店の奥へと入って行った。




目当てのものはすぐに見つかり、会計を済ませて戻ってくると、店の前に橘さんはいない!


あわてて見回すと、大学生らしき2人連れの向こうに彼女の姿が見える。驚いて彼女のもとへ走る。


「椚くん!」


ほっとした彼女の顔。思わず2人連れを睨みつけたら、小さく頭を下げて去って行った。


「秋葉原は初めてかって話しかけてきて、案内するってしつこくて。」


それで、こんなところまで後ずさりしちゃったのか。


「すみません。一人にした俺のせいです。」


「そんなことないよ。待ってるって言ったのはわたしだし、あのくらい自分で追い払えないと。」


いや。どこにでもタチの悪い奴はいる。


竹田のことで嫌な思いをした気晴らしなのに、また同じような目に遭ってしまっている。


しかも、今日の彼女は・・・可愛い。秋葉原に集まる男たちの目にどう映っているのか、考えると恐ろしい。


油断した俺が甘かった。もう目を離さないようにしよう。




「俺の用事は済んだので、何か見たいものとかありますか?」


橘さんが探しているゲームがあるというので、のんびりと周囲の店の説明をしながら、大きなゲーム売り場のある店へ向かった。


ここの売り場はとにかく広い。


俺は橘さんを見失わないように気をつけていた・・・のに、あまりに混んでいて、気付いたら彼女が見えなくなっていた!


一瞬のことだったから、そんなに離れてしまったはずはないのに、なかなか見つからない。大声で呼ぶしかないのか?


と、思ったとき、通路の先に彼女を見つけた!


また男に話しかけられてる!?


急いで近付くと、男の方がこっちを向く。


「あ、椚先輩。」


あれ?大学の後輩の三田か。


「あ、椚くん。」


三田が驚いて橘さんを見る。


「ゲームを見つけたら、この人がいろいろ説明してくれて。」


「椚先輩の方が詳しいですよ!僕はこれで失礼します。」


「椚くんの後輩だったんだ。店員さんじゃなかったのかな?」


「違うと思いますよ。銀行に勤めているはずだから。ほかに探しているものはありますか?」


今日はこれだけだと言うので、一瞬迷ったけど、橘さんの手をとって歩きだす。また見失ったら、今度こそ叫んでしまいそうだ。


これ以上、秋葉原にいるのは危険かもしれないと思った。




* ---- * ---- * ---- * ---- * ---- *


橘 春香



秋葉原っておもしろいところ。


でも、混んでて大変だ。


迷子にならないようになのは分かってるけど、椚くんと手をつなぐのはちょっとどきどきする。


でも、椚くんはコバちゃんを好きなんだから・・・。



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