悪役令嬢の魔王攻略
国を滅ぼす悪役令嬢シリーズ
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の4話目です。順番に読んでいただけるとうれしいです。
5話分をまとめた連載版も投稿しました。
「国を滅ぼす悪役令嬢」
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気が付いたらいつもの場所、いつものセリフだった。
また時間が巻き戻った。
「マチルダ様は、貴重な聖魔法の使い手だから、国王陛下も丁重に取り図るようにおっしゃってましたし、殿下はそのお言葉に忠実に従っているだけだと思いますわ」
さすがに4回目なので、今までは「でもでも」と食い下がっていたが、素直に頷いておこう。
「そうですわね。わたくしの考えすぎかもしれませんわ」
そうだ、ここで黙ってると、ジェーンが神絵を見せてくるかもしれない。そしたらたぶん興奮して考えがまとまらないので、ジェーンに挨拶をして部屋に戻った。惜しいけど。惜しいけど!
ここは王立学園。私は公爵家令嬢のクラウディア。
さっきまで私とお茶をしていたのは、お友達のジェーン侯爵令嬢。
そして私は、王太子のアラン様と婚約している。
しかし、聖女としてマチルダ男爵令嬢が学園に転入してから、アラン様が彼女にかかりきりで、やきもきしている状態である。
そして実は私は、日本で生まれ育ち、この世界に転生してきた者であり、この世界は「日本で遊んだゲーム」と同じなので、知識があるのだ。
なので、聖女マチルダとアラン様の仲にはやきもきしてるけど、マチルダに文句を言うと、「聖女をいじめた」と断罪されることがわかってるので何も言えない。
だから他の方法で冷静になろうとしたが、ことごとく失敗して国を滅ぼしている。3回。
そして3回時間が巻き戻って、4回目の今に至るというわけだ。
それにしても、前回の国の滅び方はひどい。
「聖女の鼻血で魔物が押し寄せたから」国が滅ぶって。
適当すぎでしょ。
学園のある王宮都市には、騎士団も自警団もいるんだし、多少、
魔物が来たからって、国が滅ぶほどの被害が出るとは思えない。
と思ったらなんと、魔物じゃなくて、魔王が来てたらしいのだ。
魔王はそのとき、学園近くのパン屋で、コロッケパンを買いに来ていたらしいのだ。
毎日20個の限定販売を。
そして聖女の血の匂いを感じ、まだ若く、魔力の抑制が効かなかった魔王は、初めて嗅ぐ聖女の血の匂いに興奮して魔力を暴走させ、魔王もろとも王宮都市一帯を吹き飛ばしたというふざけた話だ。
バカか。バカなのか。
しかし、魔王が「限定販売のパンを買いに来る」という情報を得られたのは大きな収穫ではないだろうか。
そもそも、なぜこの国に聖女が必要かというと、「数年後に魔王率いる魔物達が攻めてくる」からだ。
1回目でそうなったからわかっている。
聖女がいれば、その時に、救国できたはずだが、いなかったので国が滅んだ。
ということは、魔王に直接「攻めてこないで」と交渉して、同盟を結べれば、聖女がいなくてもなんとかなる、ってことじゃないだろうか。
そしたら聖女のありがたみも減るし、アラン様も今ほどマチルダと親しくする必要もなくなるはず。
これよ、これだわ!
私はさっそくパン屋と交渉した。
そして学園にお休みの届けを出して、お昼前にパン屋に行った。
この時間に、焼き立て揚げたての卵コロッケパン、限定20個が発売されるのだ。
すでに何人かが並んでいる。
そこに今、並んだ男の子! この子だ!
10歳くらいに見えるけど、たぶん魔族。
だって、可愛らしいうさぎのかぶりものっぽいフードの、うさぎの耳が変な方向に曲がってるんだもん。
あそこ、魔族特有の角でしょ。
「ねえねえキミ、ちょっとお話がしたいんだけど」
男の子はちらっとこっちを見るが、すぐ目線を戻して無視した。
「ここのコロッケパン5個を代わりに買っておいてあげるから、ちょっと列から離」
「5個!? ここはおひとり様2個までなのに!?」
最後まで言う前に食いついてきた。
「ええ、護衛3人に買わせるから大丈夫よ。先に並んでるし」
と、列に並んでいる護衛を手の平で指し示すと、
「…3人いたら、6個買えるよ?」
ちっ。1個は自分で食べようと思ってたけど、しょうがないか。
「じゃあ6個あげるから、話を聞いてくれる?」
「いいよ!」
素直な魔王だった。
私と魔王は近くのカフェに入って座った。そして
「単刀直入に言うわ。あなた魔王よね?」
「!!!」
驚愕した顔の魔王は、ぶるぶる震えながら目をそらし、なんとかごまかそうとする。
「バ、バカいっちゃいけませんや、あっしはただの野良うさぎ…」
つっこむのも面倒なのでサクサク話を進める。
「あなたが魔王なのはわかってるの。毎日限定コロッケパンを買いに来てることも」
「な、なんで…」
「その上で交渉にきたの。毎日コロッケパン6個を、あなたのために取りおいておくわ。だから人間社会に攻めてこないでほしいの」
「なにそれ? 僕は君たちを攻めるつもりなんてないよ?」
そうだったのか。じゃあ数年のうちになにかがあるのかな?
「でも攻めてくることは決まってるのよ。だから不安なので、同盟を結んでくれないかな。コロッケパンを取りおく限り、戦争はしかけませんっていう…」
「コロッケパン30個がいい…」
「なんですと?」
「開店時に10個、お昼に10個、閉店時に10個欲しい…そしたら絶対、人間に迷惑かけないようにする! 魔物たちにも伝える!」
限定20個のコロッケパンを30個とは、大きく出たもんだと思ったが、これで平和が約束されると思ったら破格の条件じゃない??
パン屋の負担だけ大きくなっちゃうから、王家の力でなんとかお金とか人員とか増やしてもらえば…。
私と魔王は証文を作ってサインした。
「交渉成立ね!」「成立!」
それから、毎日3回、魔王はパン屋に来るようになり、店の前でうれしそうにパンを食べる姿が目撃されるようになった。
「あの子、魔王なんだって」
「魔物が来ないのも、あの子のおかげなんだってね」
「あんなに夢中でパンをほおばって…」
「かわいいわねえ」
と、市民の間でもほほえましく見られていた。
しかしある時から、魔王のかわりに魔族がパンを取りに来るようになって、魔王は姿を見せなくなった。
「魔王最近こないね」
「仕事が増えたのかな?」
「ちっちゃくても王様だものね」
と人々が噂していると、大量の魔物が襲ってきて、国は滅びた。
魔王が来なくなったのは、実は急激な炭水化物のとりすぎによる
メタボで、動くのが億劫になったからだった。
そのまま内臓脂肪増大による高血圧、糖尿になり、心筋梗塞で急死してしまい、
「魔王が死んだのは、人間がよこしたコロッケパンのせいだ!」
と怒った魔物達が復讐にきたのであった。ちーん。
コロッケパン大好きなもんでつい…。卵コロッケ食べたいな~。




