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4月1日


やっぱり、彼女だ。



課長のとなりに立つグレーのパンツスーツの小柄な姿。


ちょっと緊張した顔をあげて自己紹介している。


(たちばな) 春香です。よろしくお願いします。」




俺のとなりから小林 (りん) ―― 通称コバちゃんが小声で話しかけてくる。


「ねえねえ、やっぱり知ってる人だった?」


「うん。」


今回の異動で来た女性、橘 春香さんは、中学時代の同級生だ。




2日前に係長から異動の発表があったとき、俺と同い年の女性ということにコバちゃんはすごく盛り上がっていた。


ちょっとオタク系で周りに女性の影がない俺をいつもからかっているのだ。


ちなみにコバちゃんは、俺より4歳下の後輩。


・・・だが、彼女が同じネットゲームでいつも会う相手だとわかってからは、彼女にとって、俺は先輩ではなくゲーム仲間だ。


職場でも友達口調だし、ネットゲーム仲間だということも周知のこととなった。


仲良くしゃべるので、中には俺がコバちゃんに気があると思ってる同僚もいる。


ただし、逆はない。



どうしてかというと、コバちゃんは長身でショートカットの似合う超美人だから。


サバサバした性格で、仕事もバリバリこなす。


職場でも気軽に打ち解けていて、みんな彼女を“コバちゃん” と呼ぶ。


そんな彼女が、すべて“普通”の俺を好きになるなんてありえないってこと。


誤解されているのは二人とも知ってるけど、面と向かって言われない限りほうっておいている。


コバちゃんは群がってくる男どもを牽制するため(俺の防御効果は微々たるものだけど)、俺は合コンとか女の子を紹介するとか、そういう誘いが苦手だから。






そして、橘 春香さん。


名前を知らされたとき、あれっと思った。


「若い女性だなんて、(くぬぎ)さん、チャンスかもよ〜♪」


コバちゃんはにこにこしている。


「もしかしたら、知ってる人かも・・・。」


と、返す俺に、


「じゃあ、昔の話で盛り上がっちゃうかもね!!」


・・・って、盛り上がってるのはコバちゃんだよね。





橘さんとは中学1、2年で同じクラスだった。


ほかのクラスメイトより大人びた感じで、教室でキャーキャー騒いでいたという記憶がない。


休み時間は友人と2、3人でにこにこと話していたけど、いつもおだやかな雰囲気だった。


成績が良くて、先生方の受けもよかった。


クラス委員とかもやっていたんじゃなかったっけ。いわゆる優等生だった。


そういえば、1学期だけ一緒に美化委員とかやったかも。


でも、あんまり話した覚えがないな・・・。




今、前であいさつしているひとは、間違いなく彼女だ。


俺が28歳ってことは、14年ぶり?


少女から女性になっているけど、目の上で切りそろえた前髪とぱっちりした目は変わらない。


やっぱりきちんとしたイメージだし、おとといの係長情報では仕事もできるということだ。


相変わらず優等生なんだなー。




「じゃあ、席はそこだから。 小林さん、ロッカーの案内とかよろしくね。」


「はいっ!」


張り切ったコバちゃんの声。


紹介が終わった橘さんがこっちに歩いてくる。席は俺の左隣り。


「よろしくお願いします。」


微笑みながらちょっと頭を下げる彼女。


「小林 鈴です!よろしくお願いします。」


横からものすごく元気いっぱいのあいさつが聞こえる。


俺と橘さんの再会がどんなことになるのか、興味津々なのが丸見え。


「この人は椚さんです。橘さんと同じ中学だったって。」


待ちきれなかったらしく、コバちゃんが俺を紹介してしまった。


大の大人が、なんとなくカッコ悪い・・・。


橘さんは、びっくりした顔で俺の顔を見上げる。


「椚 良平です。中学の1、2年で同じクラスだったけど、わかりますか?」


一瞬遠い目をしたあと、橘さんはにっこりわらった。


「ああ! あの椚くん!」


“くん”付け!? って思ったあと、駄目押しのことばが。


「大きくなったわねぇ。」


親戚のおばさんかっ!!


隣ではコバちゃんが、こらえきれずに吹き出していた。





「あれー、知り合いだったの。よかったねぇ。」


のんきな声は係長の近藤さん。


「仕事はそっちにいる佐伯くんから引き継いでもらって。前任の金子さんが退職しちゃったから、いったん佐伯くんに引き継いでもらってるんで。」


佐伯(さえき) 勇樹(ゆうき)です。」


その声に振り向いた橘さんの目がまん丸になった。そしてすぐにちょっと困ったような表情に変わる。


「よろしくお願いします。」


声もなんとなく弱々しい? なんだろう?


「岩田です。みんなは岩さんって呼ぶんで、橘さんもそう呼んで。」


「岩さんはこの道30年のベテラン。ものすごく頼りになるんですよ!」


コバちゃんの解説に、にっこりして「お願いします。」と頭を下げる橘さん。


「では、所内をご案内してきまーす。行きましょう!」


コバちゃんに連れられて、橘さんはガラスドアから出て行った。







* ---- * ---- * ---- * ---- * ---- * ---- *



橘 春香




雰囲気のよさそうな職場でよかった!


小林さん ―― コバちゃん(すぐにそう呼んでくれなんて、かわいいな。)は元気で親切だし、椚くんっていう知り合いもいたし。


でも、佐伯さんは困ったなぁ・・・。 あんなにカッコいい人だなんて。


その人に仕事を教わらなくちゃいけないなんて、大丈夫なんだろうか?


めちゃくちゃ緊張して、何にも頭に入らなかったらどうしよう!?





初挑戦です。よろしくお願いします。


改行に迷って、こんなスタイルになってしまいました。

読みにくかったらごめんなさい。

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