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3話「翠玉の記憶」

 この球体は、記憶の塊。

 ルーファーはその球体から刈り取った記憶を一つ一つ見ていく。

 うすぼんやりと見覚えのある男がいた。先ほど一緒に宙に舞った大柄な男である。

 その男は、何か記憶の主に話かけてきている。ルーファーは、さらに深く記憶に踏み入ろうとする。するとわずかに記憶の一端を垣間見ることができた。


「隊長のダン?聞いた事ねえぞ、お前も知らねぇよな?」


 薄暗い民家の中で大柄な男は首をかしげている。


「いいからやるんだ、軽い怪我でもしてくれればいい。報酬は言い値をはらってやるんだ」


 視界がゆれ、捉えていた大柄な男から少しはずれた。そこには、また別の男が出てきた。

 身なりは汚く、身長は低く、髪は薄い。だが、妙に迫力がある卑しさが滲み出た男である。


「だからといって封樹の力(エルマ)を使えるやつに、ただの人間が万に一つも勝てるとは思えねえ」


「げひゃひゃひゃぁ。だからここを襲わせたんだろう」


 卑しさが滲み出た男は、笑いながら自分の後ろをナイフで指した。持っていたナイフの柄には、エメラルドの液体が入っていた。

 すると視界がまたゆれる。

 そこにはダイニングの柱に背中を預けて足を投げ出し座る女がいた。

 腹と首からは大量に血を流していた。

 

「わあ⁉」


 ルーファーは、突然の出来事に思わず集中を解いてしまった。同時に封樹の力(エルマ)の行使もやめてしまった。

 状況をうまく呑み込めず、呼吸が大きく乱れ、心臓の鼓動が激しく胸を叩き始めた。

 ルーファーは胸の服をぎゅっと握り、うつむいた。


「びっくりしたぁ。大丈夫?」


 リンが心配そうに顔を下からのぞき込んできた。


「ええ、ちょっとびっくりしただけです、大丈夫です」


「何か見えたか?」


 ダンは、先ほどまでのふざけた雰囲気を消していた。

 ダンの少し吊り上がっている目が、わずかに強張っているように見える。

 ルーファーは改めて深呼吸をして息を整えた。


「はっきり言って、私の力は完全に相手の記憶をすべて把握できるわけではないわ」


 ルーファーは、正直に言った。

 ダンは真剣な眼差しでルーファーを見つめる。


「そのうえで、私が見たのはーーーー」


 ルーファーはさっき見た情景を説明した。


「間違いねえな。アルスの武器屋だろうな…色々考えると攻めてきた理由は何となく察しがつくな」


 ダンはすぐに言葉を紡いだ。その眼は確信しているように見える。


「ほんとぉ?アルスがやられるのかな、こんな弱そうな人らに」


 リンは不思議がっている。


「確かに気になるな。とりあえず行くしかない。どのみち会う予定だったしな」


「アルス心配だわ…死んじゃってたりしないよね」


 リンが両手を祈るように合わせて、空を見上げる。


「俺たちが行ってくる間に警備隊を呼んできて、こいつらを回収してもらってくれ」


「わかったぁ~、警備通信してくる」


 リンは商隊の隊屋に走っていった。

 ルーファーとダンだけになった。


「”俺たち”には、私も含まれているってことでいいのかしら?」


「当然、ついてこい」


 ルーファーはダンの後を追いながら、さっき記憶の中で見た女のことを考えていた。

 その女性に昔どこかで出会ったことがあるような気がしていた。


『どっかであったことあるかな…』


 ルーファーの心臓の鼓動が少し早くなった。


『お母さんの記憶を覗いたときにいた人かも…でも、あんまり思い出せないな』


 幼いころに一度母の記憶を覗いたことがあった。その時のことをルーファーは必死に思い出そうとしていた。

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