1話「ちょっとした出会い」
首都チーダスのはずれにある廃れた地区ーレンド
首都の華やかさとはほど遠い木造ぼろ屋と、虚ろな目をした住人が徘徊している。ところどころに花壇があり、およそ派手な花々が植えられていた。
ルーファーは場所に似つかわしくない花壇を横目に、地図をもってウロウロしていた。
「どこにあんのよ…」
手に持った地図を再び凝視した。
「『ミンダス酒場店の入口前の小路をはいって、突き当りを左。そこから2つ目の角を右折して、さらに5つ目の角を…』って無限に小路を曲がらせる気のようね」
若干のため息をつき、再び足を動かし始めた。
学校のある地域とはまるで別世界であるため、ルーファーは一人心細くなっていた。
迷路のような小路をクタクタになって進む。
「ドンッ!!」
突然地面の奥から音が押し上げ、ルーファーの体が少しはねた。思わずバランスを崩したルーファーは、前かがみになり倒れそうになる。建物の壁に手をつけ、なんとか姿勢を保った。突然のことにルーファーは、何がおこったのかがわからなかった。そして、首を振り何が起きたのかを見ようとした。すると小路の先の広場に大柄な坊主男が拳銃を構えているのが見えた。
「死ねくそ野郎ッ!」
躊躇なく発砲した。先ほどの地響きとは異なり耳をツンざめく高い音が鼓膜を突く。
ルーファーは思わず首をひっこめた。
すると、
「すまんね、まだ死ぬ感じしないんだよなあ」
少ししゃがれた低い声が広場の方から聞こえてきた。
建物の陰に隠れて姿は見えないが、異常な状況にしてはやたらと余裕を感じる口調である。
ルーファーは、大男の近くの地面にはぽっかりと大きい穴が空いているのに気付いた。その穴の周りには、人らしきものが倒れていた。
「くそが…やってやる」
大柄な男は、自身のポケットから小型のナイフを取り出した。ナイフの柄の部分には、エメラルド色の液体が入っているのが見えた。
すると躊躇することなく自分の心臓にナイフを突き立てた。
胸から血が噴き出す。同時にエメラルド色の粉末が舞う。
大柄な男はその場でひざまずき、唸りだした。
「ちょッ、何してるの⁉」
ルーファーは思わず大声をあげて、血だらけの男に数歩近づいた。
すると男は突然立ち上がった。体は小刻みに震えているが、力がみなぎっているようであった。
男は正気を失った目をしている。すると金切り声を挙げながら、腰に差していた短剣を抜き、全速で前方へと突進した。
つられてルーファーも、小路を抜け広場へと向かっていった。
「あ~、来ちゃうよ。撃っちゃうのは気分が悪いんだよな~」
男の突進先には、銃身がやたらと長い異様なライフルを構えた男がいた。ぼさぼさの髪に無精ひげを生やした男。ルーファーの目には、その男が少し二やついているように映った。ルーファーは、何か危険なことが起こると思い、すぐさま立ち止まった。
その瞬間、
「ドンッ!!」
さっきと同じ音がなった。
短剣と大柄な男は宙を舞っていた。
不思議なことに、ルーファーも自分が男ほどではないが地面と距離があることを瞬時に悟った。
そして、あっけなく地面に叩きつけられた。
「ウッ…」
ルーファーは呼吸ができなかった。
そして、ライフルを持った男が歩いて近づいてくるのを足音で感じた。
「おーい、リンいるかぁー。この男、さっさと手当して警備隊に突き出してきてくれ。」
少し離れたところから走って向かってくる音が聞こえた。
「ダンさん、人使い荒いよ~。うわ、なんかもう一人まきこんでるよ…」
「わっ⁉ あー、運が悪い人もいるもんだ。」
朦朧とした頭とかすんだ視界の中で、意識がうっすらとなるのを感じた。
薄れゆく意識の中で、ルーファーは
『なんで私死にかけてるのよ…そして、こいつら何者…?』




