15話「いつかを超えるルーファーの弾丸」
ここまでの主な登場人物
ルーファー・カリン:記憶を読み取る特殊な能力を持つ少女。この物語の主人公
ダン:ベルス第一商隊の隊長。ズボラな適当人間。銃身が長すぎるライフルを武具にしている。
リン:ベルス第一商隊の隊員。明るく親しみやすい性格の天然キャラの女。
アルス:武器屋の主人。
~言葉~
封樹=エル
封樹の力=エルマ
封樹の戦士=エルズ。エルマを用いて戦う人間。
二人は、一瞬固まった。
ルーファーは、振り向けなかった。隣で覗いているリンも動けなさそうであった。
「おい、聞いてるんだ」
男はリンの肩をつかんだ。
「いや~道に迷っちゃったんだよね~。それにしても、お兄さんかっこいいねえ」
リンは苦笑いを浮かべて背後の男に話しかけた。
男は一瞬鼻の下を伸ばしたが、次の瞬間
「お前、封樹の戦士か」
男は、リンの周りに漂うエメラルドの粉末を見て感づいた。
「封樹の戦士、二人組の女、間違いねえ侵入者だ!!」
男はトンネル内に響く大声で叫んだ。
すると奥にいた見張り役たちが様子を見に来に飛んできた。
「こうなるよね…」
リンが呆れた表情で言った。
「おら!」
男はリンに向かってこぶしを突き出してきた。
リンは頭でこぶしに向かって頭突きをした。
「バギィッ!」
「グワァァ…」
腕が大きく飛び上がった。そして、拳も赤く大きく腫れあがっていた。
男は我慢できずその場に倒れこんだ。
見張りの男たちが近くまで来ていた。
「やばいね、来るね」
ルーファーは、倒れこんでいる男が来たであろう方向を指さし、
「あっちに一旦逃げよう」
その時、リンのエメラルドの粉末が少し減っているのが分かった。
ルーファーは、リンに倒れている男を指さして言った。
「そいつを担いでくれない?」
「何で?」
リンが困惑した表情で尋ねた。
「この人が来た道を記憶から読み解くしかない。きっと地上につながる道がわかる」
「なるへそ!」
リンはえらく納得した表情をした。
そして、男を肩に担いだ。
「とりあえず一旦走るよ、こいつが来たであろう方向に!」
ルーファーは、走りながら封樹の力を使い、記憶を覗いていた。直近の記憶は簡単に覗くことが出来ることをルーファー知っていた。そのため、すぐに覗くことが出来た。
そして、男の記憶に従い、トンネルを進んでいくと、何の変哲もないドアがあった。
そこを開けると、机と椅子があり、また奥の扉を開けると階段があった。
「そこが下りてきた道!」
ルーファーはリンに階段を指さした。
二人は階段を上がった。途中で何人かに出くわしたが軒並みリンが吹っ飛ばした。
「よし、その人もう離していいよ」
ルーファーは、この階段が地上までの経路になっているとわかったのだ。
「わかった。置いてくよ~、ちゃんとおうちに帰るんだよ~」
階段を駆け上がり、ドアを開ける。すると大通りとは外れた一本の商戦車の専用道に出てきた。
すると明らかにこちらを狙っている男たちが左右からやって来た。一斉に封樹の剣を自らの心臓に刺し始めた。すると、男たちは、半分意識が飛んだような状態になり、明らかな興奮状態となった。
そして、リンとルーファーのいる方へ左右から一斉に突進してくる。
リンはルーファーの手を引き、右側の集団に突っ込んでいく。
「行くよ!ルーちゃん!」
男たちは、剣やハンマーなど思い思いの武器を振り回して攻撃をしてくる。
ルーファーは、いつの間にかリンが黄金色の腕輪をはめているのが見えた。
リンは腕輪で武器を受け流し、その後殴りまくる。しかし、先ほどまでとはうって変わり、通常の人間のタフさを明らかに超えている敵だとルーファーは感じた。
さすがのリンも封樹の力が切れかかっていることや敵のタフさから、さすがにてこずっていた。
「ルーちゃん、こいつら弱点とかないのかな…」
リンは、ルーファーへ攻撃を仕掛ける敵を吹き飛ばしながら聞いた。
「確かに…異常な力の反動で弱点とかあってもいいけど…」
すると、リンの蹴とばした相手が自分の前に転がって来た。
その時、ルーファーはあることを思い出した。
『別に強くある必要はないのよ。とにかく自分を信じていればいいの…』
ルーファーは、母の言葉が聞こえた。父に放った言葉であるように感じた。一瞬何でこの情景を思い出したのか、ルーファーには検討がつかなかった。
しかし、『とにかく自分を信じろってことかな。』とすぐに思い直した。
そして、ルーファーは、封樹の力を発動した。
男の記憶を覗くと、記憶の球体がかすんでいた。
『短時間で2回目はさすがに見づらいし…心臓も痛い…』
いつもならクリアに見えている記憶の球体もぼやけている。
そして、何より胸の痛みがルーファーを苦しめ、
思わず膝をついた。
『何かあるはず、自分を信じてやり通すのよ。それに、この封樹の剣で手に入れる力は異常よ。弱点は必ずある!』
ルーファーは、さらに記憶を深く覗く。
膨大な記憶の中で一部の情報を探し出すのは、困難である。だが、2,3日前の記憶であれば球体の表面に記憶が絵のように映っていて、選別は比較的簡単にできた。
その中で、地下街で男たちが集められている絵があった。
その部分を必死に覗いた。
「この剣でお前らは強くなれる」
綺麗な身なりをした男が演説じみた口調で、ボロ着の男たちに向け話している。
「強くなる…封樹の戦士と渡り合えるってことか?」
ボロ着の集団の一人が聞いた。
「そうだ!まあ、正直いうと封樹の戦士の半分くらいの能力かな。でも、これを使って言われたことを実行できれば、家族も解放するし、当然褒章も出す。悪くないだろ?」
演説男は、嘘っぽい笑顔を浮かべて話している。
「一つ注意してほしいんだが、活動できるのは2分だ。2分で君たちは動けなくなるよ」
ルーファーはハッとした。
そして、リンの方に振り返り、
「リン!2分よ、2分堪えればなんとかなる!」
大声で呼びかける。
リンはちらっとこっちに目を向けた。そして
「そう、2分ならいける!」
そしてリンは、死に物狂いで拳をふるった。
だが、相手も強化されているため中々排除できていない。
リンの体にはクリーンヒットはしていないが、相手の攻撃によりかなりの傷がついていた。
反対側からも男たちが来ている、ルーファーの背中側にも人がやって来た。
『私がやるしかない。リンも封樹の力が切れる可能性があるし…でも、どうやれば…」
ルーファーは、自分の不甲斐なさにとても腹が立った。
『どうやればじゃない、もう何でもいいからやるしかないっ!』
そこで、ルーファーはアルスから預かった拳銃をカバンから取り出した。
肉弾戦闘なんかは行っても無意味だと思っていたため、何かを起こせるならこれしかないと直感していた。
だが、拳銃を持つ手が震えている。この前の戦闘時に感じた恐怖が思い出されていた。
『ここで、撃たなきゃリンが死ぬ、怖がるな私!』
銃口を敵に向けた。が、震えが収まらない。ルーファーは大きく息を吐いた。
すると、ルーファーは、アルスとの武器屋での会話をふと思い出した。
「私たちって結構人から狙われるような危険な能力だと思うんだよね。ほら、言い方はあれだけど利用価値が高いじゃない?」
「はい」
「なのに、戦えない。誰かに守ってもらわないと、どうにもできないのよね。多分私たちと同じような人たちは、同じことを思っているんじゃないかなぁ」
そして、アルスは店の受付の下にある小さな棚を開けた。
「昔、私の知り合いにそのことを相談したら、『最低限自分の身を守れないのは危険だよ、私も色々やって、協力するよ』って言ってくれたの。そしたら、その人は何を思ったのか、この拳銃を3丁くれたんだよね。」
「拳銃?」
「よくわからないよね、ただの拳銃なんだ。木のカッコいい紋章が入っているんだけどね。『これで身を守れ』っていうんだけど、使い方を教えてはくれなかったんだよね」
アルスは苦笑いを浮かべていた。
「でも、その人が嘘をついているとは思えない。きっと何か私たちを守ってくれる銃だよ。ルーファーちゃんにも1丁あげるね。何かあげるべきだと思うし」
ルーファーはアルスもアルスに銃を渡した人物も、何故か信用できると心の底から感じていた。すると、少しルーファーの震えが収まっていた。
眼前に敵が迫ってきている。銃口を敵に向け、狙いを定めた。
『ごめんね、きっとあなたたちは、悪くない人。でも、でも、』
ルーファーは引き金を引いた。




