6話「封樹の話」
ここまでの主な登場人物
ルーファー・カリン:記憶を読み取る特殊な能力を持つ少女。この物語の主人公
ダン:ベルス第一商隊の隊長。ズボラな適当人間。銃身が長すぎるライフルを武具にしている。
リン:ベルス第一商隊の隊員。明るく親しみやすい性格の天然キャラの女。
ネル:ベルス第一商隊の隊員。整備士。
カエシ:商士学校の先生。ルーファーの担任。
アルス:武器屋の主人。
~言葉~
封樹=エル
封樹の力=エルマ
首都:チーダス
レンド:ベルス第一商隊の拠点がある、ぼろ屋街
「私に近いタイプ?」
ルーファ―は、訝しんでダンに尋ねた。
「お前も知っているだろうが、封樹の力使いには大きく分けて2つのタイプがある」
ダンは店内に置いてあった椅子を自分の側にもってきて腰かけた。
「一つ目は、いわゆる戦闘向きの封樹の戦士だ。こいつらは封樹を物理的に体内へ取り込むことで、一定時間身体能力なんかが向上し特殊な武具を使えるようになる」
ルーファーもこのことは詳しく知っている。
商士学校でよく習うし、実際に何人も見たことあるからである。
「二つ目のタイプは、アルスやルーファーのように封樹を取り込むことなく封樹の力を使う連中だ。こいつらは体内に封樹の種が埋め込まれている」
ルーファ―は、あっさりと封樹の”種”なるものが体に入っていることを初めて知った。
商士学校では一切教わっていないからである。
「え?体内に種?」
ルーファーは思わず尋ねた。同時にそんなことがあるわけないと思った。
「大体のやつは心臓に種が入っているらしいが、詳しいことは知らん」
するとアルスが店にあった別の椅子を持ってきた。そして、ルーファーに座るよう促した。
そして、アルスは
「ルーファーちゃんは能力を使うとき、心臓の鼓動を感じない?」
とわずかに微笑みながら聞いてきた。アルスは、もうそのことを知っているようであった。
「確かに感じる。いっつも不思議に感じてた…」
ルーファーは自分の胸をみつめながら答えた。能力発動時に感じる動悸のような何か。ルーファーは深くは考えていなかったが感じていた体の反応であった。そして、ルーファーは、自分が一体何者なのか、 それすらもしっくりこないように感じた。
「私も同じ。心臓にきっと封樹の種がある。ちなみに私の能力は「圧倒的な回復力」よ。ルーファーちゃんは記憶をみれるのかな?」
「は、はい、わたしの能力は人の記憶を読み取ることです」
「本当にすごい能力だわ、ただその有用性の高さが逆に危ないと感じるわね」
アルスは冷静な面持ちで言った。ルーファーはアルスのこうした冷静さに感心した。
「そのとおりだ。こいつのは色々危険だ」
ダンが話に混ざってくる。そして、再び話を始めた。
「封樹の戦士のことについては、だいぶ研究が進んでいる。だがお前らみたいな特殊な連中には名前もついていなけりゃ、何がなんだかわかってないんだ」
「そうね、商士学校では私は封樹の力の行使ができないことになってたわ。なにより担任の先生からはこの能力の使用はやめるように言われていたわ」
「だろうな、カエシに感謝だ。さっき言った通りお前の能力は面倒ごとを引き起こす」
「人を疫病神みたいに言って…ところで、カエシ先生を何で知っているの?」
「あいつは昔からの腐れ縁だ。お前の存在を俺らに教えたのもあいつだ。冴えないアホが不憫だから助けてやってくれってな」
「絶対カエシ先生そんなこといわない…」
ルーファーは、あきれながら言葉を返した。
ルーファー自身もこの力をよくわかっていない。でも何となく使えてしまっていることに、恐怖を感じている部分もあった。
ダンはアルスの方に向き直した。
「んで、お前は死にかけながら襲ってきた連中の会話を聞いてたんだろ?正確には回復しながらか」
「うん!預かり物は取られちゃったから、せめて情報だけでもって頑張ったよ!」
アルスは、また別の椅子をとってダンの前に置き、腰かけた。
「今回私を狙ってきたのは、商議会議員のタカンの一味だわ」
「なるほど、タカンがあの武器を必死に集めている噂はほんとだったのか」
「情報あったのね。襲撃にきたのは15人。タカン議員はダルムス共和国と結びつきがあるわよね。襲ってきた一味は、もれなく全員ダルムスの訛りで、薄汚いリーダー格がダルムスに帰るよう部下に指示を出しているのが聞こえたわ。」
「なるほどな。タカン以外にダルムスにパイプを持つような連中は今のところ知らないな。よし、これでこの後どうするかは、大体まとまってきたな」
ルーファーには何が何だか分からなかった。
思わず言葉を吐いた。
「一体何がまとまったのよ。てかそろそろ事の経緯とか諸々教えなさいよ」
「そういやなんも言っていないな、この後商戦車で移動しながら伝えるわ」
「適当すぎるわ…」
ルーファーは完全に呆れていた。
『面接に来ただけなのに…』と心の中でボヤいていた。




