5話「運がいい」
隊屋があったレンドから商戦車に乗り南東へ進んでいる。
商戦車のように大きな車両は首都の通りを走ることができないため、専用道路が整備されている。人通りのない専用道をひた走っている。
ルーファーが窓の外を見ていると
「もうすぐでベルスの一番の外壁「二カウスの門」に到着するぞ」
「いったん降りるの?」
「そうなるな」
首都チーダスは、一周をぐるりと外壁に囲まれている。ほぼ円形の首都の一番中心からはおよそ20㎞ほどの距離である。外壁には門を守る警備隊がおり、外敵の侵入を防いでいる。
門にはそれぞれ過去の偉人の名前が付されている。二カウスもその一人だ。
警備隊が
「協力おねがいします。車からおりてください」
ダンに声をかけてきた。
出入りする際には、警備隊は所持品をくまなくチェックすることからだいぶ時間がかかる。
実際にこの日も30分ほどチェックに時間がかかった。チェックが終わり車が進み始めた。
「アルスのいるところは、この門からすぐの村だ」
「村で武器屋なんて珍しいね」
「ま、色々あるからな」
しばらく車でゆられながら進み、田舎道を抜けると人気のない小さな村が出てきた。
村の中には商戦車ではいれないことから、入り口に車を止めた。
村の入り口から一番奥の場所に『アルスの武器屋』という看板が立っていた。
ダンがドアをためらいなく開ける。ルーファーは事件現場であることから少し驚いた。
「アルス生きてるかー?」
ダンは声を張り上げて店内に呼びかけた。
「オー!来たか!ちょっと遅いな。リンちゃんから連絡はもらっていたから、事情はわかってるけどね」
店の奥から身長の高いすらっとした美人がでてきた。
先ほど記憶の中で見た人物である。そして、ルーファーの中で強烈な見覚えから、確信へと変わり『お母さんの記憶にいた人だ!』と強く感じた。
「やっぱり死んでないかアルス」
ダンは当然のことのように話を始めた。
「すごいね、ほんとに把握できてるんだ」
アルスは少しびっくりしていた。
そして言葉をつづけた。
「いやはや、死ぬのは難しいみたいだな。だけど保管を頼まれていた武器は奪われてしまったよ。すまんな」
「もともと無理いってるんだ、大丈夫」
アルスは店の受付から歩いて入り口付近の私たちのところへと向かってきた。
近くに来ると余計にその背丈の高さにびっくりした。
「で、そこのかわいいお嬢ちゃんはリンちゃんが言ってた『面白い子』かな?」
ダンの後ろに隠れるようにいたルーファーをダン越しに覗きみている。
ルーファーは、リンがどんな紹介をこの人にしたのか少し気になった。
「こいつは、今日うちに入隊面接に来たやつだ」
ダンはルーファーを親指で指した。
「ルーファーといいます。よろしくお願いします」
「よろしくね。ここにいるってことは団員ってことでいいのかしら」
アルスは再びダンの顔をみて言った。
「まだ面接の合否はでてないからな、いったん協力者ってことで」
「無茶苦茶ね。かわいそうだわ…」
アルスはあきれながら言った。ルーファーは、この日会った人でアルスが唯一まともな感覚を持っている人物であると感じた。そして、なにより人としての温かみを感じた。
「何であの傷を受けて無事なのですか?多分今日の朝方に受けている傷なのに…」
ルーファーは口に出すつもりはなかったが、思わず口走った。
するとアルスは
「あー、私ね、封樹の力使いなの。ただちょっと特殊なタイプでね」
自身の体をなでながら言った。
「こいつはお前に近いタイプの封樹の力使いだ」




