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国を滅ぼす悪役令嬢

悪役令嬢の魔王攻略

作者: ぺいた
掲載日:2026/03/24

国を滅ぼす悪役令嬢シリーズ

https://ncode.syosetu.com/s1799k/


の4話目です。順番に読んでいただけるとうれしいです。


5話分をまとめた連載版も投稿しました。

「国を滅ぼす悪役令嬢」

https://syosetu.com/usernovelmanage/top/ncode/3109341/

気が付いたらいつもの場所、いつものセリフだった。

また時間が巻き戻った。


「マチルダ様は、貴重な聖魔法の使い手だから、国王陛下も丁重に取り図るようにおっしゃってましたし、殿下はそのお言葉に忠実に従っているだけだと思いますわ」


さすがに4回目なので、今までは「でもでも」と食い下がっていたが、素直に頷いておこう。


「そうですわね。わたくしの考えすぎかもしれませんわ」


そうだ、ここで黙ってると、ジェーンが神絵を見せてくるかもしれない。そしたらたぶん興奮して考えがまとまらないので、ジェーンに挨拶をして部屋に戻った。惜しいけど。惜しいけど!


ここは王立学園。私は公爵家令嬢のクラウディア。

さっきまで私とお茶をしていたのは、お友達のジェーン侯爵令嬢。


そして私は、王太子のアラン様と婚約している。

しかし、聖女としてマチルダ男爵令嬢が学園に転入してから、アラン様が彼女にかかりきりで、やきもきしている状態である。


そして実は私は、日本で生まれ育ち、この世界に転生してきた者であり、この世界は「日本で遊んだゲーム」と同じなので、知識があるのだ。


なので、聖女マチルダとアラン様の仲にはやきもきしてるけど、マチルダに文句を言うと、「聖女をいじめた」と断罪されることがわかってるので何も言えない。


だから他の方法で冷静になろうとしたが、ことごとく失敗して国を滅ぼしている。3回。

そして3回時間が巻き戻って、4回目の今に至るというわけだ。


それにしても、前回の国の滅び方はひどい。

「聖女の鼻血で魔物が押し寄せたから」国が滅ぶって。

適当すぎでしょ。


学園のある王宮都市には、騎士団も自警団もいるんだし、多少、

魔物が来たからって、国が滅ぶほどの被害が出るとは思えない。


と思ったらなんと、魔物じゃなくて、魔王が来てたらしいのだ。

魔王はそのとき、学園近くのパン屋で、コロッケパンを買いに来ていたらしいのだ。

毎日20個の限定販売を。


そして聖女の血の匂いを感じ、まだ若く、魔力の抑制が効かなかった魔王は、初めて嗅ぐ聖女の血の匂いに興奮して魔力を暴走させ、魔王もろとも王宮都市一帯を吹き飛ばしたというふざけた話だ。

バカか。バカなのか。


しかし、魔王が「限定販売のパンを買いに来る」という情報を得られたのは大きな収穫ではないだろうか。


そもそも、なぜこの国に聖女が必要かというと、「数年後に魔王率いる魔物達が攻めてくる」からだ。

1回目でそうなったからわかっている。

聖女がいれば、その時に、救国できたはずだが、いなかったので国が滅んだ。


ということは、魔王に直接「攻めてこないで」と交渉して、同盟を結べれば、聖女がいなくてもなんとかなる、ってことじゃないだろうか。


そしたら聖女のありがたみも減るし、アラン様も今ほどマチルダと親しくする必要もなくなるはず。


これよ、これだわ! 


私はさっそくパン屋と交渉した。

そして学園にお休みの届けを出して、お昼前にパン屋に行った。

この時間に、焼き立て揚げたての卵コロッケパン、限定20個が発売されるのだ。

すでに何人かが並んでいる。


そこに今、並んだ男の子! この子だ!

10歳くらいに見えるけど、たぶん魔族。

だって、可愛らしいうさぎのかぶりものっぽいフードの、うさぎの耳が変な方向に曲がってるんだもん。

あそこ、魔族特有の角でしょ。


「ねえねえキミ、ちょっとお話がしたいんだけど」


男の子はちらっとこっちを見るが、すぐ目線を戻して無視した。


「ここのコロッケパン5個を代わりに買っておいてあげるから、ちょっと列から離」

「5個!? ここはおひとり様2個までなのに!?」


最後まで言う前に食いついてきた。


「ええ、護衛3人に買わせるから大丈夫よ。先に並んでるし」

と、列に並んでいる護衛を手の平で指し示すと、


「…3人いたら、6個買えるよ?」


ちっ。1個は自分で食べようと思ってたけど、しょうがないか。

「じゃあ6個あげるから、話を聞いてくれる?」


「いいよ!」


素直な魔王だった。


私と魔王は近くのカフェに入って座った。そして


「単刀直入に言うわ。あなた魔王よね?」


「!!!」


驚愕した顔の魔王は、ぶるぶる震えながら目をそらし、なんとかごまかそうとする。


「バ、バカいっちゃいけませんや、あっしはただの野良うさぎ…」


つっこむのも面倒なのでサクサク話を進める。


「あなたが魔王なのはわかってるの。毎日限定コロッケパンを買いに来てることも」


「な、なんで…」


「その上で交渉にきたの。毎日コロッケパン6個を、あなたのために取りおいておくわ。だから人間社会に攻めてこないでほしいの」


「なにそれ? 僕は君たちを攻めるつもりなんてないよ?」


そうだったのか。じゃあ数年のうちになにかがあるのかな?


「でも攻めてくることは決まってるのよ。だから不安なので、同盟を結んでくれないかな。コロッケパンを取りおく限り、戦争はしかけませんっていう…」


「コロッケパン30個がいい…」


「なんですと?」


「開店時に10個、お昼に10個、閉店時に10個欲しい…そしたら絶対、人間に迷惑かけないようにする! 魔物たちにも伝える!」


限定20個のコロッケパンを30個とは、大きく出たもんだと思ったが、これで平和が約束されると思ったら破格の条件じゃない??

パン屋の負担だけ大きくなっちゃうから、王家の力でなんとかお金とか人員とか増やしてもらえば…。


私と魔王は証文を作ってサインした。

「交渉成立ね!」「成立!」


それから、毎日3回、魔王はパン屋に来るようになり、店の前でうれしそうにパンを食べる姿が目撃されるようになった。


「あの子、魔王なんだって」

「魔物が来ないのも、あの子のおかげなんだってね」

「あんなに夢中でパンをほおばって…」

「かわいいわねえ」


と、市民の間でもほほえましく見られていた。


しかしある時から、魔王のかわりに魔族がパンを取りに来るようになって、魔王は姿を見せなくなった。


「魔王最近こないね」

「仕事が増えたのかな?」

「ちっちゃくても王様だものね」


と人々が噂していると、大量の魔物が襲ってきて、国は滅びた。


魔王が来なくなったのは、実は急激な炭水化物のとりすぎによる

メタボで、動くのが億劫になったからだった。


そのまま内臓脂肪増大による高血圧、糖尿になり、心筋梗塞で急死してしまい、

「魔王が死んだのは、人間がよこしたコロッケパンのせいだ!」

と怒った魔物達が復讐にきたのであった。ちーん。

コロッケパン大好きなもんでつい…。卵コロッケ食べたいな~。

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