20話「早朝の山中~拠点攻略戦①~」
~前回まで~
ダルムス共和国の拠点を排除するため、アルスの村で他の商隊と作戦会議を行っていた。
その後、ベルス第一商隊も個別に会議を行い、その目的を確かめた。
そして、拠点攻略戦がいよいよ始まる…
作戦実行日、早朝————
リンとルーファーは、制圧を行うチームのメンバーたちと顔合わせをした。
「よろしく、ルーファーさん」
ベックス商隊の副隊長『コンサール』と言われるやたらスマートなイケメンが挨拶をしてきた。
「コンサールはね、とにかく動きが速い。槍で敵を一掃してくれるから大丈夫」
リンはなぜか誇らしげにコンサールを紹介した。
「そんなに期待されてもね、でも速さは確かに僕の武器だね」
コンサールは傍らにおいた槍を撫でている。
リンはルーファーへ顔を近づけた。
「ルーちゃん、私たちが人質を解放したら、とりあえずコンサールに任せて、封樹の剣を破壊するか、または確保をしに行くよ。そこにミカゲとダンも花火で呼ぶ算段だよ」
小声で耳打ちをしてきた。
「わかったわ、私は戦闘中は少し離れて戦闘支援をする」
「頼んだよ」
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ルーファーたちは、山の急な斜面を背後に10人ほどで固まって、その時を待っていた。霧が深く立ち込めて、背が低い城門もはっきりと視界に捉えることができない。
待機してから10分ほど経った。山の空気と自分が一体化してきているように感じるほど、長い時間であるように感じた。
そして、その沈黙の終わりは唐突にやって来た。
パンッ—————
森の静寂を切り裂く甲高い音が鳴る。
「合図だ!みんな行くよ~」
「ん?待ってリン、あの色、中止の色!」
ミカゲが上げた花火は『黄色』。作戦中止の合図である。
バンッ—————
リンの顔に切り傷ができた。傷から赤い筋が顎の方に垂れている。そして、後ろのベックス商隊の一人が山の斜面を転がり落ちていく。そして
バンッ—————
再び音が鳴る。
「ぐはあァ」
次はチーダス第二商隊の隊員がうずくまっている。
腕には矢が刺さっていた。
「矢ぁ⁉狙撃されてる」
リンが大声を出した瞬間
バンッ————
ルーファーの耳をかすめ、後ろの木に刺さった。
するとコンサールが立ち上がり前に行くそぶりを見せた。
「リン、この作戦は中止するわけにはいかない。他の隊の判断はわからないが…」
パンッ————
全員が空を見上げた。
「花火だ!赤!作戦続行の合図」
ルーファーは、続行の決定はミカゲの独断であると感じた。
当初の予定では、相手に作戦実行がばれた段階で中止が決まっていたからである。
「よし、みんな~、行くよ!」
リンはいつの間にか封樹の力を行使していた。
城門からは、封樹の剣を携えた男たちがでてきた。
心臓に突き刺し、いつものように我を見失いながら突進してくる
封樹の力を行使したコンサールが前方に出てきた。
「銃を持った人たちで、まずは撃ち込んで敵の勢いをそいでください。そしたら僕とリンで更に削ります。ビンダさん、合図を出してください。」
「わかった。弓が止んでいる、この瞬間がチャンスだ」
チーダス第二商隊のビンダが立ち上がり、部隊を射撃体勢に整列させた。
部隊全員が封樹の力を行使している。
「構え!引き付けてぇぇぇぇ、よし!撃てええええ」
ビンダが合図を出した。低く響く声は森の中を大きく揺らした。
放たれた銃弾たちは、暴走した人間たちに当たり、血しぶきと木くずを伴って何名かが吹っ飛んだ。
封樹の力を使った銃の威力は、やはり桁違いだとルーファーは感じた。
「よし、リンと僕で切り開く、敵を拡散させないようにできるだけ外側の敵に発砲してくれ」
ビンダたちの銃を持った部隊は、隊列を再び組みなおした。
「ルーちゃん、臨時で全体の指揮をとってくれる?」
「えええ、他にやる人がいるはずだよ!」
ルーファーは思わずうろたえた。そして、『絶対に自分では無理だ…』と感じた。
「ルーちゃんが一番冷静に最後までやれると思うよ。弓がなぜか止んでいる、この間に戦略を練ってほしいんだ」
いつになくリンが冷静に話してきて、ルーファーはその圧力に押された。
「わかったわ、やってみる。とりあえず、弓使いを倒す方法を考えるわ…」
「ありがとルーちゃん、任せたよ。行ってくる!」
リンはいつも以上の速度で山の斜面を駆け上がった。それにコンサールもついていく。
ルーファーは、二人の後ろ姿を眺めて、少し冷静に考えた。
『私たちの後ろは山の斜面、完全に向こうが有利な状況。リンとコンサールはきっと狂暴化した奴らを吹っ飛ばしてくれる。問題は弓使い…姿が見えない…』
ルーファーは何回か深呼吸をした。
「どうしよ…できるかな」
ここまでの主な登場人物
ルーファー・カリン:記憶を読み取る特殊な能力を持つ少女。この物語の主人公
ダン:ベルス第一商隊の隊長。ズボラな適当人間。銃身が長すぎるライフルを武具にしている。
リン:ベルス第一商隊の隊員。明るく親しみやすい性格の天然キャラの女。
アルス:武器屋の主人。
~言葉~
封樹=エル。巨大樹のこと。
封樹の力=エルマ。エルから採られて使われるエネルギー。あらゆるものへの活用がなされている。
封樹の戦士=エルズ。エルマを用いて戦う人間。
ベルス王国=ルーファーたちが暮らす大国




